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Alice in Mysterious world(前編)


私、西嶋有栖は何故なのかその日、広大な草原で目を覚ました。
そして、いつの間にやら目の前に立っていた花かんむりの金髪少女にこう言われたのだった。

「こんにちは、私はアリス!あなたの名前をもらいに来たよ!」

「え、な、名前?えっと……ごめんね、私この状況がまだいまいち呑み込めてなくて」

「うん!知ってるよ。だから今貰いに来たの」

目の前の少女が何を言っているのかよくわからない。もしかしてごっこ遊びか何かだろうか。
普段であれば、年上として遊んであげることができたのだろうが、今はそんな余裕がない。

「あ~……アリスちゃんだっけ?ごめんね、お姉さんちょっとこれから帰らなきゃいけないんだ。だから、いま遊んであげられないんだよね」
「帰るってどこに?おうち?それだったら無理じゃないかな」
「え、どうして?」
「んー、そうだ!名前をくれたら教えてあげるよ! 」

なぜ私は帰ることができないなんて言われたのだろう。もしかして私は誘拐事件に巻き込まれたのだろうか。
事の真相を知るには、アリスの遊びに付き合うしかないようだ。幸い、私は私の名前が気に入ってはいない。
たかが遊びとはいえ、本当にあげてしまいたいなんて思う。しかし、

「私の名前……か。ごめんね、アリスちゃん。アリスちゃんには、私の名前必要ないと思うよ。えっとね、私の名前は」
「知ってるよ。『ありす』でしょ?ここにくる子はみんな『ありす』なの。だから、私もあなたも他の子もみんな『ありす』だよ」

そんな偶然あるのだろうか。いや、きっと偶然なんかじゃない。『ありす』だけを狙った誘拐事件なのだろう。
私はますます自分の名前が嫌になった。こんな名前じゃなければこの事件に巻き込まれることもなかったのだ。

「じゃあ、アリスちゃんは私と同じ名前なのにそれでも欲しいの?」
「ううん、同じ名前だから欲しいの!」
「そ、そうなんだ」

最近の若い子の感性はよくわからない。とはいっても、世間一般の目から見たら私もまだ23、十分に最近の若い子なのだろうが。

「うーん、じゃあ分かったよ。私の名前をあげるから、此処のこと教えてほしいな」
「ほんとに!やったー! 」

そういってアリスは、ピョンピョンと跳ねて喜んでいる。それも、満面の笑みを浮かべて。
しかし、アリスが跳ねるのをやめると雰囲気が一変し、なんだか殺気のようなものを感じた。

「じゃあ、早速。あなたの名前、もらうね」

アリスがそういうと足元から大きな茨が伸びてきて、私を締め上げてきた。

「え、なに……これ?い、痛っ!」
「そういえば私、ちゃんとした自己紹介してなかったね。初めまして、私は茨の国のアリス。よろしくね、きっともう会うことはないだろうけど」
「茨って、これアリスちゃんがやってるの!?ちょっと、やめて!」
「やめないよ。だって、やめたら名前貰えないもん。だから、ちょっとおとなしくしててね」

茨の締まりがどんどんきつくなる。そのたびに棘が体に食い込んできてとても痛い。
体に温かい液体が伝っていくのを感じる。茨のせいで確認できないが、恐らく私の血だろう。

「アリスちゃん!死んじゃう、私、死んじゃ……うって」
「うん、そのつもりだよ」

アリスは淡白にそういった。先ほどまでの無邪気なアリスはどこに行ったのだろう。
そんなことも考えられなくなるほど意識が遠のいてくる。茨に締めつけられている上、出血もしているからだろう。
私の意識が飛ぶのにはそう時間がかからなかった。視界は真っ白に包まれ、そして

「んー?そろそろいったかな?おーい、生きてるー?死んでたら手を挙げてー……うん、よかった。手を挙げられたらどうしようかと思ったよ」

私の視界には、そんなことを言っているアリスの後ろ姿と、茨に締め上げられ血にまみれながら意識を失っている様子の私が映っていた。

                                                                                         

                                                    to   be continued...

*(割と思いつきで書いてしまったので完結できるかは自信ないです。後編もできれば近いうちに出しますがあまり期待しないで待っていただけると幸いです。感想等いただけるとモチベーションが上がるかもしれないです

何卒、有栖達をよろしくお願いします。次回、〇〇の国の有栖!)