ブロムシュテットはかぷかぷわらったよ
昨年は来日出来なかったヘルベルト・ブロムシュテットが来日してくれたよ! 1927年7月11日生まれ、御年94歳。一昨年コンサートに行ったとき、「来年も元気に来てね」と思っていたら、ブロムシュテットでなくてコロナが来た...もっと若くて元気なパーヴォ・ヤルヴィだって来られなかった。NHK交響楽団の定期演奏会の券はまるっと払い戻しになって、日本人指揮者と日本人ソリストの演奏会を、まずは短時間公演でそろそろと始めて、徐々に通常通りの2時間プロに戻っていき、シーズン末になってようやくパーヴォは来たけれど、その後もずっと緊急事態宣言。
9月からNHK交響楽団の新シーズンが始まって、10月は例年通り、A,B,Cプロ全部ヘルベルト・ブロムシュテットが振ると。来るんだ! 来るまでドキドキ。最初にAプロでブラームスのヴァイオリン協奏曲(ソリストはレオニダス・カヴァコス)とニルセンの交響曲第5番を2日間振り、次の週はCプロで「ペール・ギュント」組曲とドボ8(2日間)、そして今週はBプロでステンハンマル「セレナード」と運命を今日と明日の2日+所沢公演(今年は流石に地方公演はないが、関東地方内の公演はありか)。どうしようかと思っているうちにチケットなくなっちゃって、結局定期の券を持っているBプロだけ行くのだが、ブロムシュテット、疲れてない? 大丈夫?、と行くまでドキドキ。相変わらず、指揮台の上に椅子も置かず、立ったまま振っていると、AやCに行った人に聞いていたし。
そしてサントリーホールに行ってきた。ほぼ満席。相変わらずドリンクコーナーはお休み。でも前みたいに係員の人が「通話はお控えください」というボードを掲げて歩き回ることはなくなった。前半がステンハンマル「セレナード」(約36分)、20分休憩の後が運命(約31分)、体力考慮なのか、やや短めのプログラム。
ブロムシュテット、足取りがちょっと弱弱しいが、段差のところは殊更に気を付けて歩き、指揮台に上がると、勿論(勿論なのがすごい!)立ったまま振る。マスクして来て、スコアの表紙の下に挟んで振っていた。指揮棒はなし、手、そして腕を振って音楽を作っていく。もう、目の前でブロムシュテットが振っているだけで泣きそうである。演奏が終わって、大拍手を受け、一旦袖に下がり、また出てくる。段差を上がり下がりしているのを見ているだけでドキドキ。最初下がった時にマスクをするのを忘れていて、指揮台に戻ってきてスコアの下からマスクを引っ張り出してかけていた。結局ステンハンマルのあとは3往復。これ以上はさせまい、と、オケが舞台から引けてインターミッション。
運命の時は、決然とした足取りで舞台に出てくると、マスクも外さないまま、すぐ、振り出した。若干、音の出にぶれがあってはらっとしたが、やはり、顔の表情が見えないのはよくない、と思ったのか、1楽章と2楽章の間でマスクをはずした。ちなみにスコアは置いてあったが、最初から表紙も開かず暗譜で振った。2楽章が心持ち遅いという印象で、近年のブロムシュテットはスピーディーな演奏が多かったと思ったので、この遅さは割と印象的。そして第1ヴァイオリンの美しさに泣きそう。
後半はもうずっと、ブロムシュテットの顔と指先だけ見ていた。厳しい顔つきをしたかと思ったらふっと笑う。素晴らしい微笑み。この微笑みを見られるだけで本当に幸せ。最後は残念ながら、残響が消えないうちに拍手が始まってしまった。そして、3往復くらいして、最後はコンマス判断でオケ退場しようとしたらまたブロムシュテット出てきて、もう1回大拍手。これ以上ブロムシュテットを疲れさすまい、と、オケ退場したが、場内の拍手鳴りやまなかったら、ブロムシュテットまた出てきた...流石にもう段は降りない。一度引っ込んでまた出てくるときは、コンマス(まろさん)が一緒に出てきてアシストしていた。客席みんなスタンディング。近くの席の人はブラヴォーって言ってたぞ。
ブロムシュテットはかぷかぷわらったよ。
ブロムシュテットは跳ねてわらったよ。
いや、跳ねないっす。
明日も、土曜日の所沢も、素敵にわらってください。
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