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#12 「対応」を選択する / JINENコトハジメ

・ Podcast「JINENコトハジメ」の文字起こしを中心としたpostです
・【文字起こし】の部分は無料でお読みいただけます
・【解説】【参考文献】の追記後は、その部分は有料公開にする予定です

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【Podcast #12】

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【文字起こし #12】

山田:
はい、皆さんこんにちは。JINENコトハジメのPodcast第12回を始めたいと思います。
このPodcastは、「自然経営って何?」っていうことを、自然経営研究会の発起人の1人である私山田の立場から語って行くというシリーズです。
聞き手を毎回お呼びしていまして、今日は前回に引き続き島さんにお願いしています。よろしくお願いいたします。

島:
よろしくお願いします。

島 青志

株式会社Salt 代表取締役
一般社団法人 自然経営研究会 代表理事
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員
認定スクラムマスター

【プロフィール】
ホテルマン、会計事務所、ITベンチャー、広告会社などを経て、2010年企業コンサルティング業の株式会社Saltを創業。
2011年の東日本大震災時には、復興ボランティアとして、街づくりや商店街の復興、ビジネスの再構築の援助などを行い、その時の縁もあり、2015年慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入学し、システム思考やデザイン思考を地方振興やビジネスに活かす手法について学ぶ。2018年修了。(現在は研究員として研究や学生の指導)
企業や組織における一人一人が自律できる組織の構築手法や、創業・イノベーション支援の研修・ワークショップを行う。
ビジネスモデルの作成や、生産性向上のための仕事の進め方や組織づくり、評価手法などについてのコンサルティングも行っている。

山田:
はい。よろしくお願いします。

自然経営を「実践する方法」が3つあるよと前回、前々回から言っていて、今回はその3つ目をお話をさせていただきます。
3つ目は「対応を選択する」ということを扱っています。また前半少しだけ僕の方からご説明させていただきます。

「対応を選択する」って言ってるんですけど、すごく言いたいことはシンプルでして、自然経営を実践するときに、「対応」の仕方、何か起こったときに何をどうやるかって、やり方は三つしかないなと思っています。

1つ目は、解決を「主導」する。自分が解決に行くっていう対応。
2つ目は、解決を「支援」する。誰かが解決するのを手伝う。
3つ目は解決する「仕組み」を作る。
自分が解決するか、誰かが解決するのを支援するか、解決する仕組みを作るかっていうその三つだと思っています。

何でわざわざこんなこと言ってるかというと、解決を「指示」するとか、解決する「役割」を作って人をアサインするとか、いわゆる「やらせる」みたいな、「役割」が先にあって課題を解決することが、自然経営っていう運営をピュアにやろうとすればするほど、すごく相性が悪くなっていくということが大事だと思っています。

背景として、これまでのPodcastで語っていることを参照しながら改めて言うと、自然経営って関わる一人一人が自主的とか自律的とか主体的に判断して、私が今ベストだと思うことっていうのをそれぞれがやっていくと、結果的に全体としてより良い方に向かっていくっていうことが大事だと思っています。

なので、1人1人が「私はこれをやりたい」とか、熱量を感じることを最大限に優先する。
組織の作り方としては、その人の持っている熱量をなるべく邪魔しないとか、阻害しないとか、熱量をなるべく高めてあげるとかっていう関わりをすることがすごく大事だと思っています。

よくある組織マネジメントとしては、やることが先に決まっていて、どうやってそのメンバーにモチベートされてその課題に取り組んでもらうかが、ある種のマネージャーの役割だったりするんですよね。
その仕組みの中では健全な作り方だと思うんですけど、それって構造的に本人の熱量をどう生かすかっていうことではなくて、いかに外から熱量を高めてあげるかっていうことをやっている。
「そういうことをやりたいんじゃない」のだよな、自然経営って、とすごく思っています。そこは違った取り組み方ができるんじゃないかと思う中で、解決の仕方ってこの3つだと特に言っています。

これについて、よくある質問として、「そうすると誰もやらない仕事が出てくるんじゃないですか?」と言われる。
結論で言うと、その可能性もありますって思ってるんですけど、前の回でも言った「境界の開放性」、人が出たり入ったりしやすくなっているのは大事だなと思っている。
「限られた人数」で、「既に決まっている仕事」をやろうとするときって、間違いなく、マッチング上、合わないところが出てくる。
いかに「限られた人数」じゃなくて、境界が開放的で、やりたい人が入ってきやすくなる状態を作るかも大事だと思っています。

「すでに決まっている仕事があるよね」っていうことについては、前の回で目標って「達成型の目標」、いつまでに何をやるんだって決める目標と、「状態型の目標」、今のいい状態をみんなで維持しようっていう目標の二通りあると話している。

さっきの「限られた人数」で「既に決まっている仕事」をみんなでやるというときに、「限られた人数」で決めようっていうのを、境界を開放的にすることでなるべく緩めようということだし、「すでに決まっている仕事がある」というのは「達成型の目標」ですごく起こりやすいので、そうではなく、みんなでこの良い状態をどう持続するかをより大事にしようという「状態型の目標」の仕事の仕方をすると、やらねばならない仕事が減りやすい。

それも含めて色んなことをやりながら、解決を「誰かにやらせる」っていう構図がなくなることは、自然経営の中ではすごく大事だなと思っています。

これ、言うのは簡単だけど、やるのは大変ですよねっていうことは、実感があると思いますが…(笑)

島:
はい、ありがとうございます。
今回のお話を伺って思ったのが、前の回に「局面」っていう話をされていて、そこのところで、どう「土壌」を作って「種を植えて」「見守る」かっていう話をされましたけも、今回そことすごく密接に関係してると思うんですね。続けていただいたっていうのもあるんですけれども。

解決手段を選択するというか、何かをしてもらうにしろ、自分がするにしろ、どんな「土壌」を作るかにすごく左右されると思うんですね。

山田:
なるほど。

島:
まさに「土壌」を作るっていうところが、ここで稲を作りますとか、麦を作りますとか、果物を作りますとか。それを整えることで、この果物は私も作りたいとか、ブドウを作ってワイン飲みたいとか、それが好きな人が集まってくる。

誰も「土壌」が荒れ果てているところに行きたいとは思わないので、どんな「土壌」を作るのか、その「土壌」のスコープって言い方をしますけど、どんな範囲なのか。
要は「境界の開放性」と仰いましたけど、その「境界」が何なのかがわからないと、入ってこようがないので、そこを明らかにしてあげる、その上で出入り自由ですという感じにしてあげると、良い方向に行くのかなと思ったんですよね。

山田:
なるほど。
そこの「境界線」っていうのも、島さん自然経営研究会という活動をかれこれ2年ぐらいかな、いろいろご一緒していますよね。

島:
はい。

山田:
あの活動とか、「境界線」とか本当にないじゃないですか(笑)
良くも悪くも、という言い方が正しいか分からないんですけど、良い意味で言えば、関わりたい人は誰でもどんどん中に入ってきて、色々と活動を起こすこともできるし、悪く言えば、そんなにズケズケでいくのをちょっとためらうような気配りをする方だと、「どうやってこれ入ればいいんですか?」ってなりがち、っていうのは、多分起こってきたんだなと思う。

島:
はい、僕も最初そういう相談を山田さんにした覚えがあります(笑)

山田:
たぶん、そのときの答えは「好きにやればいいじゃないですか」みたいなことしか言わないんだけど、最初に外から来たときはすごい気を使うじゃないですか。
なので、「境界線」をかっちり決めたわけじゃないし、なるべくなくしたいんだけど、入るときの心地よい入り方、ステップみたいなことはあると良いということは、この2年間色んなやり方をしてきたなってお話しながら振り返ってました。

島:
ですよね。
「境界」で大事なのが、決して固定されてないっていうことですよね。「境界を決めます」っていうと、僕もそうですけど、だいたいみんなカチカチカチッて決めたがるし、そういうものだって思い込みがありますよね。
でも実はその「境界」っていうのは、人によって変わってるでもいいわけですよね。

必ず全員が一致しなきゃいけないっていうものではなくて、僕の考える自然の境界はここです、山田さんの考えはこうです、って違っても良くて、ただその違いがお互いわかってると良い。
それはどっちにしなきゃいけないことじゃなくて、お互いがそういうのが分かってやっていくと良い方向に行くのかなと思います。

山田:
そうですね。
前の回でも語っていることの一つで、「組織ってどういうものとして捉えますか?」というときに、建物のようなカッチリ決まってる箱みたいに、組織を「実在」として捉えるのか、もっと「現象」として常に動いてるものと捉えるかって言ったときに、自然経営で言ってることってすごく後者の組織って「現象」で常に動いている、流れている、揺蕩っているもの、っていうのがすごくしっくりきている。

そのときに「境界線」って何かについて、僕なりに今出している仮説は、「その本人が自分がその組織の当事者だと思ってる範囲」まで。
なので、すごく密にたくさん活動に関わっていても、「いや、僕は外の人なんで」って思ってるなら外にいるし、最近全然関わってないけど、「いやでも私はここホームタウンだと思っています」って思ってくれてる人は、当事者だと思っている中の人。
その人の心の持ちようみたいなことで境界線が決まってる「現象」と捉えるのが、この3年ぐらいの自然経営研究会の活動の中ではすごい言い表せてる気がしていて、そういう捉え方ができたらいいなって思っています。

一方で、島さんのさっきのお話を聞いてて思ったのは、それだとみんなそれぞれ過ぎてわからないので、「私はいま当事者として関わりたいです」という表明がしやすくなる、それを抜けることも違和感なく何のネガティブな感じもなく、みんなで「じゃあ今はちょっと離れるね」って言えるような、当事者の境界線というか、ステップが、みんなで共有できてるっていう状態は、それはそれで大事そうだなと二つの話をしながら思いました。

島:
うん。そうですね。
普通の組織、いわゆる旧来型組織だと、「境界」は上が決める、例えば創業者が決める。対応っていうのが今回テーマですけど、その範囲を決めてやることも、やる・やらないも上が決めていく。
どうやって決めるかっていうのが今までの稟議制度だったり、職位だったりするわけですよね。

自然の場合というのは、それをあらかじめ決めるとかないわけで、入ってくる人がどう思うか、だと思うんですよね。
そうなった場合、たぶん一番の実務的な問題点というか、「僕はこう思う」「山田さんはこう思う」って、それは紛争とかになるとちょっと別なんですけど、そうでない限り、どれも正しい・間違いがないんですよね。
そうした場合、実務的にこの場合「優先順位をどうする?」かっていうのが自然的な会社とかだと問題になってくる。

その辺のやり方って、例えばアドバイスプロセスでどれだけ共感が集まったかにするのか、コンセンサスで決めるのかとか。あるいはアジャイル的にみんなでペタペタ貼って優先順位を決めましょうってカンバン的に並べてやるのか。
色んなやり方があると思うんですが、その辺りの「優先順位をどうするか?」っていうところ、対応と言っても「やる」「やらない」よりも、「どういう順番でやりますか?」っていうことを決める、そういったことが実務上で大事なポイントなのかなって聞いてて思いました。

山田:
すごくおっしゃる通りだなと思います。
自然経営研究会の実態として、そこでそんなに問題が起きないのはなぜかなって思ったときに、活動がそんなにギュッて密に詰まってないじゃないですか。
なので、そんなにコンフリクトせずに、広い中に色んな活動がポツポツあるから、盛り上がれば盛り上がるし、盛り上がらなければそのままなくなる、みたいなのができる。

けど、企業でこういう運営をしようとしたときって、その範囲に対して中身が結構詰まってる。こっち盛り上がったらこっち圧迫されるんだけど・・・みたいなことが一杯起こる。
そのときに、紛争の解決までいかなくても、「どうやって優先度をつけるんだっけ?」っていう話をより沢山しなきゃいけない。プロジェクトごとの境界面が多いので、摩擦が色んなところで起こりやすい。

なのでどう解決するのかっていうやり方をみんなでちゃんと選んでいると、よりスムーズに動くし、具体的な実践方法としてきっと必要なことだろうと聞いてて思いました。

島:
そうですよね。
ここは本当にいろんなやり方とかあって、僕はそこが一つ見事だと思っているのが、山田さんに劣らず日本語使いが上手いのがソニックガーデンの倉貫さんだと思うんですけど、扱えるだけ、「タスクばらし」って言い方をするのがまさにそこだと思っています。

ざっくりとした問題をボンと与えても何かやるってできないけど、それを細かくしていくと、じゃあどういう優先順位とか、これは自分でできるねとかいうところまで1回ばらしてみる、というのをやっているのが倉貫さん。
それをうまく表現しているところが、あの人の面白いというかすごいとこだなってお話聞くとね思うんですよね。

山田:
なるほど、ありがとうございます。
そうですね、今回のテーマで「対応の仕方」の3つ、自分がやるか、誰かを支援するか、仕組みを作るか、どれかだよねって言って、この3つって敢えて言ってるのは、言いたいこととしては、「やらせる」っていう選択肢はそもそも存在しない、という認識を共有することがスタート地点として大事だなと、今日お話しながら改めて思いました。

一方で、じゃあその3つを本当に実践するときに、どういうやり方でその3つから選択するのか?っていうのは、良いメソッドというかプロセスがあってこそ、すごく実践しやすいんだろうと思う。
そこはもっと具体の方法のテンプレートというか「こんなのもあるよ」が示せると、よりイメージがつきやすくなるのかなと今日お話をしてて思います。

島:
そうですよね。
倉貫さんのバックがアジャイルのやり方とかなので、あの辺りはかなり実務上使えるし、結局ホラクラシーもそっから引っ張ってきてるので。
色んなメソッドがアジャイルにもあるので、参考にはなるのかなっていうのは実務的な話で思いました。

山田:
そうですね、その辺の本当に具体的に何ができるかみたいなところは、自分たちで車輪の再発明をする必要は全然ないので、うまくフィットできるものをいろんなところから活かせると、より自然経営の実践に繋がっていくのかなと思いました。

島:
ですね。ただ大元はやっぱり本当に「土壌」ですね、というところにまず立ち戻って考えるのが大事、と今日聞いてすごく思いました。

山田:
はい、ありがとうございます。
ということで今日は第12回として自然経営を「実践する方法」の一つとして、「対応」をちゃんと選択しようねっていうことを、今日もまた島さんとお話させていただきました。
島さん今日もありがとうございました。

島:
ありがとうございました。

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