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100兆円のマーケットを創るための経営体制の強化

こんにちは、エネルギースタートアップenechainの代表の野澤です。

本日、米PayPalグループ傘下のPaidy社から藪内がCFOとしてenechainに入社しました (詳細はプレスリリースをご参照)。
藪内はPaidyの取締役CFOとして、米国PayPalによる3,000億円のバイアウトをリードした経験あるCFOです。enechainでも引き続き取締役CFOとして、財務基盤や管理体制の強化を通じて、さらなる事業拡大を牽引する役割を担って貰います (※株主総会での承認を経て取締役に就任予定です)。

また同じタイミングで、営業部長を務める大津に執行役員を、またテクノロジー本部でこれまで開発・マネジメントから採用を一手にリードしてくれた須藤にCTOの役割をお願いしました。

  • 大津は、創業初期 (2021年1月) に入社し、現在は電力デスクの部長 兼 シンガポール現法のヘッドとして、入社からこれまでの1年半、国内電力市場の開拓において大きな成果をあげてくれました。フロントからミドルバックで30人規模のチームを創り、チームマネジメントでも大きな役割を果たしてくれました。

  • 須藤は前職でもCTOを務めていたという経験を活かし、enechainらしいテック組織創りや、開発の進め方の再定義をリードしてくれました。須藤と後述の西村の頑張りでenechainのテックチームは40人規模にまで拡大し、開発スピードも段違いに上がっています。

また、CXOレベルのリーダーシップチームのみならず、須藤と一緒にenechainのテックチームを引っ張ってきた西村にはVPoEの役割をお願いしました。
それ以外でも、9月以降、ビジネス、カルチャー、エンジニアといった各組織にて、これからのenechainのリーダーとなるであろう方々を外部から採用できており、これから100兆円のマーケットを創りにいく最低限の準備は整った、と感じています。


経営として感じていた課題感

なぜ経営体制の強化に踏み切ったのか。
DCMからシリーズAラウンドで資金調達をしたのと時を同じくして、創業者として自分の中では幾つかの小さな違和感が生まれていました。

全てはマネジメントとしての僕自身の実力不足から来る話なのですが、
事前にすり合わせたスピード感で採用活動ができていなかったり、
プロダクトローンチの期限が何度か後ろ倒しになったり、
徹底してユーザー志向でいくべき筈がサプライヤーロジックでプロダクトの要件定義が進んでいたり。
また、定めている「バリュー」の捉え方にばらつきも見受けられるシーンも増えてきました。以下は先日 コーポレートが投稿したnote からの引用ですが、今考えると、組織がスケールしていくフェーズに入っていく中、小さな軋みが生じていたのかなと感じます。

一言で「バリュー」とはいっても、バリューをイチから策定に携わったメンバーと直近に入社したメンバーとでは、理解度や解釈レベルが異なって当然です。働く場所や国籍、バックグラウンドも多様化し、社員の半分以上が入社半年以内に入社している事実もあります。
これからさらに組織がスケールしていく中で、カルチャーにおける小さな歪みも比例して膨らんでいくのは明白です。

なぜenechainは、カルチャー浸透を重んじるのか

課題を解消する3つの打ち手

こういった課題をどのように解消するのか。enechainは、DCMにも相談しながら、シリーズAの投資を受けてからこの半年、表題のリーダーシップ体制の強化を含む以下3つの取り組みをパッケージで実施しました。
※以下、長文ですので時間がなければ今回の経営体制の強化という標題に関係する #3だけお読みいただけると幸いです。

  1.  カルチャーの再定義と浸透に向けたルールづくり

  2.  数百人規模の組織に耐えうるフェアな評価制度の導入

  3.  1⤴100を実現するために必要な経営体制を強化する

これが必要十分な打ち手だとは思いませんが、このまま組織に大きな変化がないままいくと、後で大きなツケが回ってくるというのは直感的に感じていました。

一の矢: カルチャー再定義と浸透に取り組む

本年1月の投資直後から、DCMの本多さんと原さんにはこのあたりの組織論について相談に乗ってもらいました (DCM繋がりでfreeeさんやatama plusさんの経営層にも相談させていただきました)。
その中で、未来の組織の姿から逆算するとカルチャーへの投資はASAPで立ち上げるべきイニシアティブ (逆に今解消しないと後で大変なことになる) であると判断し、このタイミングでカルチャーと向き合うことを経営の最優先テーマとして掲げました
具体的には先ほどのnoteにも記載のある「マジカル隊」という社内横断のプロジェクトチームを立ち上げて、半年という長い時間をかけて "enechainらしさ" について議論しました。

そして、議論を通じて再定義したenechainカルチャーの浸透させるために、これまでのミッション・バリューの再検討と具体化、社員の記憶に強烈に残るようなショッキングルールの設定など、enechainの社員一人ひとりが「どう行動するか」にフォーカスを当てて検討を重ねてきました。

また、一時の打ち上げ花火で終わらないよう、「enechainカルチャー浸透の担い手」も採用しました!
今後は、カルチャー担当を中心に再定義したカルチャーの「浸透」に向けて千本ノックを続けることで、マジカル隊がつくった流れを定着させて行くつもりです。

二の矢: 数百人規模の組織に耐えうるフェアな評価制度を導入する

2つ目の打ち手が評価制度の導入です。
創業からこれまでの3年は、もちろんMonthly 1on1も実施していましたし、評価制度らしいものもありましたが、お世辞にも仕組み化されたものではありませんでした…。
一方で、既に社員数が100人近くとなり、今後更に拡大していくと思うと、人事制度がブラックボックスになっていると、社員としては納得感を持って働くことはできません。

そういった声が挙がっていたわけではないのですが、一年後だと遅すぎるなということで、マジカル隊と並行して進めるのはなかなかハードだったのですが、コーポレートデスクには無理をお願いして、このタイミングで数百人規模の組織にも耐えうる人事制度を構築しました。
詳細は割愛しますが、人事制度設計の過程では、enechainとして事業およびカルチャーの視点から何を重視しているのか、その上で組織、個人に何を期待するのか。そのためにはどういったスキルが必要かについて徹底的に議論し、必要なスキルを評価基準として言語化しました。
また、幾つかの部門では、マネジメントではなくエキスパートとして技術力等を磨くことで組織に貢献できるというキャリアトラックを新設し社内に提示しました (エキスパートトラックでもマネジメントトラックと同じグレードにまで昇進できます)。
報酬制度についても、評価と連動させる形で、グレード別の給与テーブルやSO制度を設計し、全てを社内でオープンにしました。

新たにつくった人事制度の説明資料イメージ

また、今期から新人事制度を実際に運用していくにあたり、社内では何度も説明会を開き、社員の理解を得られるよう努めています。
グレードや評価については社員の人生にも関わるところなので、経営とコーポレートで何度も集まりのべ数百時間を投入して議論してきました。
(特に初回のグレード設定については、各デスクヘッドにたたき台を作成してもらい、経営やコーポレートも入って社員一人ひとりのグレードについて議論し、カリブレーションを実施しました)

結果、ファーストカットの制度としては納得いくものになりましたが、大切なのはこれからの運用です。フェアに評価されているという社員の納得感が得られるよう、人事制度のチューニングについてはリーダーシップチームとしてもコミットしていくつもりです。

三の矢: 1⤴100を実現するために必要な経営体制を強化する

最後の矢が、今回の表題の経営体制の強化の話です。
経営者としてはまだまだ未熟な自分ですが、この3年会社を経営する中で気づいたことがあります。月並みですが、それは、「会社には成長のフェーズが確実にあり、そのフェーズ毎に適切なリーダーは異なる」というものです。
ゼロイチ (0⤴1) にはゼロイチにふさわしいリーダーが必要ですし、
イチヒャク (1⤴100) にはイチヒャクにふさわしいリーダーが必要。
それも踏まえて、意思を持ってリーダーシップ体制を強化する意思決定を行いました。

曲がりなりにもゼロイチのフェーズが終わり「さぁこれからのマーケットプレイスの流動性を100倍に成長させて行くぞ!」というところに来ると、
「1⤴100フェーズは、ゼロからマーケットを創った創業期とは全く違うゲームだな」というのが僕の率直な感覚でした。
事業の切り口が全く異なってきますし、故に各々の社員に求められるスキルも異なります。当然ながら組織が大きくなりますのでコミュニケーションのやり方も変わってきます。

各々に求められるスキルを例にもう少しだけ説明しますと、創業期を乗り切るスキルとして何が大事だったかと思い返すと、うちの場合は兎にも角にも「フルスタック」に「スピード感を持って足を動かす事」の2点でした。

  • ゼロイチフェーズということもありそもそも人もいませんので、僕の場合はどぶ板営業からコピー機の契約までとにかくフルスタックで、スピード鬼重視で仕事をしていたことを覚えています。

  • 営業一筋20年で、インターネットにはそんなに明るくない (むしろ好きくない) 取締役の加藤もよくNTTや通信会社と格闘していました(笑)

  • 樽井は理系出身のコンサル上がりにしては珍しく、コールドコールをしまくっていました。これも決してコールドコールが趣味な訳ではなく、彼なりに自分の役割を考えながら無理をして足を動かしていた筈です。

  • エンジニアも同様です。ゼロイチを実施するためには完璧なコードが書ける必要はなく、とにかく動くモノがないと始まらないのでフロントからバック、インフラ構築までフルスタックに、いかに早くプロダクトを創り切れるかの勝負でした。

    • この点、創業メンバーの青戸も竹ノ下も素晴らしく、創業期にとにかく動くものを出すぞという感覚でeSquareを開発、ローンチできたことは、その後の僕たちの事業を考える上では大きな成果でした。

一方で、1⤴100フェーズで自分が重視しているのは、「チームが創れること」、「そのチームのマネジメントができること」、そして事業面では「ストック的思考を持っていること」、の3点です。

  • 大きなことを成し遂げようと思うと背中を預けられる仲間がいないと始まらないので、個人的には、特にリファーラルで人を引っ張ってこれるかはリーダーとして最重要のスキルだと考えています。僕はチームを創れない人にリーダーは出来ないと思っています (特に僕たちのようなアーリーステージのスタートアップはなおさら)。

  • また、メンバーが増えると、フェアに評価しその評価に納得感を持たせてられるかというマネジメントの仕事はこれまで以上に重要となります。時には厳しいことも言わないと駄目な訳ですが、「この人が言うなら聞いてみよう」とか「この人であれば付いて行こう」とか、そういったもはや言語化できないリーダーの器みたいなソフトスキルもめちゃくちゃ重要となります。

  • 最後にストック的思考ですが、1⤴100フェーズではより「仕組み化」を意識する必要があります。属人的にゼロをイチにして且つそれを横展したり自分でない誰か他の人間でもできるように何が必要か、自動化するためのボトルネックが何かを抉り出すスキルが must-haveとなります (逆にスケーラビリティの低い事業領域をバサッと切り捨てられるかも重要)。

今後は、経営者の経験が豊富な藪内を外部から迎えて、また社内からも上記のようなスキルセットを持つ大津、須藤を経営メンバーに迎えて1⤴100フェーズに取り組みます。

何年か後にこの判断が正しかったと胸を張って言えるよう、"Building energy markets coloring your life" の実現に向けて、エネルギーマーケットの流動性向上にコミットしていきます!!

(余談ですが、そんなことをもやもやと考えている際、先日、出張の飛行機の中でユニクロの柳井さんが「売り上げが3倍になったら、会社をがらりと全部取り換えるくらいでないとうまくいかない」という3倍ルールを提唱されているという記事を読み「自分の今回の判断もきっと間違っていない筈!」と少しだけ自信になったのでご紹介させていただきます)。

中小企業の経営者は「儲けようと思っていない」とのことでしたが、さすがに儲けようと思っていない人はいないのでは……。
柳井:会社はマネジメントとイノベーションが組み合わさることで、初めて成長します。けれど、上場企業も中小企業もちょっと成功すると「これで出来上がり」みたいな錯覚に陥る。売り上げが3倍になったら、会社をがらりと全部取り換えるくらいでないとうまくいかないにもかかわらず、です。
僕がおやじから継いだとき(1984年)、会社の売り上げは1億円ほどでした。それから3億円、10億円、30億円、100億円、300億円、1000億円、3000億円、1兆円と伸ばすたびに、会社の中身をすべて変えてきました。本当に儲けたいと思っている経営者は、それをやる。
バックミラーを見てばかりで、切り替えられない経営者は儲ける気がないのです。すると会社は縮小均衡していく。これが「企業成長の3倍ルール」です。

日経ビジネス ユニクロ柳井社長「僕がほかの経営者と違ったところ」

enechainの採用について

2022年6月に開催したスリル合宿の様子

最後になりましたが、enechainは、この7月から4期目を迎えたばかりの創業「ド」初期のスタートアップ。
強い組織づくりに向けてのカルチャーにご興味お持ちいただいた方、そしてミッションであるエネルギーマーケットの創造に共感いただける仲間をお待ちしております!

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