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【連載小説】僕の好きなこと 8話 即決の面接

#連載小説 #一次創作 #僕の好きなこと #即決の面接

 翌日の12時40分頃、スーツを着て面接を受けるためにコンビニに車で向かった。
 到着したのは、約10分後。店内は混雑していた。なので、店員さんに声を掛けづらい。レジにはお客さんが並んでいるし。だから、約束の13時の面接
に遅れてしまう可能性がある。

 店内が落ち着いてきたのは13時を少し回ったところ。僕はレジの店員さんにようやく声を掛けた。
「あのう、今日13時に面接を受けることになっている石垣哲太です」
 僕よりも若い女性店員だろうか、可愛い。
「事務所に店長がいますので、こちらにどうぞ」
 彼女のあとに着いて行った。
 事務所には体格の良い女性がいた。女性店員は、
「ああ、どうも。店長の柏原かしわばらです」
 軽く会釈した。僕も挨拶をした。
「初めまして、石垣哲太です」
 僕は深く頭を下げた。
関口せきぐちさんは売り場に戻って」
「はい」
 さっきの若い女の子は関口さんというのか、覚えておこう。もしかしたら、一緒に働くかもしれないから。
 柏原店長は、
「そこの椅子に座って」
 と言い僕はそれに従った。その椅子は古いからなのか、きしむ音がする。
 目の前の女性も椅子に座った。僕は柏原店長に履歴書を渡した。
 それから10分ほど話して、即決だった。
「いつから来れますか?」
 柏原店長の質問に、
「いつからでもいいですよ」
 と答えた。
「じゃあ、明日からでも良い? 明日の9時から。レジの使い方や、それ以外の仕事を覚えてから夜中の仕事をしましょう」
 笑顔で僕に言った。
「わかりました。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね」
 という内容の話だった。

 面接が終わり、帰宅した。両親に今日の面接内容を伝えた。父は、
「コンビニか、もっといいところあるだろ」
 いかにも不満気な表情で言った。
「まあ、コンビニで働きながら正社員のところを見つけるつもり」
 僕は負けじと言った。
「そうか、ならいいが」
 母は、
「とりあえずってことね」
 と言うので、
「うん、そうだよ」
 そう答えた。
「9時からだから、10分前には出勤する。だから、7時くらいには起きるよ」
 父を一瞥すると、納得しているからか、表情が曇っていない。さっきの、バイトしながら正社員の仕事を探す、というのが良かったのかもしれない。
「じゃあ、綺麗にしていかないと。お風呂に入っておいで」
「うん、そうする」
 
 でも、その夜は緊張していたせいか、眠れなかった。仕事が終わったら少し寝ようかな。9時から15時までの仕事。そのあとに隆と軽く飲みに行きたいな。行けたらだけど。

                            つづく……

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