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(103) ナンテン

家の北側にナンテンの木を植えると、その家は繁盛する、と教えてくれたのは、方角や占いに詳しい友人でした。

星さんは半信半疑ながら、25年前に建売住宅を買った時、玄関の近くに植えてみました。なるほどナンテンは繁茂しました。陽射しも少ない北側にもめげず、年々株を増やし丈を増し、いつしか平屋の屋根に届くほどに育ちました。

冬の花実の少ない時期に、びっしりと赤い実をつけ、生け花の花材に役立ちます。

ヒヨドリや山バトが、実をついばみにも来ました。そして、雪の日には、3人の子どもたちが我先に赤い実を摘んで、雪うさぎや雪だるまを飾ってやりました。


ナンテン



今は亡き姑は、誕生日や祝い事のたびに、赤飯をふかして、それを近所におsすそ分けするとき、決まって重箱の底と赤飯を詰めた上のそれぞれに、ナンテンのひと枝を添えたものです。あなたの難を転じて、幸いが茂りますように、との祈りをこめて・・。

そのナンテンの木が、今年ついに切り倒されました。古びた家といっしょに取り去られ、その跡に新しい家が建ちました。今はどんな木も植え直す余地のない、北側の細い隙間を通るたびに、星さんは思います。この新しい家をもつ幸せは、あの木がくれたものかもしれない、と。

そして、北側のガレージの中に、しっかりした鉢にナンテンを植えて、もう一度育ててみよう、と思い立ちました。というのも、ヒヨドリたちが南側の庭にタネを落としてくれたのか、小さなナンテンの木が生えているのを、見つけたのです。あれを鉢に植え直せば、きっとまた育ってくれるでしょう!


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