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#11 「局面」を見立てる / JINENコトハジメ

・ Podcast「JINENコトハジメ」の文字起こしを中心としたpostです
・【文字起こし】の部分は無料でお読みいただけます
・【解説】【参考文献】の追記後は、その部分は有料公開にする予定です

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【Podcast #11】

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【文字起こし #11】

山田:
皆さんこんにちは。JINENコトハジメのPodcast第11回を始めたいと思います。このPodcastは、「自然経営って何?」っていうのを自然経営研究会の発起人の1人である私山田の立場から語っていくというシリーズです。
毎回聞き役をお呼びしていまして、今日は島さんをお呼びしています、よろしくお願いします。

島:
よろしくお願いします。

島 青志

株式会社Salt 代表取締役
一般社団法人 自然経営研究会 代表理事
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員
認定スクラムマスター

【プロフィール】
ホテルマン、会計事務所、ITベンチャー、広告会社などを経て、2010年企業コンサルティング業の株式会社Saltを創業。
2011年の東日本大震災時には、復興ボランティアとして、街づくりや商店街の復興、ビジネスの再構築の援助などを行い、その時の縁もあり、2015年慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入学し、システム思考やデザイン思考を地方振興やビジネスに活かす手法について学ぶ。2018年修了。(現在は研究員として研究や学生の指導)
企業や組織における一人一人が自律できる組織の構築手法や、創業・イノベーション支援の研修・ワークショップを行う。
ビジネスモデルの作成や、生産性向上のための仕事の進め方や組織づくり、評価手法などについてのコンサルティングも行っている。

山田:
今回11回目は、前回から始まっている自然経営を「実践する方法」についてというトピック。これを大きく3つに分けていて、そのうちの2つ目を今日は扱いたいと思います。

これはタイトルとしては「局面を見立てる」、場面みたいな意味での局面ということを見立てるということを言っています。
前半少し僕の方からご説明をさせていただいて、後半は島さんといろいろお話をしたいなと思います。よろしくお願いします。

島:
はい。よろしくお願いします。

山田:
「局面を見立てる」っていう話は、その中に三つあるということを言っていて、1つ目が「土壌を整える」、2つ目が「種を植える」、三つ目が「見守る」。
この三つのフェーズというか段階というか局面っていうのがあって、これがぐるぐる回ってるよねっていうことだと思っていますね。

これは自然経営っていう言葉を言い始めた当初、武井さんといろいろ話をしていたときに、よくPDCAとか、Plan-do-seeとか言われるようなものに変わるフレームワークというか考え方みたいなものが欲しい、と話をして、自然経営らしいものとして整理していきました。

当初からずっと言っているのは、今までの機械的な組織を作ることじゃなくて、組織をその生き物のように、生命的なものとして扱うっていうものだねっていうこと。
よく「機械的にやってるのをどうやって生命的にするか、変えるか?」っていう話があったんですけど、そこは連続的な進化というよりは、変容、さなぎから蝶みたいに「変態」することだと思っています。

その辺を含めて、どういう扱い方かををうまく説明できるもの欲しいなっていうときに、この3つっていう話を生み出して語り始めました。

先ほどの三つ、「土壌を整える」、「種を植える」、「見守る」、って言ったときに、ほぼこの比喩、メタファーの通りなんですけど。
ちょっとだけ説明を加えると、一つ目の「土壌を整える」って、準備をちゃんとしましょうという段階がまず最初にあります。
二つ目に「種を植える」。これは変化の起点を作るとか、きっかけを作るみたいな意味で、「種を植える」ってことだと思っていますね。
三つ目が特に特徴的な「見守る」。よくあるPlan、Do、Check、Actionみたいに「決めたんだからやる」だと、能動的に自らやっていくことにすごくなる。ただ「見守る」っていう言葉を使うと、その植えた種がどうなるか、変化するか、育つのかを待っている状態で関わる。それがすごく自然経営ぽいなと思っています。

この組織を「変える」とか、人なり組織を「育てる」みたいな外から関わって何かを変えに行く、手を加えていくことではなく、組織が「育つ」、組織が「変わる」、それ自体が生き物として自律しているという使い方をするっという意味で、「見守る」ってメタファーはすごく大事だと思っています。

最後にちょっとだけ補足をすると、このメタファーを使っていてすごくいいなと思っていることに大きく二つの生かし方がある気がしています。
島さんもご存知のように、こないだ自然経営塾っていう取り組みを始めたんですけど、その中で、「あなたの組織の土壌は何ですか?」っていう問いを投げかけるのは、結構良い作用を産んでいるなと思っています。
その問いを投げかけられた瞬間に、組織そのものが、植物とか生き物のように、「土壌」があって、その上に「生えている」ものだと体感的捉えやすい。組織というものが自ら「育って」いるイメージを持ちやすいって意味で、その問いはすごくパワフルだなと感じました。

もう一つ、一方でそれだけじゃなくて、思考のフレームワークとして、組織全部の「土壌」と「種」と「見守る」っていう局面もあれば、一つの事業とかプロジェクトの中でもその変化のサイクルみたいなことはある。
例えば今日この2人で話してる中でも、このフェーズは準備をした「土壌」のタイミングで、ここがきっかけとなった「種」だったよね、その後に起こることは2人で「見守って」いるみたいに、色んなレイヤーでフレームワーク的に使えるっていうのは、すごくいいなと思っています。

島:
ありがとうございます。この説明は、多分僕が初めて自然に参加した2年ぐらい前からも聞いていて、本当に噛めば噛むほど、奥深い言葉だなと。
前にも言ったかもしれないんですけど、最初聞いたときは、なんとなく「フーン」って、耳障りのいい言葉でもあるしね、と思ったんですけど(笑)

僕も自然に関わるようになって、色々勉強したりとか、実践されてる方に話を聞いて、自分なりにそれなりの知見が貯まってきたと思うんですけど、そうすると、ますますもってその言葉の深さっていうんですかね、改めて山田さんの日本語使いのうまさに敬服の思いといいますか(笑)

山田:
今ので伺ってみたくなったんですけど、どういう味わいが出てきた感じがしますか?

島:
例えば僕はシステム思考であったりがベースにあって、要は全体をシステムとしてどう捉えるんだっていうことを持って色んなことに対応することをやってきたんですけど、その中で必要なのが「全体を見る」っていうことなんですよね。
色んな局面があって、色んなことが起こるんだけれども、1個1個の事象だけを見るんじゃなくて、まず全体感を見てみるっていうことを叩き込まれる。

これってある意味「土壌」と一緒で、「土壌」といっても一様ではないわけですよね。当然いろんな部分があって、じゃあ「どこに種を植えるんだろうか?」みたいに、それをもちろん操作するのではなく、それを見極めた上で、「じゃあここに何かの種を」みたいなことを考えるわけじゃないですか。

そういったシステム思考で言ってることと全く同じことを、わかりやすく、「土壌を整える」「種を植える」っていうことは言っている。
それがまさに植えて育つわけですよね。「見守る」っていうことと、これがまた上手いというか、「ほったらかす」とまた違うじゃないですか。

山田:
そうですね。

島:
何にもしないではないし、かと言って、お前こっち伸びろって引っ張るわけでもないわけですよね。
当然その育つ中で、例えば雑草に覆われたらやっぱり雑草を取るとかね。あんまり肥料与えるのはよくないと言いつつ、乾燥して「どう見てもこれ枯れるぞ」ってなってたら水を与えるとか。
要は木とか草そのものを引っ張ったりはしないけど、育つように、そこは土壌にちょっと水を与えようとか、そういうことするじゃないですか。やっぱりそのさじ加減というか。

例えばホラクラシーで言うところの振り返りだと、振り返りをする中でみんなに気づいてもらう、みたいなことを実際の作業として行いますよね。それがこの見守るっていう言い方がとても良くて。
普通のオレンジ組織だと、「じゃあお前これやれ、あれやれ」って色々しますよね。でも自然もそうだし、ティールの会社ではそういったことはしないけれども、ただ気づかせてあげるとか、そういったことはしますよね。

そういうのがまさに「見守る」っていう言葉に含まれるんだなって思いますね。

山田:
そうですね、今おっしゃっていただいた中で、ホラクラシーだと、人によって、「ティール的なautonomous、自律的な組織に向かう強制ギプスみたいなものとしてやるんだ」とおっしゃっていて、そのイメージはすごくわかるなと。あれはもうルールが全部決まっていて、このルールの通り全部やったらホラクラシーです、と言っている。

それはそれで良さがすごくあるなと思うのと、一方で、自然経営の中で、こういうイメージやメタファーで語るのがすごく良いのは、目指してる方向性・世界感の違いだなとも思いますが、じゃあ「どうやるか?」っていうのって、その組織の状況とか、そこにいる人たちの好みとかで千差万別、全部違うものですよね。

島:
まさにそうですよね。

山田:
その自由度の高さがあるっていうことを担保しつつ、でもその中で「こういうサイクルで回ったらいいよ」と示す意味で、絶妙のさじ加減で伝えようとしてるのがこのイメージな気がしていて。

何にもなく「何でもその状況に合わせて好きにやればいいんだよ」って言っちゃうと、「じゃあどどうすればいいの?」ってなってしまう。
その絶妙な真ん中へんを伝えようとしているのが、こういうメタファーなんだというのが、システム思考とかホラクラシーとかと比べたときに、より特徴的なんだなって今聞いてて思いました。

島:
いや、まさにそうですよね。
ホラクラシーはそれを文字通りシステムチックにやろうとしている。それは確かに今までオレンジでずっとやってきて、こういった自然的なことを知らない企業が、とりあえずこの形でやっていましょうっていうふうには、確かにいい方法だと思うんですよね。

ある意味、欧米的なやり方っていうんですかね。まず型から入って、フレームワークを作ってルール決めてやりましょうっていうのは、とても欧米的で、これは一つの方法。
自然って日本からっていうことをおっしゃっているし、僕もそこに賛同しているわけですけれども、「マニュアル」じゃなく「型」みたいなのがやっぱり日本的ですよね。

山田:
そうですね、その例えはその通りですね。

島:
そこが今山田さんがおっしゃったように、先ほどの3つは、どちらかというと「型」に近いもの。

例えば柔道とかね剣道とかって言われてるものそういう「道」って言われるものって「型」があるんですけど。型は決してマニュアルではなくて、決して「こうやったら、こうやったら、こうやって、ここでこう投げろ」っていうものじゃなくて、その型をどこに使うかは、その局面局面によって異なってくるわけですから。

そういう点では、絶妙な本当に言葉だなっていうのはまさに道、タオとかとかおっしゃいますけど、そちらに通じますよね。

山田:
おっしゃる通りだなと、今言われてすごく思いましたけど、この3つの局面だって言ったところで、「何をするか?」は何も教えてくれてないんですよね、これ。

島:
そうそう、そうそう。

山田:
「型」なので、ホラクラシーとかマニュアルだと、「じゃあこのタクティクスミーティングで、これやってください」っていうアクションまで全部落ちている。
それに対して、「こういう状況は、こうやって見てね」としか言ってなくて、それに対して何をするかは「自分で考えようね」とか「その状況で選ぼうね」とすごく言っている。

島:
そうですよね。
もちろんやり方としては、今の農業みたいに肥料をかけるやり方をするところもあれば、「奇跡のリンゴ」の話じゃないですけど、何もしないっていうやり方も、それぞれ状況とかであると思うんですよね。

全部が全部「肥料あげちゃ駄目ですよ」って、一律に決めるのもちょっと違うと思うし、と言って、「肥料バンバンとマニュアル通りにやりましょう」もこれも違うと思う。
だからそこは自分の思うところとか、みんなが思うところとかで、決まってくるみたいな感じになるのかなって思いますよね。

山田:
まさにそうですね。
なので、この局面をきちんと見立てた上でどうするかは「それぞれ考えようね」っていう見方の一つとして提示するぐらいが、自然経営がすごくいい。
それが、島さんとホラクラシーとかシステム思考と対比しながら話していることですごく見えてきたので、やっぱり話ながらこれ深めるっていいなと改めて思いました。

島:
私も本当に同じ意味で全く思いました。

山田:
はい、ありがとうございます。
ということで、第11回ですね、「局面を見立てる」ということで、「土壌を整える」「種を植える」「見守る」っていう三つを島さんとお話をさせていただきました。今日はありがとうございました。

島:
ありがとうございました。

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