演人の夜 黄金のコメディフェスティバル2022参加作品「もしも生殺与奪の権を私が握ったら」作品裏話

こちらを読む前に↓の記事を読んでからの方が楽しめるかもよう?


と、いう事でこちらは「もしも生殺与奪の権を私が握ったら」(以下、「生殺与奪」)の作品の裏話です。
解説も含みますが、同じチョキチームだったラパン雑貨ゝさんの「コマドリのコマドリ」ほど深い小ネタもないのでどちらかといえば本当に裏のお話。

ネタバレ含むので「これから配信観るぜ」って方はブラウザバック推奨。

それではいってみましょー!!

冒頭の前説風味のシーン


一発目から冒険してみました。

当初、これを入れる予定はなくいきなりナレーションから始まる予定だったのですが、

書いていくうちに

「「死ぬ」とか「殺す」をストレートに発するのはコメディ作品としてどうなんだろうか?」
「それに反ワクとか反マスクも描いてるし何より政治や宗教についても触れてるから変な思想持ってる奴に思われないだろうか?」

と思い、後になってからこれを入れる事にしました。

そう、これはあくまで「フィクションですよ」「決してそういう意図で描いたものではないですよ」という「おことわり」的に書いたものでした。

ここから「せっかく配慮するならそれを逆手にとって笑いに変えてやろう」と、

「死ぬ」→「ぴぬ」
「殺す」→「ころがす」

ネタも生まれました。

この言葉差し替え、評判よくて嬉しかったなあ。
これのおかげで殺伐感がなくなった気もするし。

感染症下のシーン

これは僕の見たイメージまんま描きました。

思いを述べるのは個人の自由だからいいけど、自分の思いを訴えかけるのに強硬手段に出るのはよくないと思うんですよね。

ボネッセの教材に入ってた反ワクチンチラシも反マスクの山手線での迷惑行為も実際にあった事をそのまま描写しました。

ボネッセに至ってはボネッセ社員の「この度はご心配をおかけして誠に申し訳ございません~」ってセリフは元ネタの会社の注意喚起ツイートをほぼまんま書いたし、
それに対する茂原の「これは友達から聞いた話」もこの事件を起こした本人がSNSで書いてた言い訳をまんま取り入れました。

実際に起こった反ワクチンチラシ事件も結局はその犯人があたかも教材に入っていたかのように見せかけた悪質なデマなので、
劇中ではそれをわかりやすくするために茂原が持ってたチラシを手書きにしました。(元ネタはもっと凝ったチラシでした)

この後の醜い争いもすぐに手の平返して相手を攻撃してる様子も全部僕から見たイメージそのまんまです。

そしてここぞとばかりに「ぴね」「ころがす」が連発されますが、ここで前フリでの説明を把握できた人も多かったんじゃないかな?(笑)

そして声高らかに自己満足の正義感を謳う奴らに思いっきり振り回されてたのが園子。

判断能力の弱い園子はずっとこの状況に混乱してたんじゃないかな。
友人の正子に相談してなんとか間違った道には行かないでいたんだけど、
こういう風に情報が錯綜して混乱してる人も現代で割と多いイメージ。

ここで発した「大塩平八郎の乱」は遊び心で入れただけなのですが今思えば少しだけこのシーンの状況とリンクしてるな。茂原も万城目親子も行動理念は間違ってるけど。

そして劇中では感染症が終息した数年後の世界に移り…

間引き制度の施行

クソ客に振り回される主人公、正子。


クソ客への殺意の表れは僕の実体験が元ネタ。

コンビニでバイトしてた頃に常識では考えられない行動をする変な客もいたし些細な事でキレ散らかす客もいたし、脳内でころがした客は何十人いたんだろう(笑)

さすがに店の中できゅうりを食べる客もおもちゃ出して暴れる総理も実際には来なかったけど(当たり前だ)

にしても個性豊かな客や従業員の集まるコンビニだな。
正子が店長のモノマネしてたけどこの店長多分ストレスでハゲてるんじゃないかな。
ここでのセリフ「最近店の商品がなくなっているんだよ」は後々の伏線になったりします。

ところ変わって総理官邸のシーン

こんな事は絶対実際には行われていない。
けど間引き制度の可決が決まってあとは発表を残すのみとなったシーンなので雰囲気をちょいシリアスにしてみました。
シーン冒頭のおもちゃにされる片山さんと阿呆総理のキャラのおかげで中和されて重すぎないようにはしたけど。
終始シリアスな芝居をしてたのは金剛さんくらいかな?

神兄妹。
正子が愚痴りまくるシーンは自由に作ってもらいました。

シーン冒頭の正子の一人語りは今思えば尖りすぎてたかも。反省。
何をしゃべったかはアーカイブで見てね←
だけどこの一人語り設定が後々正子の首を絞める事に。

永長さん演じる兄の勇(劇中では一貫して「お兄ちゃん」と呼ばれていましたが彼の名前は「勇(いさむ)」です)のツッコミは台本にないものもあります。このシーンに限らないけど。

阿呆総理が来てからのシーンは夢麻呂さんからネタの提案をもらいつつ自由に暴れてもらいました。

元々夢麻呂さんの持ち味を存分に出すためにこういうキャラにしたし自由に動けるポジションにしたのもあるんだけどね。

金剛さんの会見後の総理のアドリブは本番から入りました。
ここ毎回大ウケだったんだよな(笑)

ここの永長さんのツッコミも仁科のアクションもちゃんと対応できてたの本当にすごい。

そうこうしてるうちに間引き制度の行使権を得て浮かれてる正子ですが…

間引き制度が決まった後の世界

案の定、間引き制度が可決された事でおかしな行動を起こす輩が沸いてきました。

茂原は数年前とやってる事が変わらないし、万城目親子は自分達の主張を強引に押し通すために間引き制度の執行者を祀り上げるマビーキ教会という宗教を作ってしまいました。

マビーキ教会の衣装はいつも演人の夜で色々とお世話になってる女優の板谷美霞さんに製作していただきました。

※写真は「本日承後」のブロマイド撮影時の。

急遽の依頼だったのにすごくいい衣装を作ってくださいました。
本当にありがとうございました!!

「M」の字は園子役の陽奈ちゃんと実役のメギーさんに付けていただきました。
ありがとうございました!!

このマビーキ教会、ご時世的にかなり突っ込まれたのですが元ネタは漫画「AKIRA」の「ミヤコ教」です。

二人が特殊な力を持ってるわけではないですが、スタイルのみ参考にさせていただきました。

そして何故か喋りが下手になった真。演説聞いた時に違和感バリバリだったはず(笑)

こちらは、かまいたちさんの「UFJとUSJ」の漫才とギャグマンガ日和の「生きていた五十嵐ワタル」を参考にしました。

崩したセリフを書くのが意外と難しくて真のセリフは結構時間かけて書いた。
かまいたちさんも増田こうすけ先生もどうやってあんなに崩せたんだろう。

とはいえ行動と言動が一貫しておらず、演説で「ころがすなんて言葉で片づけてはいけない」とか言っておきながらゴキブリが出た時に思いっきり「ころがせえええ」「ぴね!」とか言ってるんですよね(笑)

またまた電話で正子に相談する園子。
切り際に園子が発した「生類憐みの令」もそんな意図まったくなく遊び心でセリフを当てがったんだけどこれもよく考えたらリンクしてるな(笑)


はい出ました。
演人の夜でおなじみの殺害シーンです。





…と思ったら大間違い。

今回はすかしてみました。
しかもご丁寧に「こんなんで(片手で包丁を掴んで刺されてるように見えるようにしてる)ぴぬわけねーだろ!」「演人の夜でよく使う手法ぉぉぉ!!」という説明付きで(笑)

こちらはお世話になってるある脚本家さんと演人の夜の作品の話になった時に、
「自分で自分の作風を茶化してみたら?もっとふざけていいんじゃない?」という言葉をもらった事からこのシーンを書いてみました。

初見多分ゾッとした人いたんじゃないかな?びっくりさせてごめんなさい。

正子を心配するあまり後を付けてストーカーしてた残念なイケメン、池田さんが登場してピンチを脱するかと思ったら…

はい、ここの一人語り風独り言でうっかり自分が間引き権を持ってるとバラしてしまいます。

正子は命からがら逃げますが…

最終決戦

はい、ちゃんと特定されて自宅にも凸されました。

この直前の勇の「人の話を理解できるやつが0.01%しかいない」「今のSNSは子供の方がまともな事言ってるよってツッコみたくなる」「ちゃんと人の話を聞ける人間ばっかりなら不毛な争いなんか起こらない」ってセリフはコンビニでバイトしてた頃の変な客とも重ねたし、身勝手なツイートして炎上したら変な言い訳してるアカウントやもっともらしい事言って矛盾やおかしな点や間違ってる所を指摘したらブロックして逃げるアカウントとも重ねてその当時の僕の憤りをまんま書きました。

そしてここであのゴキブリが登場します。
冒頭、中盤でのゴキブリのくだりはこの為の布石でした。

特定された事で世の中にも変化が起こり、神正子の名前も瞬く間に広がりました。
そんな中、マビーキ教会に入った園子の演説で自分の過ちに気付く正子。

作中数少ないまともなシーンです。
すぐまたおかしなシーンに移るんだけどね(笑)

さあ、阿呆総理の登場です。
なんやかんやあって戦闘モードになるのですが…


空間を無視して登場するマビーキ教会の人々

ナイススティックとスーパービッグチョコで刀と応戦する池田さん

追い詰められておかしな特攻をする片山さん

この一連個人的にすごいお気に入りなんだよなあ(笑)
元ネタとかは特にないです。
完全に夜中のテンションで描きました。

ちなみに前述の「店の商品がなくなってる」はここで回収されます。
犯人は池田さんでした。
このナイススティックとスーパービッグチョコも買わずに在庫から盗んできたものです。何してんだこの人。


そして片山のヌンチャクが頭に当たって感情的になった阿呆総理が国民に怒りをぶつけるシーン。

「お前らの先祖は戦争も増税も感染症の下の生活も最初はブーブー文句言ってたけどすぐに何も言わなくなった」
「今の人間達は理想を追い求めすぎなんだよ!!こっちは散々対策してきたんだぞ!なのにいう事聞かなかったのはお前らだ!!」

これらの阿呆のセリフは政府の対策に対して不満を述べてる人々とそれに疲弊する政府、両方の立場になってこのセリフを書きました。

上の立場になった人間って人々の声に敏感になるんですよね。

色んな事情も知らずに好き放題言われたらそりゃ荒れるだろうなあって。

でも国民も国民で言いたい事は山ほどある。

本当に難しい問題だよなあ

作中一番シリアスなシーンでこれまでやりたい放題だった阿呆総理の空気感が変わってビックリしたんじゃないかな。

最後の一言

「黙らせるには命を担保にするしかないんだよ!!」

これが間引き制度が生まれたきっかけでした。
本当にこんな世の中になったら嫌だな…

しかしこれがあるキャラクターの逆鱗に触れます。


こいつです。

ころがしを認可するほど落ちぶれた国に対して怒りの声を上げたのはゴキブリでした。

↑この記事でも触れてるけどこのシーン、結構最初の段階から考えていたシーンなんです。

一見感動的なシーンなのに発言してる奴のせいでそう見えなくするのは初めから狙ってました。

周りが感動してる中、一人この状況に疑問を抱くお兄ちゃん。
ここの永長さん最高なんだよな(笑)

怒りのボルテージが上がる阿呆。
過ちに気付いた金剛が阿呆に「我々の負けです!」と諭すも阿呆の耳には届かない。

「いい加減にしなさい!!」

片山、阿呆に愛のビンタ。
からの

「総理…」
♪~ピアノBGM

ここカオスさも相まって何回見ても面白いんだよな(笑)

実はこのシーン、当初は台本になかったんです。
夢麻呂さんが提案したネタで、やってみたらあまりにも面白かったので採用しました。

泣きながら帰った総理。
そしてそれぞれ自分達がしてきたことを反省する人々。
普段の演人の夜作品じゃ考えられない光景だよなあ

そして平和が訪れて…

ゴキブリで締めます(笑)

からの

「ちっくしょおおおおお」

仁科渾身の「ちっくしょおおおおお」
審査員の方々からお褒めの言葉をいただけたのすっごい嬉しかった。

これでこの話は終わります。
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは見た人に委ねます(笑)

最後に

いやー長くなった。
気付いたら物語のダイジェストみたいになったし思ったより小ネタも裏話も少なかった気がするけど、まあいいか←

あ、小ネタと言えば、

同じチームで上演したラパン雑貨ゝさんの「コマドリのコマドリ」という作品があるのですが、

こちらは漫画家のお話で最後に主人公が次回作として「もしも生殺与奪の権を私が握ったら」という作品を描くと発言し、物語は幕を下ろします。

これはラパンの主宰・脚本演出家の山下哲平さんが事前に僕に連絡してくれて実現した小ネタなのですが、この2つ、ところどころ共通してる部分があって本当にリンクしてるように見えるんですよね(笑)

カマキリ(コマドリのコマドリの「リキマカ」)とゴキブリとか…(笑)

あとこの「生殺与奪~」が真野未華さん演じる須玖(スグ)先生が描いたという設定に則るなら優秀脚本賞(「コマドリ~」の世界なら漫画賞?)は真野さんのものになるんですよね。とちょっと思ったりも(笑)


あとの小ネタは劇中のM(BGM)とSE(効果音)。

M0と呼ばれる客入れ曲から乗り替わる開演前の曲があるですが、今回使った曲は導入部分がピアノなんですよ。

これは普段演人の夜のM0がしっとりしたピアノ音源を使ってるのでそれに準えて採用しました。

今回は激し目なバンド風味だったので「いつもの作風と違いますよ~」という密かなアピールでした。

正子が馬川をころがすために家を訪れるシーン。

ここだけ正子と馬川がインターホンとドアのSEを口で言ってるのですが、これは稽古でまだSEが決まってなかった時に仁科が元気よく口で言ったのが面白かったのでそのまま採用しました。

人を刺すってだけで緊張感が走るシーンになるのでその前に緩和したかったのもあります。

審査員の西田シャトナーさんが「何故これで成立してるように見えるんだ…」とツイートされてましたが、僕にもわかりません(笑)

しかし今回は選曲本当に苦労した。

いつもはしっとりした曲ばっかりなのでコメディに則った曲が手持ちでほとんどなかったのでまあ探すのが大変で。

でも選曲がいいって声をいただけたの嬉しいな。

カテコの曲は我ながらいい曲見つけたと思いました。

今回は執筆するにあたってコント作家さんやお世話になってる脚本家さんにたくさんアドバイスをいただいて完成したものになります。

僕一人ではここまで来れなかった。

かかわってくれた全ての皆様に感謝です。

本当に本当に本当にありがとうございました!!

さて、お次は個性豊かなキャスト陣の紹介だよ!
お楽しみに!!


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