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「グリーンエネルギーチャレンジ47都道府県ラリー@長崎県エコパーク論所原さま~バイオディーゼル燃料と循環型社会」

佐賀県を後にし、翌日の5月20日から長崎県に入りました。幸い天候に恵まれながらの移動となり、PoC TECH 号のtsu-mu(ツム)も元気に太陽をたがやしながら九州を巡ることが出来ました。

tsu-muは、太陽光を原料として「電気」というエネルギーを生み出し、1500w出力で大概のくらしの中の家電製品を利用できる概念のもと開発を進めています。
太陽光発電は「グリーンエネルギー」「再生可能エネルギー」などと称されていますが、実は他の要素からもエネルギーは作り出さることから、もっと大きなくくりとして「新エネルギー」という概念の中に位置しています。

ここに、代表的な「新エネルギー」の種類を記します。
新エネルギーには大きく分けて、太陽や風など自然の力を利用する「自然エネルギー」、廃棄物の燃焼熱などをムダなく使う「リサイクルエネルギー」の2種類があります。

*原典:(http://www.nef.or.jp/pamphlet/)等

特定の地域にしか存在しない化石燃料と違って、これらは地球上の広い範囲で享受することができ、枯渇することなく再生が可能です。tsu-muの太陽光発電は、光エネルギーから直接電気を作る太陽電池を利用した発電方式です。
そしてこの中に、とても懐かしさを感じた材料があることに気づきました。リサイクルエネルギー群にある「バイオマス燃料」であり、その中にある「廃油」です。
 
みなさんが子供のころ、子供会か町内会などで月に1回~2回くらい「廃油回収」って無かったでしょうか。
わたしが子供のことは、自宅で使った天ぷら油を回収日に回収場所へ持って行くことを積極的に行っていました。この時は「持ってきた廃油は、せっけんに生まれ変わるんだよ」と聞いていたので、てっきり家庭食品廃油はすべてせっけんにリメイクされるんだ・・・と思い込んでしまい、他のリサイクル用途について考え知るきっかけが無かったのです。

「バイオマス燃料」と聞くと、最近話題になっているユーグレナさんの次世代バイオマス燃料の可能性などワクワクする技術もありますが、その「元祖バイオマス燃料」について知りたくなりました。47都道府県ラリーの訪問エリアで、教えていただけるところが無いかと探したところ、長崎県南島原市の雲仙国立公園にある「エコパーク論所原」で「バイオディーゼル燃料」を製造されていたことを知り、訪問することにしました。

エコパーク論所原は、「循環型社会」について自然、環境、福祉の3つの視点から体験し学ぶことができる環境体験型農園で、オートキャンプ場やコテージなど宿泊も可能です。非常に環境が整えられていることから、研修として訪問利用も可能となっています。一般の方も、オートキャンプやアウトドア活動など気軽に訪れることができる施設です。
またこの施設は、健常者と就労支援や生活介護者のかたが、生活の中で社会的な繋がりを持ち、心のバリアを低く持ち合うことで双方の社会肯定的を育むことができるような仕組みを「就労」というかたちで支援と推進をされています。
今回は、社会福祉法人コスモス会 雲仙市地区事業推進部長の薄田良二(うすだ りょうじ)さんに「バイオディーゼル燃料が繋ぐ循環型社会」の考え方について、伺いました。

*バイオディーゼル燃料の開発者でもある薄田さん。気さくな方で楽しくお話を伺えました。

【バイオディーゼル燃料の作られ方】

植物油からバイオディーゼル燃料を生産する基本反応は、エステル交換反応といわれる、一般的によく知られている反応となります。植物油のエステルを切断し、脂肪酸をメチルエステル化したものがバイオディーゼル燃料として利用されます。
ただし、実際にはいくつかの製造工程を経る必要があります。
まず、植物油にメタノールとアルカリ触媒(KOH やNaOHなど)を添加し、エステル交換により脂肪酸メチルエステルを作ります。この時点では不純物が多くて燃料としては利用できないため、精製過程として静置分離や水による洗浄、脱水などを行います。

現在、薄田さんの法人ではウェルカム社瑞穂BDFステーションでバイオディーゼル燃料を製造・販売をされています。瑞穂BDFステーションでは、大掛かりでなくても製造できるように、とてもシンプルに装置や特殊なろ過技術を活用して製造をされていました。

*廃食用油がバイオディーゼル燃料に生まれ変わるまで

現在、月間で回収している廃油量は4〜5トンで、そのうちの1.5トン程度がバイオディーゼル燃料になるそうです。燃料は、農家さんで使われている作業用車やディーゼル発電機、重機など工事現場での利用が多いとのことです。廃油回収は地域の方からお電話いただき回収訪問したり、持参頂くなどで集まった地域の油です。老人会や子供会、町内会、食品製造会社からの回収もあります。
 
【バイオディーゼル燃料製造と循環型社会の実現を目指して】
平成17年(2005年2月)に京都議定書が発効され、日本では、基準年である1990年と比較して、二酸化炭素排出量は増加していました(2000年で8%増加)。一方、京都議定書において日本が約束した排出削減量はマイナス6%であり、2000年度比14%もの削減が必要でした。
二酸化炭素排出量の詳細をみると、産業部門では排出量が減少しているものの、運輸や業務その他、家庭部門では大幅に排出量が増加していることがわかり、様々な部門から排出される大量の二酸化炭素を一つの方策だけで削減することは不可能であるという共通認識が生まれました。現在に至るまでに、二酸化炭素削減のため種々の方策が講じられています。
エネルギー源としてバイオマスを用いる方法は、二酸化炭素排出抑制に向けて、有効と考えられている方法のひとつです。
植物は、大気中の二酸化炭素を吸収して光合成を行うため、これを燃焼させても、もともと大気中に存在した二酸化炭素が戻るだけなので、化石燃料を燃やしたときのように二酸化炭素濃度が増加し続けることがないのです。


今回訪問した雲仙市では、平成23年(2011年)から本格的な自然循環型社会の形成を目指すため、バイオマスエネルギーとして、バイオディーゼル燃料製造について推進されています。
薄田さんは、暮らしているひとの社会復帰や社会参加の場をつくり支援されている社会福祉事業者として、「自然」「資源」「健康(福祉)」を循環する仕組みづくりを大切にされています。「個の健康⇔家族の健康⇔地域の健康」と、「人の健康」を地域社会のひとつの資源価値として捉え、「活き生き地域」として雲仙市の新しい価値(地域社会資源)づくりを行われています。

自然循環型社会を「社会循環」として根付かすためには、暮らしている一人一人が理解し、協力してゆくことが大切です。今回の訪問は「バイオディーゼル燃料」がきっかけとなり、一つのエネルギー資源への新たな理解だけでなく、「誰ひとり、取り残さない」という取り組みの考え方として、人の関りについて大切な視点を改めて知ることが出来ました。
エコパーク論所原のみなさま、コスモス会ウェルカム社瑞穂のみなさま、薄田さま、ありがとうございました。

エコパーク論所原:https://sfhcosmos.wixsite.com/ecopark

(農林水産省)平成21年度九州バイオマス発見活用協議会:        http://www.tres-ltd.jp/biomass/h21/jirei/

(外務省)京都議定書発効:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/17/dmc_0216.html