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今日の短歌たち

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今日の短歌としてつぶやいたものたち。
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記事一覧

八年の時間を超えてわが家は巣立った子には「慣れないところ」

木漏れ日が美しいのはただ陰が目が眩むほど暗いからかも

四十年前に絶交された訳やっと分かったもう遅いけど

長生きはしない運命(さだめ)と言い聞かせ精一杯の笑顔を猫に

不機嫌な家族に叱られ通院の人を羨ましく見る総合病院

翔平とお揃いだからと張り切るが薄っすい中身の曼荼羅チャート

何一つ前進した気はしないけど1日生きたそれで充分

歯ばかりが何度も磨かれ美しく出かける準備を先延ばすため

母として一番大事な事を今 空の巣で悟る一人茶を飲み

何十年母が大事に置いてきた黄ばんだカバーを遠くで捨てる

何もかも忘れられるという何か私のそれは何なんだろう

運動と名の付く施設を出る人の眩しさに目をそらす昼前

水底を蹴って光に飛び上がる産まれ直したような春の陽

苦しみの歌を詠ませる使者として神はこの子を私に与えた