夏だねを免罪符にしても

瘡蓋を剥がして流れる血の美しさに君が眉をひそめてくれてよかった。もうやめなよって言われるまで何度も火をつける煙草にドクターストップがかかっても絶対辞めてやんないからね。水風船を膨らませていた蛇口がいたずら防止で撤去されましたの張り紙に時の流れを感じて絶望している青春の公園。立ち入り禁止の黄色いテープが張り巡らされている小学校の遊具。真夜中に家を抜け出して隣にいるのにガラケーでメール送り合う。Re:が増える度に口角が緩んでいくみたいな甘酸っぱい夜に溶ける少年少女はネオン街の濁流に喰われてしまったね。令和なんて全然美しくない。平成に取り残された私は時代を全力逆走している。ずっと子どもでいたい。豹柄のトップス、レザーのミニスカ、ルーズソックスにうるさいくらいのストラップ。なんならまだキラキラとかフリフリとかにときめいちゃうもん私。新札ゲット〜のストーリーを見る度に腹の底にある真っ黒いどろどろを吐き出してはまた飲み込む人生に手を合わせて成仏してくれって願うだけ。新札よりもシャカシャカシールとかタイルシールとかの最高可愛いだけを集めたシール帳をめくって君の体温で♡の色変えちゃいたい。私のものになってよ、なんて言わないから深夜の学校のプールに飛び込んで白のブラウスから透けて見える下着で君のことドキドキさせたいだけ。お揃いの傷を眺めては手を繋いで、鼓動をシンクロさせて痛みを打ち消し合う関係でいようねって手を伸ばした先がただの白い天井であってもギリ幸せでいられるよね。夏だねを免罪符にしても。