見出し画像

酒と煙草に溺れた男

10月2日は親父の誕生日でした、生きていれば72?になってたのかな?少しだけ親父の話しをしたいと思う。

結論から言えばうちの親父は「今の時代なら1万%アウト」のダメな人でした。

タバコは1日多いと3箱、酒は毎晩ウイスキーのボトルを開けるような人、小学生の俺はよくタバコと酒を買いに行かされてましたね。

酒を呑んでは家族を巻き込んで暴れ回り、時にはモデルガンのBB弾を子供達に撃ち、笑ってるような人でした。

こんな風に書くともういきなり「クソやん」ってなりますが、えぇ、クソでした(笑)


そんな親父が死んで20年が経ちました。小学2年か3年の時に両親は離婚、母が出て行き、親父と親父のお袋、俺の叔母に当たる人間との生活は思い出したくも無い。

小学6年の時に母に引き取られ、そこから親父とは数回会う程度だった。

そんな親父が亡くなる3、4ヶ月前の事、当時兄と2人で住んでて大喧嘩の末、俺の面倒見きれないと親父の元に行く事になった俺。

酒が祟って下半身が老人のようになり、人工透析を受けないと生きられない身体になっていた親父、暴れ回っていたあの頃と同一人物だったとは思えない程弱々しくなって…はいなかったね、相変わらず酒とタバコをやってました。暴れ回る程酒が呑めない身体になってもどちらもやめてなかったね。ここまで来ると立派だ、逆の意味で。

当時俺は就職が決まっていて、会社の寮に入る事になっていた。


そんな家出る数日前、親父は全く見た事もないおっさんを2人連れて家にやって来た。

まぁよくある宗教勧誘ですね、何とは言いませんが、俺にその良さを必死に説く3人。
その姿を見て少し泣いてしまった、あんなに暴れ回って「怖い親父」が何かに縋らないと生きられないのか?と。

なんて言って断ったかはあまり覚えてないが、親父には本当に怒った。知らない人間連れて来て、密閉空間で逃げ場ないようにして、実の息子に何させる気だ?ってね。


今なら少しわかる気もする。母にも見捨てられ、子供達も居なくなり、叔母は階段から落ちて植物人間になり、1人孤独だったんだろうなと。宗教を前からやってたかどうかは全く知らないし、興味もない。ただ何か心の拠り所が欲しかったんだろうなと。


ただ当時の俺はクソガキだった。そんな事まで頭回るような奴じゃ無かった。

そこから少し記憶は曖昧だが家を出るまで親父と話した記憶はあまり無い、ってより俺は親父を避けていた。

家を出た次の日、引っ越しはとりあえず荷物運んだだけ、片付ける間もなく送別会をやってくれるっつうから行く事になっていた。

しかしその時気付いてしまった、親父の家の鍵を置き忘れてしまったのだ。

仕方なく家に向かう途中、偶然なのか?親父から「携帯の時計が狂って直し方がわからないから家に来れないか?」とメールが来た。

正直会いたくなかった、なのでメールで「送別会あるから無理、あと家のポストに鍵入れてあるから」と伝えてメールを終えた。まだ向かってる最中、会ってやればよかったのに。今ならわかるけどきっと謝りたかったのだろう。それが親父とした最後のやりとりだった。

送別会の記憶はぶっちゃけほぼ無い。人生で初めて日本酒を呑み、馬鹿みたいに吐き、フラフラのままタクシーに乗って帰っただけ。

次の日の昼過ぎ、身体が鉛のように重く、何もする気が無かったがダンボールを片付けないとね、と思いちんたらやっていたら兄から連絡。

「親父が亡くなった、警察署に呼ばれたから行くぞ」と言われ頭が真っ白になった。

そこから葬式はやらず、火葬だけした。詳しく書く気にならないので割愛させてもらうが、とにかくあれから20年が経った。

あの人は正真正銘ダメな人だった。亡くなったのは自業自得、正に人生をかけて俺たちに「こうなるな」と教えてくれた人だ。

しかし親父の年齢に近付いて来た今なら、もし万が一生きていたら、きっと一緒に酒を呑み、紙巻きタバコなんてやめてこっちにしなよって加熱式タバコを勧め「吸った気がしない」って言われてたんだろうと思う。

俺はああならないと心のどこかで思っていたのに気付いたら糖尿病になっちゃうんじゃない?ってぐらい太り、タバコも吸うし、酒も呑んでる。俺が親父に1番似ていると思う。

しかし俺は親父と違い、結婚もしてなければ当たり前だけど子供もいない。親父の血を引いているのだ、結婚していたら妻を傷付け、子供には八つ当たりしてしまい、わがままで振り回してきっと上手くは行かなかったと思う。

やってみなけりゃわからないって言葉はあまり好きではない、だが「ダメで元々やるしかねぇ」が座右の銘だが、結婚だけはしなくて本当に良かったと思う。これからも1人でいる、傷付きたくないし傷付けたくない。それを教えてくれたのは両親だ。

母にも思う事がたくさんあるがそれはまた別の機会に。

こんな親父でしたが、本当は気の小さいアホな人でした。嫌いにはなれないよ、好きかって言われたら「うーん」って言うと思うけど。

俺が死んでそちらに行った時は酒とタバコ用意して待ってて下さい、あの時謝れなかった事、会わなかった事、ちゃんと互いに謝って、ゆっくり酒を呑みましょう。もう少し時間頂く予定です、お待ちくださいませ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?