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民主主義は本物だよ!:『陰謀論のオシゴト(S1-S2)』感想

Netflixオリジナルアニメシリーズ『陰謀論のオシゴト(原題:Inside Job)』がシーズン2打ち切りに戸惑うくらい超面白くてたいへん素晴らしかったので、感想を残しておきます。

コグニート社へようこそ!

大統領はロボット?あの有名人はレプテリアン?地球の中は空洞になっている?あのハリウッド俳優は実は吸血鬼で、すでに何千年も生きている…?!?!
それ、全部ほんとうです。
このアニメは、世界を牛耳るのが簡単ではなくなったこの現代で、闇の支配者たちの要請に応える企業「コグニート社」に務めるあるチーム(天才科学者、イェール大卒の頭空っぽな三十路男、地中から来たサイキックキノコ、ヤク中の化学者、イルカ軍人、メディア操作担当の陽キャ女)の「民主主義を本物にする」お仕事を描く作品です。

ザ・ギャングのみなさん。左からサイキックキノコの「マイク」、平凡な白人男の「ブレット」、コグニートCEO「JR」、天才科学者の「レーガン」、ヤク中化学者の「アンドレ」、軍人「グレン」、メディア操作担当の「ジジ」。
©Netflix

ところでみなさん陰謀論はお好きでしょうか。私は結構好きです。最近はわりと深刻な趣きを帯びて使われる「陰謀論」ですが、あのトンデモ感やイマジネーションの力になんとなく惹かれることはないでしょうか。ないか。
このアニメは、そんな数々の陰謀論が実は真実であるアメリカ合衆国で、それを国民にひた隠しにするために日々奔走する人々を描くコメディカートゥーンです。大人向けアニメなのでコメディも皮肉も社会問題も(グロもそれなりに)マシマシなのにゲラゲラ笑えるサイコーのアニメで、2クールありますがマジでイッキ見しました。超面白かった。
魅力的なキャラクターたちもさることながら、いかにして各種陰謀論が隠蔽されているかという設定の細かさや扱う陰謀論・話題の手数など、とにかく間延びのない高クオリティな脚本が本当に素敵でした。あまりにも面白かったので誰彼構わず布教してまわりたいのですが、陰謀論者だと思われてしまいそうで言い出しにくいです。まあこのアニメみて喜ぶ陰謀論者はいないと思いますが。
そして私はこの作品を日本語吹き替え版でみたのですが、声優さんたちのお芝居があまりにも素晴らしかったです。吹き替えにするにあたってスラングなどは日本風のものに意訳されていたりととにかく遊び心のある仕様になっていました。とくにブレット役のKENNさんがあまりにも最高すぎて、ブレットがお気に入りのキャラクターになったのは吹き替えのおかげが大きいと思います。KENNさん、ありがとう(月に行く回とキマっちゃう回で爆笑した)。必ず日本語版でみると約束してください。お気に入りはシーズン2第5話の「ブレットの大ブレイク」。ブレット大活躍です。

アルミ箔の帽子を被るみなさん
©Netflix

人格的困難の受容と、困難の原因との決別、そして誰かの幸せを願うこと

ここまでの感想を読んだだけだと、ふざけまくったギャグアニメなのではと思われるかもしれません。それも事実ではあるのですが、そうでない一面、すなわち登場人物たちが自身のパーソナリティの困難に折り合いをつけていく物語、という一面も持ち合わせています。
主人公のレーガンは13歳でMITを主席で卒業した超天才ですが、対人関係が壊滅的で「ミス・無慈悲な正直者」と呼ばれるような人物です。会社の同僚はおろか、彼女自身の両親ともあまりうまくいっていません(両親との軋轢はほぼ親のせいですが)。両親や同僚、そして自分の作ったAIからも人格についての火の玉ストレートを投げられまくっているレーガンは、超優秀なのですがやはり人間関係の下手さがネックになりチームワークで行き詰まることが多々あります。この物語はそんなレーガンと、突然コグニートに入社してきた胡乱な白人男・ブレットとの関係を主軸に進んでいきます。

レーガンとブレット
©Netflix

かくいうブレットのほうはいわゆる「潤滑油」特化型のような人間で、入社(正確にはレーガンの上司に拉致された)して早々チームを「ザ・ギャング」と名付けたり、チームのみんなにもそれぞれニックネームを付けたり、ベーグルを差し入れたりとその愛嬌で信頼を獲得していきます。
一見正反対で水と油のように見える2人は、実際初期はバチバチやり合いますが、すぐに打ち解けてBFF(ビジネス・フレンド・フォーエバー)になります。彼らの共通点はそれぞれパーソナリティに困難を抱えているところで、しかも根っこには両親やその他近しい人との歪んだ関係性があるという部分も共通しています。レーガンは言っちゃダメなことを平気で言うし、ブレットは自分が誰からでも愛されていないと不安で気が気じゃなくなってしまう。コメディタッチの作風でごまかしきれないほどヤバめの環境でそれぞれ育ってきた2人ですが、彼らは2クールかけて自分を苦しめるものと決着をつけます。その過程でBFFとして、親友としての絆も深まってゆき、バディものとしても楽しめる何層にも美味しいアニメになっています。

BFF。愛おしい…
©Netflix

また、シーズン2の重要なキャラクターにはのちにレーガンの恋人となるロン(イルミナティ勤務)がいます。この2人の恋愛模様の結末もまあまあしんどくて「レーガンなんでよお😭」と汚え嗚咽を漏らすことになるのですが、そこも含めてみなさんにも彼らの行く末を見届けて欲しいです。しかし最終話『アップルトン』でこのシリーズが締めくくられてしまったのはなんとも悲しいというか、あの回をぶつけられてさようならだとマジでこのアニメのことを忘れられません。ブレットの陽気なダンスで爆笑していた頃を返して欲しい。

ボヘミアン・グローブでのロンとレーガン
©Netflix

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