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(180) 魅力的図書室

浅川沿いのF高校に畑先生が転勤になって、早くも3か月が経ちました。部活の運動部が盛んな校風で、生徒たちの元気なこと!担当の音楽の選曲にはテンポのいいのを取り上げると、すぐに反応して声張り上げてくれます。吹奏楽部は運動部の応援によく駆り出されますから、こちらも熱心な生徒が多いのです。あれこれ気配りして、忙しさに追われた気分の日々でした。

ようやく落ち着いてきたある日、図書室を覗いて見ることにしました。と言っても、大して期待はしていませんでした。

学校の図書室と言えば、前任校もそうでしたが、古い全集ものか古典もの、せいぜい推奨本が少し置かれている場合が多い気がしていました。

ところが、ここはまったく違いました。

ドアを開けると、明るく広い室内の何本もの書棚に、カラフルで新刊本らしい本が、背丈も大小さまざまに並んでいます。

顔見知りの女生徒が顔を上げました。

「何を読んでいるの?」
「リボンの騎士でーす」
「ええっ? そんな古い漫画も置いてあるの?」
「ほら、あそこにいっぱいあります。絵本もいっぱい!」 


IMG_20220113_0020図書室


畑先生はワクワクしながら、行ってみました。なつかしい『はだしのゲン』『鉄腕アトム』に始まって、児童書、青春もの、大人用のベストセラーものが選び抜かれて並んでいました。
夫が読みたがっていた『長英逃亡』もあります。

本好きの夫なら、寝袋と懐中電灯を持ち込んで、読み明かしたい、と言い出しかねません。

空席をやっと探して、畑先生は『ガラスの仮面』の最新作を開きました。まだ慣れない赴任校で、新しい場を得た気がしました。


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