バスケットボール

死と出会い 5話 バスケ部

僕は放課後職員室に行き、バスケ部の顧問の先生に部活を再開する旨を話す。僕は麗香先輩のことを思い出す。

#死と出会い #バスケ部 #先輩 #切ない

 僕は、この高校でバスケ部に所属している。もちろん、男子と女子とに分かれていて、男子部員は九名、女子部員は八名いる。プレーヤーは五人なので足りている。後は補欠要員だ。

 僕は顧問の先生に会いに放課後、職員室に行った。職員室は一階にあり、玄関の生徒の靴入れの向かいにある。周りに生徒の姿は少なく、僕は一人でそこに入った。
「失礼します」
と、お辞儀した。僕に気付いたのは入り口付近に座っていた美術の先生だった。中は広く、たくさん先生たちの机が所せましと並んでいる。職員室は学校の事務所のようなところだと僕は認識している。少なくても一般の会社では事務所と言うだろう。
「あ。外川君、久しぶり。ここに来るなんて珍しいじゃない。どうしたの?」
「あの、宮崎先生はいますか?」
僕は真面目な顔をして言った。これだけたくさん教師がいるから緊張するのは否めない。
「ちょっと待ってね。あ、いたいた。宮崎先生!」
目の前にいる美術の先生は、職員室の奥にいる宮崎先生を呼んでくれた。
「ちょっと、待ってください」
と、奥から声が聞こえる。そちらの方を見てみると、忙しそうに書類整理をしているようだ。五分くらい経過してから彼はやって来た。近付いてきて初めて僕の存在に気付いたようで、
「おお! 外川。久しぶりだな。あれからどうだ? 気持ちは落ち着いたか?」
雄二のことを言っているのだろう。この教師はいろいろと気遣ってくれるのが嬉しい。この学校でも見本と言っても良いくらい、良い先生だと思う。
「はい、なんとか。なので明日から部活を再開しようと思ったので来ました」
「そうかそうか。えらいじゃないか。俺はてっきり辞めてしまうんじゃないかと心配していたんだ」
苦笑いを浮かべながら宮崎先生は言った。優しい人だ。
「そうなんですね。心配かけてすみません」
僕は俯いた。
「まあ、でも復帰するなら結果オーライだ。また、一緒にがんばろうじゃないか!」
「はい! よろしくお願いします!」
僕は気合いを入れ直すように強い口調で言った。再開するために気分を一新する目的で。
「あとは、何か話しておきたいことはあるか?」
僕は少し考え、
「いえ、大丈夫です。失礼します」

 僕は職員室から出たあと、女子バスケ部の先輩のことを想った。
「麗香先輩、元気にしてるかなあ」
僕は独り呟いた。明日、久しぶりに会えることを楽しみにしている。麗香先輩は、女子バスケ部のキャプテンで高校二年生。僕の憧れの先輩だ。外見は髪の毛を後ろで一本にしばっていて、背はそれほど高くない。顔立ちは綺麗というよりかわいいと僕は思っている。僕が気に入っているのは、外見ばかりじゃなく性格も優しい。練習中にけがをした仲間には一目散に駆け寄って、声掛けをし女子の顧問の先生に報告するというしっかり者。さすがキャプテンなだけあって、皆の見本になるような行動をとっている。

 そんな彼女に僕はいつからか心惹かれていた。きっと人気者の先輩だから僕のことなど気にも留めていないと思う。そう思うたび、切なくなる。



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