長浜カーボンニュートラルツーリズムvol.2-2023.02
サステナビリティやエネルギーについて学ぶ、カーボンニュートラルツーリズム。昨日に引き続き、2日目です。
今日は、滋賀県長浜市、西浅井町を中心に、お米づくりや、地域づくりを実践しているONESLASH代表の清水さんにコーディネートしてもらいます。
西浅井のフィールドワーク
まず、フィールドワーク。集落や田んぼを少し見学。清水さんの住む西浅井の集落では、約3万年?4万年?とにかく相当昔からあると言われる水源の森から流れた水を田んぼ等で使用しています。水源から琵琶湖まで約8キロ。
水源から川が流れ、田んぼに入り、そこから琵琶湖へ流れていくという水の流れを目にすることで、人間社会と自然環境との関係について考え、感じる機会をもらえる貴重なフィールドです。
また、田んぼからの排水は川を伝って、琵琶湖まで流れていきます。
なかなか記事では書ききれませんが、川を辿ると、普段忘れがちな自然との接点について、気付かされるものがあります。
さて、西浅井の水と暮らしについて実感した後、移動して、『あほうどり』へ。
改めて、参加者の自己紹介と講師の方々の紹介です。今回は、清水さんの他、株式会社バイオマスレジンマーケティングの山田さんやナチュラリストのMakiさん等、様々なゲストの方にも参加いただき、お話をします。
導入のお話
まず、ONE SLASHの清水さんから、地域で活動を始めることになるまでの経緯についてお話をいただきました。
『地域のネガティブをポジティブに変える』ということを目指して活動をしているという清水さん。もともとスノーボードの選手でしたが、怪我、挫折を経験し、西浅井に戻った後、夏祭り、ジビエのイベント、テントサウナ等、どんどんイベントを行い、4000人もの人を西浅井に呼ぶこともできるようになったとのこと。
次に、取り組んだのが、米づくり。スノーボードで日本全国の米どころにも行っていた清水さんですが、地元西浅井のお米の美味しさはどこにも負けていないと思っていたとのこと。
そこで、地元西浅井で仲間達と美味しいお米を作り、YouTube等でも発信し、地域のファンになってもらうことで、非常に高価で、ハイレベルなお客さんに買ってもらえるようになったとのこと。
それでも清水さんとしては、全国のお米の消費量自体が減少傾向であることが気になっていたとのこと。
総量が減っている中で、自分達のお米がどんどん売れるようになったとしても、パイを奪い合っているだけで、農家全体の収益をあげることにはならないのではないか。
そう考えていた時に、お米を使ってプラスチックを作る技術があるという話を聞いて、『これだ』と思ったとのこと。
お米を『食べる価値から資源の価値へ切り替える』ということ。食べるお米の消費量は減少していくけれども、資源としての活用方法が広がれば、全体の市場の生産量を上げることに繋がり、その分生産者が助かるのではないか、と。
また、古米や砕米等、売れないお米を使ってプラスチックを作り、農家に収益を還元するという仕組みを作ることで、農家を支援することができるかもしれないと考え、後述する株式会社バイオマスレジンホールディングスと連携し、活動を開始されています。
米のプラスチックのお話
次に、お米を使ってプラスチックをつくるということについて、株式会社バイオマスレジンホールディングスの山田さん(株式会社バイオマスレジンマーケティング代表取締役社長)からお聞きします。
プラスチックは石油製品であり、燃やすと温室効果ガスを排出します。そこで、最近、バイオマス由来のプラスチックが増えています。バイオマス由来であれば、植物などが成長する過程でCO2を吸収するため、カーボンニュートラルな素材と言われます。
現状では、北米のトウモロコシ、南米のサトウキビを原料とするものが多く流通しているとのことです。
しかし、海外からの輸入に頼らずとも、日本にもさまざまな資源があります。まずお米です。清水さんのお話にもあったとおり、お米の需要の低下、耕作放棄地の増加等、さまざまな課題を抱える農業に新しい可能性を示すことができます。
その他にも牡蠣の殻、落花生等、地域の特産品や未利用資源を活用する取組もしているとのことです。
こうした地域の資源を使うことで、地域にお金がまわる仕組みを作ることもできます。まさに清水さん達が考える農家を助けて、カーボンニュートラルにも貢献する可能性のある技術だと感じます。
お米を使ったプラスチックについては、すでに多くの企業が採用しており、身近なところでは、吉野家のレジ袋、モスバーガーのカトラリー等で使われています。また、イナズマロックフェス、フジロックフェスとの連携等、活動が広がっています。
また、米のセーフティーネットとしての機能もあるとのこと。田んぼは一度放置され、荒地になってしまうと、木の根が生える等、再び農業ができるように戻すのには、大変な労力を必要とします。
耕作放棄地を減らして、資源米として作付けをしておけば、国際情勢の悪化等、いざというときには主食用として復活できます。
また、台風で被害を受けてしまい、売り物にならなくなってしまったお米をライスレジンに変えたということもあるそうです。
また、地域と連携した取組も始めていらっしゃいます。例えば、新潟市とは連携協定を締結し、農家や市民と連携し、ごみ袋やカトラリーへ活用するほか、教育を実施すること等を掲げられています。
株式会社バイオマスレジンホールディングスウェブサイト
長浜市でも、今後清水さんを中心とした農家さん達と様々な連携が進められる予定です。
ナチュラリストMakiさんの活動
次に、少し視点を広げて、ナチュラリストのMakiさんから世界のお話をしていただきました。Makiさんは、ネパールと日本の両親から生まれ、ネパールと日本の架け橋として活躍されています。
Makiさんによると、1990年代、ネパールでは、ヒマラヤの山で氷が溶けたことによってできた湖が決壊し、集落が水害にみまわれる、という災害が発生したとのこと。電気もガスもない地域にも関わらず、温暖化の影響を一番最初に受けてしまったのです。
気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量のほとんどは先進国によるものであるのに、影響を受けるのは途上国である、という構造に気付かされます。
Makiさんは、ネパールの国立公園でレンジャーとして密猟を防ぎ、ジャングルを保護する仕事をしてこられました。
また、ネパール政府の協力のもと、宿泊をしながら、国立公園をカヌーで下っていくツアーを企画されていました。水辺に集まる動物たちをそっと見たり、ゾウと戯れたり。ラフティングのようなものではなくのんびり過ごせるヒーリングツアーとして実施しているとのこと。
日本のエコツーリズムは、まだまだ参加者がアミューズメントパークに来るような感覚で来られることも多く、もっと自然や生態系を残すということを参加者と共有するようなツアーを作っていく必要があるとおっしゃいます。
自然に生かされていること、その自然を生かして、ツーリズムを作っていくこと。その実践のお話をお伺いできました。
長浜においても、地域の身近な自然や自然との関わりを感じるツーリズムを考えていきたいと思っており、Makiさんのお話は大変参考になりました。
2日目まとめ
長浜においても、カーボンニュートラルやローカルSDGsに向けた取組を通じて、地域の課題を解決し、たくさんの方が訪問、交流してもらえるような地域を目指していきたいと思います。
今回、長浜をフィールドに学生さん達と学び合うことで、改めて長浜の可能性やカーボンニュートラル、ツーリズムに関する取組の方向性が見えてきたように感じます。
ちなみに、お昼はゲリラ炊飯
ちなみに、お昼ご飯は土鍋と薪で炊くゲリラ炊飯。炊き立てのお米、ジビエ、ビワマス、小鮎等。みんなで美味しくいただきました。
2日間、学生さん達、お疲れ様でした!
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