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夏果てて、再果て

耳鳴りがするほどの憂鬱を飲み込んで垂れ流す真っ赤な血で染めるキャンバスを綺麗だと思えない君を抱き締めている。それでいいよ君は。ただ何も知らずに幸せな顔して生きていて欲しい。私が10代で捨てた期待を君にだけは捨てて欲しくないから世界のちょっといいところだけ見て気持ちよくなって欲しい。大人になるということは諦めるという事だよって脳内の悪魔たちが囁くから路地裏の壁に頭打ち付けたら彼岸花が咲いていた深夜2時。おいでおいでって美しかったね。
わざと視界にエフェクトかけて君の輪郭を暈して見えないエロさでボコボコにされる快感にどっぷり浸かる。煩いくらいに鳴いている夏が果てて2日連続の夕立で流されていく。行ったり来たりする温度を私は毎日目を細めて見ていること、君はずっと知らないでいてね。ありふれた日常の中でキラリと光る瞬間を拾い集めてテープでくっつけたみたいな歪な幸福に依存しているなんて残酷だね。1畳にも満たなさに篭って流れる汗で滲んだら見失う感情。鏡に映る私に重なる少女が嘘みたいな顔で笑っている。鳴り止まない通知に期待するから傷つくんだよ馬鹿みたいって呟いて投げ捨てたら朝焼けが君のようで眩しくて、苦しくて、だからやめられないんだねってラブレターをつらつらと書き殴っては真っ黒に染める。「本当は全部分かってるくせに」って油性マジックで書いたA4サイズの紙を100円で買える一番可愛い封筒に入れて下着のタンスにしまったのは、お腹が疼くから君に可愛くして貰った翌日、昼下がり、白い幻。ぐちゃぐちゃになった時だけ甘くなるなんて知らなかったよ夏。目も合わせられない癖に短く切った爪のエロさからは目が離せない夏。流れる涙の意味と右手の人差し指を強く噛んで耐える夏。悔しい。
夏、果てても最果ての君にだけはならないで、

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