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詩「点滅」

赤と青の点滅するあいだを
行き来する
あなたがわたしには
黄色く見えます

赤と青の点滅するあいだを
行き来する
あなたがわたしには
黄色く見えます

月が満ちる夜にあなたは
あんなにも曝け出されています
そんな日はわたしまで
苦しい気持ちになります

三日月の夜は
そんな細い腕で大丈夫ですかと
肉づけするように
口づけたくなります

十六夜の月が出ているなら
あなたはなんとも黄色く見えます
胸の奥底で明滅する
青と赤の灯火を抱えてなお
あなたがわたしには黄色く見えます

「いっときの幻灯だよ」
なんて言ってあげたくなるのですが
「それこそが幻灯なんだ」
ってあなたは知っているんでしょう

そしてそんなひどい言葉を
あなたの優しい口は吐かないでしょう
拙い嘘を抱きとめるあなたの肩は広く開いています
わたしは肩から背骨までを数えるように撫ぜています

赤と青の点滅するあいだを
行き来する
あなたがわたしには
黄色く見えます

赤と青の点滅するあいだを
行き来する
あなたがわたしには
黄色く見えます

月が水をあなたの
寝床まで運んでくれれば
私たちは夜に溺れることができます
夜の水の中でもなお
あなたは点滅を行き来します

明滅を繰り返す
赤と青の間を行き来する
あなたが黄色く見えます
夜に満たされた
水の中で光るように見えています

広い背中は昼には砂丘のようで
夜には蛸や烏賊のようです
ひっついてはしとついて離れず
なにかをごまかすように
黒い墨で夜に紛れようとします

あなたがわたしには
黄色く見えます
わたしはあなたに
黄色く見えますか

赤と青の点滅だけでは寂しいのです、と
侘しいのです、と言ってしまいたいのです
それでも優しいあなたの肉厚の耳に
その告白が許されるのでしょうか、と

わたしはあなたに言い淀むのです

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