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修行をさぼる小僧、その名は…

寺で得度した少年は、いつも大好きな絵ばかり描いていました。
あまりにも絵を描くことに没頭して全く修行しないのを見かねて、和尚は少年を本堂の柱に縛りつけて反省させました。

夕方になって、和尚が少年の様子を見に本堂に行ってみると、小僧の足もとに一匹の大きな鼠が動き回っていました。少年の足が噛まれては大変と思い、和尚はそれを追い払おうとしたが、鼠は全く逃げようとはしません。

実は、その鼠は生きた鼠ではなく、少年がこぼした涙を足の親指につけ、床に描いたものでした。

和尚はその少年に言いました。
「すまなかったなあ。お前がこれほどまでに絵が好きだったとは。これからは思う存分好きな絵を描くがよい。ただお前だけを特別扱いすることはできない。皆と同じようにしっかりと修行もするのだぞ。そうすれば好きなだけ絵を書くことを許そう」

それ以後、少年は一生懸命修行に励むようになった。そして和尚は決して少年が絵を描くのを戒めませんでした。

その少年、のちの雪舟は禅僧画家として活躍し、多くの寺院に有名な水墨山水画を残すほどの才能を発揮しました。

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