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丘の上の洋食屋オリオン・制作裏話

 先日最新刊『花守家に、ただいま。星合わせの庭先で』(ポプラ社)が発売されました。すでにお手に取ってくださった皆様、ありがとうございます!
 こちらの作品の裏話もしたいのですが、数日前の初noteでちょろりと書いてしまったので、今回は別作品の話をしようと思います。

 2月に角川文庫から『丘の上の洋食屋オリオン』を出版しました。表紙はイラストレーターのゆうこさんに描いていただきました。本当にかわいい!
 3品の料理は、それぞれが『洋食屋オリオン』で働くスタッフを表してくださっているそうです。左上にいる看板猫のネロと合わせ、オリオンのスタッフたちが全員表紙に登場しているというのがとても素敵で嬉しいです。

 この作品で、いわゆる「ごはんもの」というジャンルに初挑戦しました。『喫茶とまり木で待ち合わせ』でも喫茶店を書きましたが、こちらは料理やお店がストーリーのメインとはならないため、がっつり料理を主役に置いて物語を書くのは今作が初めてでした。
 今の小説界隈において「ごはんもの」は一大ジャンルを築いていると言っても過言ではないと思います。大人気ジャンルで、書店さんでコーナーが作られているのも見かけます。
 しかし実のところ私は「ごはんもの」にほぼ興味がありません。美味しい料理を食べるのは大大大大大好きですが、そこの欲求を小説や漫画などの作品に求めることがなく、好んで手に取ったことがありません。もちろん自分で書きたいと思ったこともないです。
 ですので、担当さんから「ごはんもの」を、とご依頼いただいたとき、まず「無理だ~!!!!」と諦めました。「ごはんもの」に私は魅力を感じていません。そのうえ私は料理がド下手なのです。「ごはんもの」と言えばその作品ならではの個性的なメニューが出てくるものと考えていましたから、そんなもん考えられんよ(T_T)、とくじけたのです。

 しかし担当さんから色々と他作品を褒められたりなんやりして調子に乗り(担当さんのお人柄も素敵だったので)、なんやかんやであっさりとお仕事をお受けしました。
 実は一番初めに出したネタは『オリオン』とはまったく違うものでした。私が10代向けの物語を多く書いていたこともあり、担当さんと「ティーンの背中を押せるようなもの」と話し合って、「料理を通じて学校以外の居場所を見つける女の子の物語」を考えました。ですがその後、レーベルやジャンルのメインターゲット層を考慮し、私の作品のターゲットも変えることに。結果最初のネタは白紙にし、そして生まれたのが『丘の上の洋食屋オリオン』でした。

「ごはんもの」の王道として、作品のメインの舞台を何かのお店にしようと担当さんと案を出しました。その中で自然に思い浮かんだのが「洋食屋」でした。
 作家としての私は、読者さんが楽しめるような個性的な料理を書けません。ならばあえて個性をなくし、誰もが思い浮かべられるオーソドックスで懐かしい料理を書こう。読者さんにとって特別ではない、作品の中の人たちにとっても決して特別ではない、ひとりひとりの人生に自然と馴染んだ料理とお店、物語を書こうと思いました。

 書き上がったものについては、ぜひ本を読んで確認してください。私としては、自分で思っていた以上に楽しく執筆できましたし、いい物語が書けたと自画自賛しています。
 機会をいただければ他にも「ごはんもの」に挑戦してみたいです。定食屋とか、純喫茶とか。町と人に溶け込んだお店だと楽しそうです。


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