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【第8回】『アスリート』ヴァンフォーレ甲府観戦記~J2リーグ第7節 vs山口~

開幕からホーム2戦で1分1敗。直近2節は煮えきらない内容でいずれも引き分け。序盤で昇格争いから脱落しないため、そしてアウェイでの戦績を3勝1分と支えるサポーターのため、絶対に勝ち点3が欲しい試合だった。


疾きこと風の如く

ウタカ・アダイウトンの両アタッカーは前節に引き続き先発起用、トップ下の飯島を三平に替え、よりボールの収めどころを作った形でキックオフの笛が鳴る。しかし、序盤から主導権を握ったのは山口だった。甲府のディフェンスライン裏を執拗に突き、ロングボールから人数をかけて攻撃の形を作った。後方からの精度の高いロングボールに素早く反応し、スプリント能力の高い選手たちが次々に甲府陣内に飛び込んでくる攻撃は、シンプルながら迫力があり、決してスピードタイプではない甲府CBコンビにとっては脅威だった。甲府は後ろ向きの守備を強いられたことで、勢いよくエリアに侵入してくる山口の選手たちのシュートモーションに寄せ切ることが難しく、いくつかフリーでのシュートチャンスを許した。

山口の速さが活きたのは攻撃だけではない。甲府の低い位置からのビルドアップには、特にボランチ・サイドバックにボールが入ったところに猛烈な勢いでプレッシングすることで対応した。無理にCBまで詰めないことで中盤のスペースを奪い、無理に出せば前向きのプレスでボールを奪取し、そのまま勢いに乗ってショートカウンターを仕掛けた。相手の守備陣形が整っていないところに、スピードに乗ったカウンターを仕掛ける。篠田監督の標榜する縦に速いソリッドなサッカーを、山口が体現していた。


手柄は足にあり

山口のアジリティ溢れるサッカーが印象に残る前半だったが、甲府もチャンスが無かったわけではない。ウタカが足元で収め、山口陣内に押し込んでのサイドの崩しには、可能性を感じさせるシーンが散見された。両翼の宮崎と特にアダイウトンは積極的にドリブルを仕掛け、空いてくる両SBの関口・荒木がクロスのチャンスをいくつか創出した。中央の三平は気の利いたポジショニングと細かいテクニックを駆使して攻撃を支え、両ボランチの木村・林田は苦しみながらも低い位置でボールを受けることを怖がらずに実行した。

選手たちのクオリティはJ2の中で非常に高いレベルにあると考えられる。特に2人の外国籍選手はJ1クラブでも欲しがるクラブがあってもおかしくないし、木村にいたっては韓国王者・蔚山現代を相手にまったく引けを取らなかった。オープンな展開でアバウトなプレーからワンチャンスをものにする運が無くとも、ファイナルサードで能動的にボールを動かす時間帯ができれば、十分に勝ちが見える「質」を見せていた。互いに最後の最後で決定的なプレーができないまま、前半をスコアレスで折り返した。


先手必勝

ボディブローのように効いていた山口の攻撃がある。近年、その注目度が改めて高まりを見せている、ロングスローだ。山口MF・相田の鋭く伸びるスローインは、セットプレーのチャンスとして十分に機能していた。それは甲府にとって長崎戦で見せたようなロングカウンターのチャンスであるとも言えるが、この試合ではそれが仇になったとも言えるかもしれない。

50分、ロングスローの流れから山口はシュートチャンスを迎えるが、今津が決死のブロック、短くはあるがクリアに成功する。そのタイミングで甲府は、1,2列目の4人がやや高い位置を取った。カウンター準備の前残りと思われる。しかしこのクリアボールを山口はすぐさまロングボールで甲府ペナルティエリア内に返すと、十分攻撃の枚数が残っていた山口が立て続けにシュート。甲府はDF4人+ボランチ2枚でブロックし続けるも寄せきれず、最後は山口DF・平瀬に技ありのシュートを沈められ、先制を許した。結果的にこれがこの試合の決勝点となる。


試合運びの妙

先制点を奪ったとは言え、後半の早い時間帯の1点リードでは試合は簡単に決まらない。甲府は50分台、60分台と立て続けに選手交代に踏み切り、ラッソ、鳥海、内藤らアタッカー陣を積極的に投入、前線を活性化しにかかる。一方の山口は幾分かプレスは慎重になったものの、ミドルゾーン以上で構え、隙あらば猛然とプレスに行き、徹底的に裏を狙う戦い方は大きく崩さなかった。運動量の求められる前線・中盤の選手たちは、要所で交代を用いながらプレー強度を落とさず、甲府に流れを渡さないまま時計の針を進めた。

ホームでまた勝てないのか―。そんな焦りが、甲府の選手たちを前掛かりにさせた。79分、中盤でセカンドボールが落ち着かないところから、山口が甲府ディフェンスライン裏に一発でロングボールをつけると、この時間帯でもエリア内に侵入してきた山口MF・河野がコントロールショット。渋谷が弾くも、ファーで待ち構えていた交代出場の山本が押し込みダメ押し弾を決め、さらにゲームを有利なものにした。

後が無くなった甲府はさらに攻勢をかけるも、83分の交代で5バックにした山口の守備を最後まで崩し切ることは出来ずタイムアップ。晴天の小瀬にブーイングが鳴り響いた。後半開始早々に先制、集中とプレー強度はそのままに中盤戦を戦い抜き、終盤に追加点を決め守備固めという理想的と言っていい試合運びを見せた山口が、充実した内容・結果とともにゲームを締めくくった。一方の甲府はホームで開幕3戦勝ち無し。直近3試合も2分1敗と早くも失速し、不安を感じさせる3連戦の幕開けとなった。


所感

ということで負けました。急にこんなんですみません。特に後半でいえば、山口にやりたいようにやられたなという印象を持たれる方が大半なのかなと思います。とはいえですね、前半は決定機もいくつかあって、後半も5バックを作られるまでは比較的、押し込んだ状態でのサイドの崩しとかは形を作れているシーンも見られたので、必ずしもダメダメのチームということは無いと思っています。

ここ最近の体たらくを見ていて思うのは、篠田さんがやりたがる縦に速いサッカーって、あんまり今の編成に合ってないんじゃないかということです。よくこういうサッカーの代表例として、黒田剛監督率いる町田ゼルビアや過去に率いた青森山田高校、あと海外だと篠田監督がリスペクトするディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリードなんかが挙げられると思います。こういうチームってウタカみたいな選手やアダイウトンみたいな選手って少ないと思うんです。というか、遂行できない。もちろん圧倒的な個がいることによる組織の組み立てとかもあると思うんですけど、やはり多くの選手がとにかく走る、ファールも覚悟でどの局面も激しく行く、攻撃にはしっかり人数をかけて、クオリティで補えない部分もカバーするみたいな。今のメンバー構成ってそういう感じじゃないですよね。どちらかというと巧い選手が多い。当たり負けしないボールキープというよりは巧さでものにするタイプ。だから両方が異次元のアダイウトンは際立っているけど、守備の穴になるリスクからは逃れられない。そんなことを思っています。

ということで負けたチームに対して石を投げてばかりいるのではなく、素人なりに「こうしたらどう」という意見を書いて、それを覆されたら潔く謝罪、勝ったら手のひら返しでばんばんざいという形で、今自分が考えている「こうしたらどう」を書いてみます。

~~~以下箇条書き~~~
・基本布陣は4-2-3-1、想定スタメンは以下
GK河田 DF関口 今津 孫 荒木 MF木村 三沢 鳥海 飯島 宮崎 FWラッソ
前プレを基本やらない
・守備はライン低め、相手が低い位置で持ったときは行かず、センターサークル辺りからラッソが中央意識で少しずつかけていくも、4-5-1ブロックを基本とするリトリート
・中央のスペース・パスコースを狭め、パスの受けどころに対してはアグレッシブなプレス
・狙いは奪ってカウンターではなく、低い位置で奪って時間をかけて陣形を押し上げること、理想はゴールキックからの攻撃
・攻撃はラッソが競ったところのセカンドボール命、高い位置でマイボールの時間を作り、相手を押し込んだところで崩しのチャンスを伺う
・ボールロスト時の理想は即時奪還、ファール・スローイン等セットプレーに逃げる、攻撃を遅らせるの優先順位
・リードした後半はそのまま4-5-1ブロックのリトリート守備、理想はラッソに代えてアダイウトン
・同点またはビハインドの後半は5-3-2に変更、トップにウタカ・アダイウトンを配置、中盤とWBは極力フレッシュな選手を
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なんかとんでもないものを書いた気はします。いつかタイミングがあったら意図みたいなものを説明したいと思います。
3連戦ということで僕も観戦記が忙しいなと思いつつ、10日で3試合も見られる喜びを噛み締めて、鹿児島戦も応援しましょう。

お読みいただきありがとうございました!是非コメントお待ちしています!

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