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【連載小説】僕の好きなこと 9話 仕事を辞めた僕に理解を示してくれない友人

#連載小説 #僕の好きなこと #一次創作 #辞職

 とりあえず仕事は決まったし、前島隆とは飲みに行けるかな? 祝って欲しいというのが本心。もちろん、家族にも祝って欲しいと思ってはいるが。

 隆にはまだバイトが決まったとは言っていない。会った時に言うか。明日からバイトだから、二日酔いになるくらいまでは飲めないけれど。

 時刻は17時過ぎ。18時まで隆は仕事だから、もう少し待つか。一応、忘れているかもしれないから、LINEを送っておこう。
<お疲れ。今夜、飲みに行ける? 伝えたいこともあるし>

 待っている間、僕は自分の部屋で横になってテレビを観ていた。小説を書こうとも思ったが、書かなかった。そんなに時間がないから。

 そして、18時30分ころになりLINEがきた。隆からだ。本文は、
<お疲れ! 話したいこと? 行けるぞ。いつもの居酒屋でいいのか?>
 そういう内容だった。
<ああ、いいよ。僕が迎えに行くよ>
<わかった。すぐ来れるのか? 俺、腹減ってさ。ビールも飲みたいし>
<うん、今すぐ行くから待ってて>
<了解!>
 LINEのやり取りを終えたあと、階下に降りた。そして母に、
「隆と遊んでくる!」
 告げた。母は、
「明日からアルバイトだから遅くなるんじゃないよ」
「わかったー」
 と言って、家を出た。

 僕は隆の家に10分くらい走って到着した。僕は黒いTシャツにダメージジーンズを履いて出てきた。彼は赤いTシャツにベージュのチノパン姿だった。身長は隆の方が高く、確か180センチくらいあるはず。僕より10センチくらい高い。

「さあ、行くか!」
「ああ。哲太、ずいぶんと気合が入ってるな。何か良いことあったのか?」
 気合? そんなつもりはなかったけれど、
「そうか? まあ、強いて言えば嫌な仕事を辞めて、新しい仕事を見つけたからかな」
 隆は驚いたように僕を見た。
「何だ、辞めたのか。給料良かっただろ?」
 僕と隆は車に乗りながら話している。
「まあ、そうだけど仕事は上手くいかないし、人間関係は悪いしで嫌になったんだ。給料の問題じゃない」
 彼は腑に落ちない顔をしている。
「そうか、どれくらいいた? その会社に」
 僕は運転しながら聞いている。
「数か月だわ」
 そう言って隆の顔を見ると少し呆れているような表情をしている。
「もう少し、頑張れたな。我慢も必要だぞ?」
 僕はわかってくれると思って話したのにそうじゃなかった。なので、イラっとした。
「我慢は充分した! これ以上我慢したら病気になる」
 彼は黙っていた。病気というのは、ストレスで胃腸を悪くするとか、心の病にかかるという意味だ。本当は新しい職場に就けたから喜んで欲しかった。それが残念で堪らなかった。

                             つづく……

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