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『ミセス・ハリス、 モスクワへ行く』

このところ、忙しさが続いていたのですが、そこへ新たに、驚くべき   ニュースが入りました。
それは角川書店の編集者からで、私が40年以上も前に翻訳した『ハリス おばさん モスクワへ行く』を、今年の年内に角川文庫として、タイトルは 少し変えて、『ミセス・ハリス、モスクワへ行く』として出版したいので、八王子で会見したいというお申し出でした。

『ハリスおばさん』シリーズは4冊から成っていて、一冊目の『ハリス  おばさん パリへ行く』は、1958年にポール・ガリコによって書かれ、1967年亀山龍樹氏が、完訳ではなく, かいつまんだ形の抄訳で、講談社から日本に紹介されました。

このハリスおばさんシリーズ4作を「完訳版にしたい」と、講談社からある方を通して、私に依頼がありましたのが、1970年代半ば過ぎでした。   それまでに単行本として出ていたのは、抄訳版の3作目までで、これを完訳版に整えることが、どれほど大変だったことか! 誤訳訂正と省略部分を 埋めつつ、文体は、軽妙洒脱な亀山氏流を、継承しなくてはならないのです から。

そして、4作目はノータッチで残されていて、それまでの作品の言葉の流れに沿わせる努力をしながら、私ひとりでやりとげなくてはならなかったのですが、亀山龍樹氏との〈共訳〉の形になっています。文体を沿わせたのですから、〈共訳〉とされても仕方がない、と思いつつも、実際は亀山氏は亡くなられて2年後に、初めて翻訳し出版されたものですから、割り切れない思いが残りました。

完訳版の1冊目の『・・パリへ行く』の文庫版が出たのが、1979年12月の ことでした。その3ヶ月後の1980年3月23日に亀山龍樹氏は亡くなり、『・・ニューヨークへ行く』の出た同年12月には、この2冊目完訳版を見て頂く ことはできなかったのでした。

そして『・・国会へ行く』は、1981年8月15日に、『・・モスクワへ行く』は1982年11月15日に出版されたのでした。

この1作目の『ミセス・ハリス、パリへ行く』がアメリカで映画化され、 大評判なのだそうで、続きの『・・ニューヨークへ行く』も映画化される らしいのです。角川では、すでにこの2冊は、講談社の完訳版を元に出版を終えていて、3作目の『・・国会へ行く』と4作目の『・・モスクワへ行く』をも、続けて出版しておきたいとのことでした。

この一作目の『ミセス・ハリス、パリへ行く』の映画版は、すでに日本でも上映されているそうです。


今回の『ミセス・ハリス モスクワへ行く』とタイトルを変えての出版で、ゲラ判の目通しを2度、7月から8月にかけてする予定となっていて、4作の中で、最も長い350pの上に、現在世界を震撼させている〈ロシアの ウクライナ侵攻〉最中での『・・モスクワへ行く』ですので、気を遣うことになりそうです。でも、長生きしていると、こんなこともあるのだと、思いがけない嬉しいニュースではありましたので、記しておきたくなりました。

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