バスケ部

死と出会い 16話 焦れったさ

 今日の放課後は部活がある。気の合う仲間も三名いて優しい人たちばかり。嫌いな奴もいるけれど。体育館を中央で仕切っているネットの奥に女子バスケ部が活動している。その中で一際輝く存在の麗香先輩。練習している姿はカッコいいし、かわいい。僕は体の力が抜けそうになった。

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 今日の授業と掃除を終え、僕は体育館に向かった。

 今は夕方だけれどまだまだ天気が良い。部活は外でランニングかな、と予想した。バスケ部には男子だけで九名所属している。その中で気が合う仲間と思えるのは三名いる。小田正彦(おだまさひこ)、立花礼二(たちばなれいじ)、漆原敏明(うるしはらとしあき)。親友とまではいかないけれど。

 小田先輩は僕の一つ上の二年生。優しい口調で話してくれるのが助かっている。決して偉そうにせず、練習熱心な人。バスケはまあまあの腕前で僕よりは上手いと思う。身長はそれほど高くない。

 立花は同級生で残念ながら、バスケは下手。でも優しい口調で話す。気の良い奴で高身長。

 漆原も同級生。バスケは高校になってから始めたということもあり、あまり上手いとは言えない。でも、優しい物腰で話す奴。こいつも身長は高い。

 今、思えば僕の周りは優しい人たちばかりだな、と思った。

 でも、その反面嫌いな奴もいる。そいつの名前は、白田(しろた)。「バスケ下手だな、帰れば」など、平気でそういうことを言う奴だ。

 練習はいつものように、柔軟体操をしたあとランニング、軽く筋トレから始まった。そのあと、シュート練習、パスの練習などをやった。バスケ部顧問の宮崎先生は部員の動きを見ながら、時々、声を荒げている。

 十五分間休憩の時間になった。みんなゼイゼイ息をしている。

 体育館の中央はネットで仕切られていて、その奥に女子バスケ部が練習している。僕の目には、一段とキラキラ光る憧れの先輩が高い声を上げながら周りを仕切っている。髪を後ろで一本に縛ってあって、赤いTシャツに赤いジャージを履いている。木田麗香先輩だ。僕は、体の力が抜けそうになった。あー……。麗香先輩だあ。カッコいいし、かわいい。

 僕は、彼女に見とれていると、声を掛けられた。白田からだ。
「何、女子のほう見てるんだよ。好きな女でもいるのか?」
僕は、それを聞いてギョッとした。何でわかるんだ、と。
「白田に関係ないだろ」
僕は誤魔化したけど、抵抗空しく、
「誰が好きなんだよ。教えろよ」
その言い方に僕はムッとした。まるでモアイ像のような彼は、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「だから、そういうわけじゃないって言ってるだろ!」
ムカついたので、強い口調で言った。すると、
「隠してもバレバレなんだよ!」
逆ギレか、と思った。
「何でだよ?」
「そりゃ、わかるだろ。女子の方をまじまじと見てりゃ」
「仮に、そうだとしても白田には関係ないわ」
「あっそ! じゃあ、いいわ!」
こいつは放っておくに限る、と思ったのでそれ以上何も言わなかった。

 麗香先輩と喋りたい。男子バスケ部はもうすぐ休憩時間が終わろうとしている。女子は何時頃から休憩なのだろう。どちらにしても、部活が終わらないと話しかけられない。僕は焦れったさを感じながら宮崎先生の合図と共に練習を再開した。 

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