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死と出会い 14話 電話

 僕は愛理と一緒に下校した後、家から雄二の自宅に電話をかけた。四十九日の法要がいつ執り行われるかを訊くためだ。訊いた後、愛理にも電話で伝え、その後三十分くらい雑談していた。その時、不意に……。

#小説 #死と出会い #電話 #四十九日 #不意に思ったこと

 久しぶりに愛理と一緒に下校した後、僕は自宅で雄二の自宅に電話をした。彼の家には何度か電話したことがあったので、雄二の母親とは何度か話したことがある。でも、今回は彼が亡くなってから初めて電話をする。葬儀では彼の両親と対面はしたものの、話が出来ないくらい泣きじゃくっていたので、挨拶程度だった。あれから約一ヶ月経過するけど、少しは気持ちを立て直してもらえただろうか。

 今回の電話は法事の連絡なので、少し緊張した。早速、居間にある固定電話から雄二の自宅に電話をかけた。ちなみに、僕の両親は共働きなので不在だ。父は電気工事士をしていて、母は小さな花屋を経営していて、従業員を一名雇っているらしい。まだ、その店に行ったことはないけれど。数回、呼び出し音が鳴って繋がった。

「もしもし、外川です。外川秀一です」
電話に出たのは、雄二の母親だった。
『あ、秀一君? 久しぶり』
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
僕は慎重に言葉を選びながら話した。
『そうねえ。あんなことがあった後だから、まだショックは完全に癒えたわけじゃないけど、お父さんも仕事に行けてるし、私も四十九日終わったらパートを探そうと思ってるの。あまりのショックで前の仕事辞めっちゃったの』
「そうなんですね。ところで四十九日はいつですか?」
『今月の十九日よ、十一時から』
「出口愛理さんと一緒に参列したいのですが……」
『どうぞどうぞ。その方が雄二も喜ぶから』
受話器の向こうで喜んでいるような声を出している。
「わかりました。では、その日に二人でお邪魔します。よろしくお願いします」
『はい、よろしくね』
「では、失礼します」
「はい」
雄二の母は、終始穏やかな口調で話してくれた。ありがたかった。まだ、完全に気持ち復活していないようだけど、だいぶ元気を取り戻してくれて良かった。

僕はそのまま愛理のスマホに電話をかけた。僕はスマホを持っていないので羨ましいと思う。
彼女は自室にいたのかすぐに繋がった。
「もしもし、愛理?」
『もしもーし』
高音で元気な声が聞こえてきた。
「雄二の法事、今月の十九日の十一時からだってさ」
『あ、そうなんだ。訊いてくれたんだね、ありがとう』
「迎えにいくよ」
『うん、わかった。待ってるね』
要件を言った後、僕らは三十分くらい雑談をし、電話を切った。

 僕は不意に思ったことがある。それは、高嶺の花と思っている女子バスケ部のキャプテン、麗香先輩のことを。確かに憧れている。でも、どうして今なんだ。僕は自分でもわからなかった。今度、機会があったら話しかけてみよう。


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