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【連載小説】一途な気持ち 2話 感激

#連載小説 #一次創作 #一途な気持ち #感激

 律子にメールを送った。
<準備ができたら迎えにいくから連絡ちょうだい?>
 きっと今も仕事中かもしれない。夜飼いというやつ。馬が好きだから牧場の仕事が続くんだろう。じゃなかったら、辞めていると思う。年がら年中、外で仕事だから猛暑の日もあれば、極寒の日もあるだろう。そんな過酷な環境で仕事をするわけだから感心する。

 19時半を少し過ぎてメールがきた。見てみると律子からだ。
<わかったー、連絡するねー!>
 メールの文面では元気そうだ。住み込みで働いているが、消灯とかはない。病院じゃないから当然だろう。いつ出歩いてもいいが、必ず夜中に出歩く際には施錠をしなければならないようだ。当たり前の話だが。

 メールがきたのは、20時過ぎ。
<用意できたから、来てもらえる?>
 俺もメールをした。
<わかったー! 今からいくわ>

 今は夏なので、俺は格子柄の半袖のシャツに、茶色のハーフパンツを履いて出掛けた。家族には何も言わずに出て来た。いつもそうだが。
 20時半前に律子のいる家に到着した。そして、電話をかけた。すぐに出た。
「律子? 着いたぞ」
『わかった、今行くね』

 家から出て来た律子は半袖で水色のワンピースを着た姿。かわいい。今すぐ抱きしめたい。でも、そんなことをしたら、驚くだろうし嫌われると思う。だから、我慢。でも、何だか具合い悪そう。どうしたんだろう? 満面の笑みを浮かべながら小走りにやって来た。転ばないか心配になった。だが、そんなことはなく助手席に素早く乗り込んだ。そして、開口一番、
「大輔! 誕生日おめでとう! 27歳になったね!!」
 と、大きな声で言った。俺は凄く嬉しかった。感激もしたし。だから、涙が出てきた。
「サンキュ!!」
 手で涙をこすっていると、
「大輔、泣いてるの? 感動した? わたしのデカイ声で言われて」
 彼女は笑っている。
「そりゃ、嬉しいさ。涙も出る! 律子、嬉しすぎるから抱きしめて
いいか!?」
 俺は半分冗談でもう半分は本気で言った。すると律子は、
「それは勘弁してよ。いくら嬉しくても」
 ケラケラと彼女は笑っている。何だかフラれた気分だ。少しショックを受けた。でも、そんな様子を見せないようにした。
「そうか、残念。レストランに行くか。どこのだ? 案内してくれ」
「わかったよ」
「律子、さっきから気になってたんだけど、体調悪いのか?」
「ん、ちょっと風邪ひいちゃって……。ごめんね、大切な日に」
「それは、いいけど無理すんなよ」
 彼女は頷きながら、
「うん」
 と、首を縦に振った。

「今、何時だ?」
 俺は律子に訊いた。
「9時前だよ」
「まだ、時間はあるな。予約はしてくれたのか?」
「予約はいらないよ」
「そうなんだ。詳しいな」
「友達とたまに行くからね」
 それを聞いてうらやましいと思った。

                            つづく……

 


 

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