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詩「はげしいゆりかご」

非在のレールに乗っかって
進みゆく幻想汽車
ゆれるふれるくずれる
羊の眠りを妨げて
ゆれるふれるくずれる
追われて崩れた詩体の
眼窩より空道であった唇より
耳道より草花よ群生し
時の番人たる熊さん日の下で鮭を喰らう我らの大罪を罰せよ
手は曼珠沙華なれ
数多の詩体がそのようであれ
(空から降るという全能感)
詩の身体の山積するを
自我を捨てもうはや
自然の野へ返れ(環にきちんと入れよ)
名もない――(言葉を忘れて)――獣へ立ち帰れ
(もうはや、私の管理権は失われたから)
獣らしい言葉で書くしかないわけだ!
静かにseeeeeeeeee
土に休め
我を捨て
自然に帰れ
管理権を放棄せよ
(文字が水浸しになってしまったのだから――)
たしかにもう半分はレールに乗っかった
幻想汽車に乗車したのだから
自然の野よ
優しく
はげしいゆりかごから白い
純白の!
無二の!
幼い

の魂が転げたら
優しく
やさしく受けとめてくれ
祈りだ 全き祈りだから
熊もいつか大罪を許して
滞在を許して
森の奥へその姿を
消失させる
(おやすみ)
(おやすみ)
ゆれるふれるくずれる
せめて幼い詩体の眠りは安らかであれ
ゆれるふれるくずれる
優しき詩体の降り積もる上で 優しく
ああ天球体
あなたが転じるならば
その大きな舌(シタ・シタ・シタタ・ル・シタ・タタル)
が世界の音楽をどうどうと
呑み込んでしまった
それは
虹の根を食べ尽した
ものの責任です
(ああ確かにそうです)
ああ そうか、
虹が倒れたので
舌が一切の言葉なく
音楽なく
慈悲なく
(クマさんの蹄が容易に肉を裂くごとく)
一切合切を呑み込んでいって
ああ しかし こんな
週末に書いた詩にも
救済は訪れるだろう
クマさんが大罪を赦し
森に帰るように
獰猛な舌もやがてその唸りをおさめるでしょう!
体に川の巡る時よ、来りませ
叫ぶ者に励ます者が来りませ
沈黙と暗示も来りませ
詩の数多身体の殻が
山々の悼む波々(山波・地層の皺も波のごと)
はげしいゆりかごから転げた白い詩体を
その柔らかい華と草花で
詩の体を包みませ
来りませ来りませ来りませ来りませ
来りますことを祈る
幻想の内に
未来の詩者は身体を
優しく揺らしませ

(幻想汽車に乗れたなら
せめて足を伸ばし心地豊かに
柔らかな詩体として終着できますように
来りませ全能感 日の下に
日の下に全能感 来りませ
管理権を奪われた弱さがゆりかごを
優しく揺らしませ)

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