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病と恋愛事情

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あらすじ:統合失調症という心の病を患ってしまった主人公。幼馴染の麻沙美とは40代になった今も交流はある。ちなみに、麻沙美には子どもがいて、シングルマザー。コンビニの店長をしている… もっと読む
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2019年12月の記事一覧

病と恋愛事情 二十一話 彼の不調

病と恋愛事情 二十一話 彼の不調

 三年前に夫と死別したあたしは、今は伊勢川晃と付き合っている。彼は高校時代からの旧友。この年になって男女の関係になるとは思わなかった。付き合って約一ヶ月。娘の平さくらは高校一年生。難しい年ごろのはずなのにそれほど親を困らせてはいないように感じる。むしろ、晃に懐く理由がわからない。彼が書いた小説を読みたいというのは分からなくはない。ジャンルは違うけどあたしも読書をするから。

 さくらは現在、退院し

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病と恋愛事情 二十二話 密かな考え

病と恋愛事情 二十二話 密かな考え

 俺は具合悪い中、以前気にしていて夢に出て来て茶色く長い髪の女のことを思い出した。平麻沙美という彼女がいるのに今更思い出すなんて。俺の頭の中はどうなっているんだ。おかしい。

 そこで一本電話がきた。相手は副店長の福原大介からだ。どうしたのだろうと思い電話に出た。
『伊勢川店長!』
「どうしたんだ! 俺は具合いが悪いんだぞ」
『前に伊勢川店長が気にしていた夢に出てきた茶髪の女、店に来ましたよ』

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病と恋愛事情 二十三話 就職

病と恋愛事情 二十三話 就職

 とんとん拍子で就職は決まった。介護、という未知の世界。果たしてあたしは務まるかな。
不安はあるものの、しばらくぶりにする仕事には期待を寄せている。

 そういえば死別した元旦那は来月で三年目になる。三回忌に参加しないと。元夫が亡くなったのが十一月。実家の方ではいつ法要をするつもりでいるのだろう。電話して訊いてみようかな。

元夫は、あたしの車の運転ミスで亡くなったようなもの。助手席に座っていた彼

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病と恋愛事情 二十四話 未来の素人小説家

病と恋愛事情 二十四話 未来の素人小説家

 今日も俺は調子が悪い。明日は麻沙美の就職が決まったのでそのお祝いの為、食事に三人で行く予定。調子を良くしないと。折角のお祝いだから。それと共に彼女に言おうとしていることがある。それを明日言おうと思っている。

 ネットで調べたら冬季うつ、という病名らしい。冬になると日照時間が短くなることが原因と書いてある。医者に言われた訳じゃないから本当のところはわからないが。それにしても、気持ちが沈む。何もし

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病と恋愛事情 二十五話 入院

病と恋愛事情 二十五話 入院

 私の名前は平さくら。十五歳。高校一年生。お母さんは麻沙美といって、伊勢川晃さんの彼女。私は晃さんの書く小説が大好き。お母さんと晃さんの家に行く度読ませてもらっている。楽しみの一つ。

 それとは別に私には彼氏がいる。付き合って半年の同級生。背はそれほど高くないけれど、かわいい感じ。私の好みのタイプ。エッチはまだしていない。でも興味はある。彼氏は奥手だから私に手を出して来ないかも。私から誘っちゃお

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病と恋愛事情 二十六話 見舞い①

病と恋愛事情 二十六話 見舞い①

 翌日の午後二時を過ぎたのであたしは娘のさくらを連れて車で晃の入院する精神科の病院に向かった。

 病院には十分程で到着した。この町周辺では一番大きな建物で六階建て。ビジネスホテルなどもあるけれど、三階建てだし。

 建物の割には駐車場は車が十台位しか止められない。今はほぼスペースが埋まっている。駐車場をぐるんと一回りすると、一台分のスペースがあったのでバックで停めた。

 車の中は暖房が入ってい

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