WBCと破壊的イノベーションからロケットな話と国際政治な話へと

WBC優勝のニュースを見ながら
ウィキペディアでワールド・ベースボール・クラシックの項目を読んでいたら以下の記述がありました。

当初、日本(NPB)はMLB側の一方的な開催通告やMLB中心の利益配分に反発し、参加を保留。日本プロ野球選手会も開催時期の問題から参加に反対し、2005年7月22日の選手会総会で不参加を決議した。しかし、MLB機構は参加を保留するNPBに対し、改めて参加を要求し、もし日本の不参加によりWBCが失敗に終わった場合、日本に経済的補償を要求することを通達。更に、WBCへの不参加は「日本の国際的な孤立を招くだろう」と警告した。これを受けて、日本プロ野球選手会は不参加の方針を撤回。(以下略)

これを読んであらためて「アメリカすげー」と思いました。
ここまで脅すんだ。言いがかりでしょう。これ。
そしてこれはベースボールに限らないわけです。

なるほど最近

日本の政府は、援助政策がアメリカの海外市場を奪う可能性があり、アメリカの怒りを買うことを恐れている。

という話を取り上げたけど、こういった話は昔からなんですね。
お前の援助政策でアメリカが影響を受けたら日本に経済的補償を要求するよ、と。そんなことしたら、日本の国際的な孤立を招くことになるよ、と。

関連して
晝馬輝夫ひるま てるお氏の本に書かれていたことを思い出しもしました。

 議論を例にとっても西欧的な発想というのは、テーゼかアンチテーゼのぶつかりあいということで成り立っています。日本政府とアメリカ政府の交渉事を見ると、アメリカは、最初はともかく「日本はけしからん」と無謀な主張をしてきます。
 すると日本政府は大慌てで、「向こうはカンカンに怒っているから、すこしは譲歩するか」と、手土産を持って行く。アメリカ側にすれば当然、「ほら見ろ、日本人というのは言えば引っ込むじゃないか」となる。
 アメリカ人同士でこれをやれば、おたがいに「てやんでえ、バカやろう」とひどいことを言い合い最終的には、よりひどいことを言ったほうが勝ちとなるのが普通です。しかし、日本人というのはそういう性質ではありません。

仲良くなれても喧嘩ができない日本人。


こういう話を読んでいると、近年言われている
「日本から破壊的イノベーションが出ない」
というのが、問題のひとつに過ぎないことが分かります。

ロケットで言えば、一段目のロケットですね。

これですら苦労して飛べない日本ですが、
これに成功してたとえ飛べたとしても、
二段目のロケット。海外との交渉で点火に失敗して打ち上げは失敗に終わるわけです。

AIイラストにおいては、元データで日本のイラストが大量にタダで使われていて、「デジタル植民地」と言われている、という話があるそうです。

日本はロケットの点火をつなげることが下手ですし
海外との交渉もできていないですし
日本政府もお金を使うことでしか世界と対話できていないですしね。

たしか岡本吏郎さんの本の中で、「子供とUNO(違ったかも、とにかくカードゲーム)をした」「ルールをよく知ってないのでときどきヘマをする」「子供に笑われながらゲームをするのだが、ルールを理解できてないので勝てるわけがない」「あなたは、世の中の“ルール”を理解できていますか?」というのがあって(記憶で書いてます)。

世界においてのルール作りに日本は参加できておらず。
日本に不利なルールを作られて。
またルールすらない混沌であるのが世界の政治であって。
そんな世界で日本人は苦労しているわけです。過去も今も未来も。

ルール作りに関してはこんな話も

逆に標準化に関わらなかったらどうなるのか。データに関する仕様はソフトの仕様と同じように「実装主義」で開発される。標準仕様が決まった頃には、標準化団体に加わっていた企業は既に仕様ドラフトに基づいて製品やサービスを市場に投入している。実装のノウハウは標準仕様には書かれていないので、仕様が固まった後に先行者に追いつこうとしても周回遅れで勝負にならない。
(略)
国際標準化の団体に関わる関係者は「国際標準化に戦略的に人材や資金を投じる日本企業が少ない」と口をそろえる。海外企業が積極的に国際標準の仕様策定を仕掛けているのに、日本からの参加者は年々減っているという。

https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00103/012300005/

2023/03/28追記ここから
始めに紹介したWBCとルールに絡んで言えばこんな話も、
侍・栗山監督 WBC、大会中突然のルール変更に疑問 「いくらメジャー主体でも、それは違う」

栗山監督は会見で「ルールを最初から決めておかないと。進みながら変わることがすごいいっぱいあった。(略)」

選手起用などにも大きく影響するとし強調。

2023/03/28追記ここまで


そのような中で「破壊的イノベーション」に拘った言説が出る日本は、まだロケットの一段目すらクリアできてない状況で。
それで、たとえ一段目のロケットに点火できたとしても、世界に出たときに点火させる二段目ロケットは、これはもう絶望的で。

なんなら一段目のロケットの段階で、
「アメリカの海外市場を奪う可能性」が出てくると、日本の政府が「アメリカの怒りを買うことを恐れ」外国に行く前に国内でブレーキがかかる可能性だってあって。
現実の農業では国内の援助政策の段階で腰が引けています。

それで世界における日本の政治家の立場ですが、
日本の政治家は、交渉能力やその他もないけども、お金だけは気前の良い国民が出して(?)くれるので、なんとか体面を保てていて、そこはまあなんとかクリアできていて飛べているのかな、なんて思いました。
こちらがお金を出すぶんには、文句を言われませんしね。

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