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(197) ある趣向

気心の知れ合った友人たちが、わが家へ10人集まることになった。昼食用に何か一品持ち寄って、掘りごたつを囲んで、気楽にすごそうと言う会なので、準備はほとんどいらない。

それでも、ある思いつきを実行してみたくなり、2週間前から、せっせとSデパートの地下食品売り場へ通った。目的の品はシューマイの付属品の、陶器のしょうゆ入れ。

愛嬌のある表情と仕草が描きこまれた、人形型のこの容器が、はし置きにぴったりだと知ったのは、数年前にアメリカ人のグロリアを招いた時だった。

その時は、イヌフグリの青い小花を挿し、はし置きにした思いつきを絶賛され、土産にアメリカへ持ち帰って、真似したいと言われた。廃品利用が、思わぬ日米親善効果まで生み出したのだ。



ある趣向



当日までに、どうにか10個をそろえたものの、適当な小花を見つけにくい時節ではあり、マンリョウの赤い実で、間に合わせることにした。

さて本番の日、緑の葉の間に赤い球をのぞかせたはし置きが、10個食卓に並べられると、歓声が上がった。

「まあ、かわいい!」

食卓は楽しく始まり、話題は日本のもてなし文化についてまで広がって、 予想以上の賑わいとなった。皆さんがそれぞれ持ち寄りの一品も、好評ぞろいで、ほんとに楽しい会となった。

が、実は、後遺症がいまだに残っている。当分シューマイは見たくない。 おまけが欲しくてお菓子を買いあさる子どもたちを、笑えなくなって   しまった。

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