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(20) まつり

大学の級友の源さんが、都心から正を訪ねてきたのは、大学に入って初めての夏休み、八王子祭り3日目のことでした。駅で見たものすごい人出に、パレードのある日と知って、源さんはたいそう喜びました。

源さんは祭りが大好きで、去年のアメリカ旅行の時も、パレードは逃さず見てきたと言います。
「パレードが好きでよかったよ。通行止めで、歩くしかないからさ」

ふたりは駅前通りから、人にもまれながら、20号線の大通りへ出ました。コンチキ、コンチキ、パレードは始まっていました。
おはやしを乗せた山車 (だし)、鼓笛隊、おどりの一団、オープンカーと華やかに続きます。

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「お、また山車だ、ぜんぶで何台あるんだ?」

源さんは興奮して数えています。20台を超えてるよ、ほらまた来た!
郊外の町に、これほど大がかりな祭りがあったのかと、彼は度肝をぬかれたようです。

「アメリカのよりすげぇや。あの山車の古さと、細工のうまさを見ろよ」
建築科の源さんらしい目のつけどころです。

正は自分の住む町の山車を見つけて、なつかしさと誇らしさを覚えました。小学生の時は、綱を引いて歩いたものです。

「今だってやれるさ。祭りは参加する方が、10倍楽しい」
源さんにけしかけられて、正は10年ぶりに綱を引いて、通りを練り歩きました。源さんといっしょに・・。


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