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詩「冥府の獣」

これは昨日の話です
ほんとにあったお話です

麦茶のお茶漬け啜りつつ
虹のお浸し食べてたら
五色のところで来訪者
冥府の獣が庭にきた
冥府の獣が庭にきた

冥府の獣が見つめたら
お迎えかいと聞いてみる
しかし獣は涙目で
迷っちゃったと泣き声漏らす
そりゃ大変と手々つなぎ
冥府の獣と家探し

まずは手始め交番へ
おまわりさんに尋ねよう
冥府はいずこと訊いてみる
おまわりさんは僕ら見て
知らぬが仏と首を振り
しっしと手を振り正しくも
生者の仕事で「1」と書く
鬼畜の所業 ここが冥府と
見まごうほどの知らぬ存ぜぬ

眩いばかりの日光に
照らされながらともにゆく
冥府の獣がついてくる
商店街で尋ねるも
誰もが忌避して目に背く
急げ急げと性急に
やんややんやのおおわらわ
今日も街は元気でござい
僕らも元気と言うけれど
誰も聴いてはくれやしない

庭先に来た冥府の獣
手々つないでる冥府の獣
一都一道三府四十三県
一都一道三府四十三県
三府目いずこと川に問う
流れるばかりの川面には
僕らの姿が歪んでる
冥府はいずこと花に問う
首をゆらゆら うたた寝る
冥府はいずこと道に問う
行けば分かるさとも言わぬ

夕暮れになり仕方なく
お手々つないで帰路につく
影が交わり僕らは獣
冥府がないねと僕いえば
悲しい目をして俯く獣
それでもうなんにも言えず
帰宅し扉を開いたら

息なく眠る僕がいて
認めてくれと冥府の獣
僕の心に訴える
僕の心に訴える

これは昨日のお話です
これはほんとのお話です

誰か見つけるそれまでは
冥府の獣は迷ってる
だから探してくださいな

これは昨日のお話です
これはほんとのお話でした

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