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作り手がサポーターを選ぶ時代に舞台裏のサポーターが願うこと

まとめるまとめるといいつつ年を越しておりました。ようやっと投稿です。
昨年11月、大阪は堺市にて開催されました『灯しびとの集い』にて、空想遊牧民 仔山羊〈クーソーユーボクミンコヤギ〉さまのブース裏方を務めた話をご紹介します。
実績紹介としての投稿でもあるのですが、そこに至るまでのプロセスも個人的にかなり濃密だったので併せて載せてみます。⁡興味のない部分はすっ飛ばして気になるカテゴリだけ読んでいただくのもマルです。

お手製の衣装、お手製の布。空想遊牧民 仔山羊のディスプレイはあっという間に出来上がっていった。

はじめましての方へ

こんにちは、こんばんは。エンノシタ代表のワタナベと申します。

エンノシタは、アクセサリー・コスチュームジュエリーの作り手さまを舞台裏でサポートするアクセサリー作家後方支援サービスです。
どのブランド、どのチームにも属さない形で活動しており、ご依頼に応じて出張対応も行います。

作り手を牽引する販売員さんや売り場(前)、寄り添って指導するコンサルタントの方(横)など、アクセサリーの作り手さまに向けたサポートの形は、エンノシタのサポート以外にも多く存在しますが、エンノシタは、作り手さまその時々の活動ニーズに合わせてサポーターを選び、使い分けてほしいという考えのもと、作り手さまの後ろから舞台裏で支える後方支援サービスサポートをお届けしています。

屋外対面販売の舞台裏から見えたもの

実に三年ぶりに開催された『灯しびとの集い』。
空想遊牧民 仔山羊〈クーソーユーボクミンコヤギ〉ブース裏方を務める機会をいただきました。

ちいさなちいさな仔山羊のピアス。かわいい。

金工作家の堺さんは、真鍮やシルバーを使った指輪や耳飾り、バングルなどの装飾品以外にも、トレーやモビールといった生活に寄り添うアイテムなども幅広く制作なさっています。
手仕事ならではの歪さがぬくもりや愛くるしさ、格好良さに昇華されるのが魅力的。昨年三月より、ブランド名義がコヤギから空想遊牧民 仔山羊クーソーユーボクミン コヤギに新しくなりました。

金工作家として活動する傍ら、堺さんはモノコトの店主さんもなさっています。どこか懐かしさのあるあたたかさと雑多で多国籍なにぎやかさが共存する大須商店街の入り口、大須観音が目と鼻の先の場所にあります。
色々なモノやコトをあつかいながらヒトが繋がってゆくお店。
名古屋にお越しの際は、是非お立ち寄りになってみてください。


さて、出展裏方サポートの最終的なゴールは、作り手さまが思う存分接客できるようにし、イベントで得たきっかけを作り手さまご自身の手でチャンスに昇華する道筋を整えることです。

堺さんの譲れない領分は、お客さまへ作品を紹介することと、お客さまに作品をご提案すること。綿密な準備というよりは、当日その時々の不足を補うことに重きを置きたいというざっくりしたご要望でした。
ニーズをできるだけ短い時間と少ない体力で汲み取るのが、エンノシタの腕の見せ所。そもそもの話、作り手さまご自身で”ざっくり”の中身がはっきりわかるなら、どの作り手さまも難儀していません。

エンノシタが舞台裏の裏方として行ったのは以下の通り。
YESかNOの二択でどのサポートが要るか要らないのかをふるいに掛け、ブース位置確認のほか、予報されていた悪天候に備えてお掃除アイテムを用意したり、タイムロスや機会損失を防ぐためのメモ用紙を作成したり、入り用になるかもしれないと思われる備品を事務所から持参するなど、細々としたことも含めて幅広くサポートに回りました。

ブース番号決定後の書き込み。
参加者のジャンルを大まかに振り分けた。

準備期間が比較的短かったこともあり、確実に押さえるべき項目のほかは、当日要らないと言われるのを覚悟で勝手に持参しています。(非常に重宝したアイテムもあれば、作り手さまのやり方と相性が合わず、途中で使わない方向に切り替えたものもありました)

実際のブース位置。終始穏やかで細やかな気配りをしてくださった運営の皆さまには頭の下がる思い。安心して自分たちのことだけに集中できたのは間違いなく運営の方々のサポートのおかげ。
初日、ようやく一息つけたタイミングで。

衣装、ディスプレイ、作品、立ち居振る舞い。
文字にしたらただそれだけのように思えてしまうけれど、空想遊牧民 仔山羊のブースには、会話のフックが至る所に散りばめられていて、それらをお客さまの方から拾い上げられるようになっていました。

老若男女、さまざまな方が空想遊牧民 仔山羊のブースまでお越しくださり、舞台裏から見ても、ぎらぎらとしていない、背伸びすることなく自然体でいられる空間だったように思います。あたたかなコミュニケーション通り一辺倒でない会話がそこにはありました。お客さまとのゆるやかな会話のキャッチボールが耳にも心地よかったです。日差しさんさんの晴天と終日の雨天、両極端な天候に目が回る思いもしましたが、空想遊牧民 仔山羊の空間や作品が年齢性別問わずたくさんの方々を笑顔にしている様子は、自分ごとのように嬉しかったです。

これは、堺さんがコヤギ、そして空想遊牧民 仔山羊としてこれまでの活動で培い、積み重ねてきたもの。サポーターが介入して短期間にどうこうできるものではない類の世界観でした。
制作者にしか伝えられない熱量や温度がお客さまに届くとき、ブースに爆発的な盛り上がりが起きる。それがすぐそこで見えるのです。これは本当に鳥肌モノ。

お客さまのうれしそうな表情を最大限引き出せるのは、作り手さまご本人なのだとしみじみ感じました。やはり作品は、作り手さまご本人から話を聴き、購入するのがいちばんおもしろみがあるのでしょう。SNSでよくお目にかかる方やお店の方がお越しになっていたのも、思い返すと興奮を誘う光景だったなと思います。


舞台裏から見て、『なるほど』と感じたことがありました。
それは、作り手さまご本人が『私が制作者です』と胸を張って伝えることが、お客さまに対してもお店やバイヤーの方に対しても親切になるということ。

安心して良いものを買いたい。
いちばん安心できて、いちばん信頼できる提案がほしい。
委託や催事へのスカウトがしたい。
連絡先を渡す前に制作者の人となりを知りたい。
お越しになる方々が期待するこれらの事柄を、作り手さまだけが十二分に満たせるのです。

サポーターは、本当の意味で作り手さまの代わりには決してなりえません。
お客さまから期待や信頼を得るためにいくつかのステップを踏む必要があります。ですから、接客の場に作り手さま御本人がいらっしゃるというのは本当に大きいこと。

作り手さまにしかできないことが確かにあることを理解した上で、作り手さまの代わりではなく、作り手さまを補い引き立たせる。これが、サポーターの果たすべき役割。
二日間の光景は、今でも強烈に焼きついています。舞台裏、あの場所にいたからこそ見えてくるものだったように思えてなりません。

裏方に移した時間や体力の分を、堺さんは新たな機会やきっかけ作りに活かす形で信頼を預けてくださいました。会期当日から会期後すぐ、お名刺をいただいたりお声掛けいただいた先とのやりとりができたことで、展示会や先々のスケジュールを決めることもできたとのことで、とてもとてもうれしかったです。

堺さんと一緒に店頭に立っていたのは ザ・ツリーポット のなおちゃん。愉快でびっくり箱みたいな音楽が聴けます。
しっかり雨が降った2日目。ナベちゃんがいてくれて本当によかった〜が沁みる舞台裏。

サポートサービスがお役御免になる時代

世界的なパンデミックに揉まれ、否が応でも突発的な出来事と付き合って日々を過ごさなければいけなくなりました。オンラインとオフライン、ハイブリッドを駆使しての活動と、めまぐるしい変化を強要されたことで、作り手さまは大抵のことを自力でまかなえるようになっています。

サポートはあったほうが無いよりも良いに決まってるけれど、なんらかのサポートを利用して対価を支払うよりも、自力で、ないしは気の合う作り手さま同士でチームを組んで販売したほうが良い。だってよほど割が良いんだから。
そんなふうにおっしゃる方がいらっしゃるのも、仕方ないことなのだろうと思います。チームを作ることで、サポーターを活動に組み込んだり、役割をみんなで分担できてしまうんです。勝手知ったる間柄なら尚のこと楽でしょう。

現実問題、エンノシタへのお問い合わせやご依頼がここ二年ぐんと少なくなりました。作り手さまが力強く進まれることはもちろん嬉しいことですが、これは、サポーターに対価を支払っても満足できるサポートを受けられていないという現実も浮き彫りにしています。作り手さまのますますのたくましさはここに起因するもの。たくましく”ならざるを得ない”が正解といったところでしょうか。これは、決して健全な在り方とは言えません。
気付くと気付かないに関わらず、サポーターは作り手さま方から三行半を突き付けられています。

今や、作り手がサポーターを選別する時代。対価を支払ってでもサポーターの力を借りたいと思っていただけるよう、お届けできるサポートと作り手さまの今のニーズとをしっかりかみ合わせる必要があります。
もちろん、エンノシタも。

よりたくましくなる作り手さまが求めるものを再検討する

接客はできるだけ自分ですると決めている方。
制作以外は頼めるだけ頼むスタンスの方。
ぜんぶ自分が行うほうが気楽だと思われる方。

作り手さまは、作り手さまそれぞれの”領分”をお持ちです。ここまでは自分。ここからは自分でなくても良い。この線引きが、作り手さま個々人で全く違います。だからこそ、サポート運営の型を用意するのはとても難しいのです。ある程度のテンプレートを整え設ける以上、サポーターはどうしても全体で見て数の多いニーズに運営を寄せざるを得なくなります。
作り手さまの領分とサポーターのやり方とがぶつかり合い、双方譲れない状態が続いた結果、作り手さま方を取り巻く今の環境があるのでしょう。
自身の領分を侵されることなく、柔軟で臨機応変なサポートを得たい。
今日こんにち、たくましくなられた作り手さま方が求めるサポートの質は、非常にレベルの高いものとなっています。

空間デザイン会社の展示会セミナーに参加してみた話

(この記事では、エンノシタの独断と偏見でSUPER PENGUIN株式会社さんをサポーターとしてカテゴライズしています)

SUPER PENGUIN株式会社 は、展示会ブースを専門にした東京の空間デザイン会社。

図書館に行ったりネットの海を泳いでみたりと調べものに力を注いてエンノシタが辿り着いたのが、代表取締役 竹村さんのTwitterアカウント。ツイートやnoteの投稿から、自社のコンテンツをロングスパンで見据えていらっしゃる姿勢や、別の畑にも応用の可能性を見い出す姿勢に衝撃が走りました。

作り手さまからの作品や近況について伺う機会はあっても、エンノシタがサポーターの方から学びを得られる場は、正直滅多にありません。
ですから、スーパーペンギンさんについて知ったことは、2022年のエンノシタにとって非常に大きな出来事でした。

昨年6月のオンラインセミナーでは、あらかじめ用意された動画と資料から、展示会とはなんぞやというところから普段自分が感じていたモヤッとする部分まで、展示会デザインのいろはを丁寧かつロジカルに紐解いていただきました。
それぞれのお客さまの主体性を尊重しつつ、真摯に向き合い自社のコンテンツを確実に発揮させ成果を上げる姿は大変格好良かったです。熱量と持論で大事な部分をうやむやにしてしまわないのも素敵だなと感じた部分のひとつ。展示会だけでなくさまざまな分野で応用できる考え方もお分かちいただきました。スーパーペンギンさんの在り方や提供するコンテンツに、アクセサリーの作り手さまに還元できる姿勢(内容やコンテンツの横流しではなく)や学べる点がもっともっとあるに違いないと感じたのを覚えています。

こんなダンジョンのゲーム、どこかにありそう。
ODPでお出迎えしてくれた ぺん太。

10月、ODP(大阪デザイン振興プラザ)の一角で開催された展示会セミナーは、来場者の流れ、機会損失の減らし方、ブースの位置を最大限活用することなど、これまでスーパーペンギンさんが携わってこられた実際のケースを参照し、ディスカッションを挟みつつ解説を受ける時間となりました。スーパーペンギンさんのコンテンツのため、セミナー詳細は割愛。
参加者の中には、企業の方や展示会デザイナーの方など、自分ではなかなかお目に掛かることもないであろう方もいらして大変刺激的でした。
セミナーで知り合った方が「灯しびとの集い」当日にブースまでお越しくださり、後日展示会デザイナーから見た良し悪しを共有してくださったのは、展示会セミナーをご縁とした印象的な出来事。

お分かちいただいた視点を取り入れたことで、「灯しびとの集い」での裏方サポートでは、エンノシタと作り手さま双方の持つ能力や知識に相乗効果を生む結果となりました。反省点や改善点もありますが、会期初日にしてイベント出展における過去最高額を売り上げたのは、お分かちいただいた知識が有用であるひとつの証拠だと考えています。

子供心くすぐる建築デザインのODP。個人的にもまた行きたい場所。

近々、SUPER PENGUIN株式会社さんから「ビジネス空間デザイン」に関する本が出版予定とのアナウンスが出ており、個人的にも大変楽しみです。
興味関心のある方は、是非お調べになってみてはいかがでしょうか。(2023/11/20 購入リンク追記)

エンノシタが考えるサポーターの在り方

それぞれの作り手さまの良さや強みを汲み上げ、フォーカスし、それらを思う存分発揮できる環境を整える。
これが、エンノシタが考えるサポーターの在り方です。

某所にポリゴンな虎を見れる場所がありました。さすが大阪(?)

牽引するか、隣で寄り添うか、追い風後ろとなるか。
記事の冒頭でも述べたとおり、どの立ち位置からどのようなコンテンツをお届けするかはサポーターによって多種多様です。
作家活動は作り手さまの人生そのものですから、作り手さまのニーズや動き方にも変化があるのは当然のこと。エンノシタは、作り手さま方がその時々の必要に応じサポーターを選び、使いこなされることを願います。そうすることは決してサポーターへの不義理ではないと、エンノシタは考えています。

いついかなる時でも主役は作り手さまご本人。そうであるのなら、そして、あくまでも縁の下から支えたいのなら、エンノシタがすべきは、作り手さまそれぞれの領分を侵すことなくサポートサービスをお届けすること。

組織化されたサポートでは受け止めきれない細分化されたニーズや、チームには到底受け入れられないだろう非効率も、個ならば、如何様にも補い調整することが可能。エンノシタだからこそできる動きがあります。


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エンノシタのロゴには活動姿勢が集約されている。

エンノシタでは、ブランドの輝きにフィルターを掛けてしまう作り手さまの代わりに考えたり決定する手取り足取りのサポートを一切行っていません。
アクセサリー作家後方支援サービス エンノシタ のサポートは、作り手さまご本人の主体性を大前提にしています。

お立場問わず、是非お気軽にご連絡ください。DMでもメールでも、お好きな方法でご連絡いただければと思います。(個人情報などの重たい情報を含むやり取りには一律メールをご案内しておりますので、あらかじめご承知おきください)

いつもお世話になっておりますな方、はじめましての方、ちょっとぶりですねの方、たくさんの方々とご一緒できるよう引き続き頑張ってまいります。

2023年、本年もアクセサリー作家後方支援サービス エンノシタを、何卒よろしくお願い申し上げます。
この記事をご覧になっているあなたの縁の下の力持ちとしてお力添えできる日を、心からお待ちしています。

エンノシタ ワタナベアヤカ


活動実績
出展補助/ブース裏方

空想遊牧民 仔山羊クーソーユーボクミンコヤギさま(愛知県)
@ku_so_yu_bokumin_koyagi
@osu_monokoto

灯しびとの集い @tomoshibitoorg
2022年11月12日(土)・2022年11月13日(日)

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