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 1章-(2) 出発は 5月31日

ガイドブックを数冊拾い読みしてあったが、もっと詳しい情報を得たくて、東京にあるオランダ政府観光局にも電話してみた。
ナイメーヘンとオランダについて、次のようなことを教えてくれた。

・1ギルダーは63円 ('23年の現在 67円)
・英語は7割の人が話せる。
・水道水は飲めないので、湯沸かしを持参すること。
・サマータイムは、3月末から始まる。
・東京とは、7時間の時差。
・町は小さく、歩いて回れる広さ。
・電車は国鉄で、時間は正確。
・公衆トイレはない。紙は持参が望ましい。
・ホテルにはタオル類完備、寝間着は持参すること。
・6月は月に10日くらい雨降りとなる。
・緯度はサハリンの真ん中あたりに位置するので、6月初めでも寒い。
・ライナー付きジャケット、厚い冬物カーディガンが必要。

これを聞いて、寒さに弱い私は、季節はずれのジャケットを通販で取り  寄せ、寒さ対策物ばかりをリュックに詰めこんだ。
(これが大間違いだった。連日33度~35度の猛暑に、半袖類は持って いなかったので、現地調達するはめになった。むしろ、多様な衣類の準備が必要だったのだ)

いよいよ当日。空港の4階で出国審査をすませ、荷を預け、45ゲートでKL862便を待つ。私はウール長袖シャツに黒ズボン、リュック姿。夫は紺色のブレザーにグレーズボンでリュック。周囲は様々な服装だ。アメリカ人の女の子で、リュックから大きなテディベアを覗かせ、つんつるてんの半袖 Tシャツと半ズボンのすきまに、丸っこいお腹を丸出しにしていて、かわいい。母親はだらけたTシャツ上下に、鼻緒の切れそうなぺたんこ草履をはいている。日本人はたいてい小ぎれいで、オシャレをしていた。

風が強く、飛行機は30分遅れで飛び立った。アムステルダムまで12時間の旅だ。「ウインドミル」という機内誌が、オランダ情報を伝えていて面白い。スチュワーデスは、オランダ美人と日本人の両方が乗っていて、サービスが行き届いている、と夫は感心していた。
夫がモスクワへ3ヶ月の旅をした時、アエロフロートでは、ロシア人のがっちりと体格のいいおばちゃんだけだった、のだって。

機内テレビでどのあたりを飛行中か、矢印で示してくれるのでよくわかる。ついでに眼下の景色を写したり、山や川の名前を表示してくれたらいいのに、と私はぼやく。
私が「あれバイカル湖じゃない?」「揚子江じゃない?」とか、とんでも なく場違いなことを口走るので、大声出さないで、恥ずかしいよ、と口止めされた。
「飛行機は嫌いだけど、あなたといっしょでよかった」と私。

窓ぎわに座った私、その隣に夫。通路側の席の若い女の子が、出発以来眠ってばかりで、私はトイレに行きたいのに、乗り越えていくのが大変だった。でも、よく観察してみると、彼女は飲み物サービス時に、マーテイニーを、ランチ時には葡萄酒をもらっている。そうか、時差呆け予防に眠りながら 行くため、アルコールをわざと飲んでいるのかもと思えて、私も真似して みたが、結局1時間ほどしか眠れなかった。 

外気はマイナス61度。シベリア上空からヨーロッパ上空へ差しかかったが、雲海が見えるばかりで、空は一刻も暗くならなかった。席は夫と交代 してもらった。

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