風車ならどこに建ててもいいというわけじゃない 「公正」「交差性」の意義  

 今日のあらゆる危機を招いた化石燃料依存の世界経済から脱するために、再エネの普及は急務。しかし、自然とともに生きる先住民サーミの伝統的の営みを犠牲にするようなノルウェーの風力発電事業は、時代に逆行する。AFP日本語記事から抜粋:

グレタさんは「脱炭素社会への移行を植民地主義の隠れみのにさせてはいけない」と現地テレビに語った。

問題となっているのは、ノルウェー西部のフォセン(Fosen)地方にある風力発電所。最高裁は2021年、この発電所がサーミ人のトナカイの放牧権を侵害しているとし、151基のタービン建設および操業の許可を無効と判断した。だが判決から1年以上たった今も風力タービンは稼働している。

ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの北部に合わせて約10万人が暮らしているとされるサーミ人は、伝統的にトナカイの放牧と漁業で生活してきた。サーミ人の活動家は、タービンの取り壊しを要求している。

 同国におけるサーミに対する差別、搾取・収奪、弾圧の歴史は長く、再エネだからと無条件に歓迎されるわけではない。トナカイが風車の騒音に怯えているというのは、一般に牛や羊など他の種類の動物では問題が確認されていない状況とは異なる。ちなみに、ドイツ公共放送DWの記事ではグレタがロイターに語った言葉として「先住民の権利と人権は、気候保護や気候行動で一緒に進めていかなければならない。一部の人の犠牲で実現は出来ない。それは、気候正義ではない。」とある。("Indigenous rights, human rights, must go hand-in-hand with climate protection and climate action. That can't happen at the expense of some people. Then it is not climate justice," Thunberg told Reuters news agency outside the ministry's main entrance with other demonstrators.)

 政府や事業者は「妥協」を模索し、裁判所は撤去まで求めていないため、風車が今後どうなるのかは分からないが、グレタも参加した今回の抗議行動は「公正」「交差性」を示すまた新たな象徴的出来事となった。「気候正義」と「人権」は、いわば「車の両輪」であり、どっちが欠けても成り立たない。日本でも軽視されるそのような問題意識を、より広く共有していきたい。


参考:

グレタさん、北欧先住民と「違法な」風力発電所に抗議 ノルウェー 2023年2月27日
https://www.afpbb.com/articles/-/3453166

Norway: Thunberg joins Indigenous protests against turbines 02/27/2023
https://www.dw.com/en/norway-thunberg-joins-indigenous-protests-against-turbines/a-64833612

February 28, 2023 Thunberg, Indigenous protesters block Norway energy ministry over wind farms By Victoria Klesty and Gwladys Fouche
https://www.reuters.com/business/environment/thunberg-other-protesters-block-norway-energy-ministry-over-wind-farms-2023-02-27/

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