読書感想文〜何様ですか?を読んで〜

 みなさんこんにちは、終末ボックスです。
 唐突ですが皆さんは「何様ですか?」という小説をご存知ですか? 2016年に発売された、第十四回『このミステリーがすごい!』の最終選考に残った作品を改題・加筆修正した物語です。終末は日頃書かせていただいている通り活字をこよなく愛する人類であると自負しているのですが、どうも時流にうとく。いえ正確に申し上げるならば逆張り気質があると言ったところでしょうか。書店に足を運ぶことはそれなりにあるのですが、○○大賞やドラマ化など時流に合わせて店頭で大きく取り上げられている小説にはどうしても食指が伸びないのです。改めて思い返してみると何ともったいないことでしょうか。そうこうしているうちに出会い逃してしまったこの本ですが、なぜ今回読んだかといいますと、実はこのnoteのフォロワーであるBくんが「休日の読書に」とおすすめしてくださったのです! 聞いたこともない作者の、しかもお借りした本には本のカバーや帯もなく、事前情報はまったくのゼロで読み進めたこの本ですが、それはそれは大変に面白かったです。そしてこの本をこのnoteを読んでくださっている皆さんにもご紹介させて頂こうと、終末は今回記事を執筆するに至ったのです。今回の記事は、もちろんネタバレは避けますがあらすじと感想を含む記事になりますので、そういったものが苦手な方はブラウザバックをお願いしますね。

 さて、「何様ですか?」は主に三人の登場人物の視点から綴られる物語です。客観的な視点を持つ女子生徒・平林美和の一人称視点、平林に想いを寄せる男子生徒・戸塚原が兄に宛てて書いた手紙、明るく社交的な女子生徒・倉持穂乃果のブログの三視点で物語は描写され、進行していきます。平林はとある過去の影響で秋までに「ファイナルプラン」なるものを決行すると決めており、戸塚原はそんな平林の内面などつゆ知らずに平林と距離を縮めようと画策していて、そんな世界を能天気に綴る倉持のブログを平林たちは一笑に付しながら日々は過ぎていき──物語は文化祭でクライマックスを迎えます。
 終末がこの作品を素晴らしいなあと思うのはひとえに若年人類描写の解像度の高さですね。平林は「ユウちゃん」というイマジナリーフレンドと度々会話をしており、思考の端々にもいわゆる『厨二』っぽさが滲み出たりしているのですが、それを補って余りあるほどの人間観察の練度の高さを誇っています。平林はとくに自他共に認める容姿端麗なキャラクターであり、ファイナルプランに付随して語られる彼女の『美意識』の切り口はとても目を惹くものがありました。平林を中心に進行する物語の中で一見蛇足にも見える戸塚原の手紙も、能天気な倉持と斜に構えた平林とはまた異なった日常の真実を伝える文章となっていて、描写そのものの解像度の高さもありつつそれを適切なキャラクターに付与して構成するという、作者の技量の高さが窺えます。そして学校の改革に始まりクラスの勢力図の遷移、悪意の嵐と化す講演、遂に始まる学園祭最終日。平林は無事にファイナルプランを遂行できるのか? ファイナルプランに巻き込まれる戸塚原の運命は? そして生徒会長の倉持は全てが終わった後に何を綴るのか──。
 というわけで結末は皆さんが読んで確かめてくださいね。


 いやあ、このままの勢いで結末まで話してしまいたいのは山々なんですけどね。やっぱりネタバレはよくないかなあ。でも、話したい。でも、みなさんにもまっさらな気持ちでこの傑作を味わってもらいたい。でも、やっぱり話したい……と散々迷って迷い倒した終末ですが、やっぱりちょっとだけ踏み込んだ話もしたいので、有料部分にネタバレ有りの感想を書かせてもらうことに決めました。本当にネタバレになっちゃうのでまだ読んでない人は全然買っていただかなくて大丈夫なのですが、もし読んだよーって人がいたら、あの結末に辿り着いた感情を終末と一緒に分かち合わせてください。
 そんなわけで、久しぶりのnoteでした。お読みいただきありがとうございました。


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