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そのERP統合・・・破綻します!

DX専門コンサルタントの前田です。

本日はERP統合の話です。
ここのところ、このERP統合よく聞きますね。経営側が意思決定するためにデータを統合したい・・・というニーズに合わせての話なのですが、本日はこれは下手すれば破綻する!という若干ショッキングなお話をします。

よくある例を挙げます。

会計パッケージ、受発注システム、人事システム。。。これらをどんどんつないでいけば、予実績管理や経営に必要な情報も取り出せ、より便利になる。これこそがDX!

なんて、ベンダが言いがちなフレーズですが、これ実は危ういのです。

「あ、あそこに実績データがあるじゃないか。じゃ、これを使おう!」この発想自体が危ないという事です。

たぶん、ここまでの話でピンときた方は後は読まなくても大丈夫でしょう。でも、たいていの方々は「?」となっているはず。なので、一つずつ紐解いていきましょう。

会計データは決算を作成するためのモノであり、1円たりともずれてはならない。

これ、当たり前じゃないか?と言う方がいると思います。
では考えてみてください。この正確性を維持するために経理はどのような作業を行っているのでしょうか?
例えば月末の売上データは月末に出るのでしょうか?

答えは「否」ですね。

つまり、正確性を必要とするので様々な付け合わせ処理を行うわけです。たいてい月初数営業日かかりますね。(これだと早い方かと)
要はデータ管理の目的が「正確であること」であるためです。

一方、経営の意思決定に必要なデータ精度はどれくらいなものでしょうか?1円、2円の相違が経営の意思決定に影響するでしょうか?
こちらも答えは「否」ですね。
つまり、経営に必要なデータの性質と会計に必要なデータの性質はたとえ名称が「売上」と同じでも全く異なるという事になるわけです。

仕分け項目の単位が異なる?

さて、お次が仕分けの話。よくあるのが、
「案件ごとの収益を明確に出したいので、より細かく確認したい。」と言うもの。この場合、単純に考えれば「補助科目」をどんどん細かくすればできます。(と言うか、そのように思われている。)

果たしてそうでしょうか?

現場は回る?
入力する側の手間が増えることがまず懸念されます。これは誰でも気が付くと思いますが、問題は次です。

この補助科目は見方が変われば内容も変わる可能性が高い。

つまり、分析粒度や項目内容が変わるという意味です。これ、「会計」の考え方ではありえない話。ですが、経営側の意思決定という観点であれば「見方を変えたい」ので十分に有りうる。話なわけです。

ここでもデータの性質の相違が顕著に現れます。

会計データはプロセスを記録するので、赤黒処理などの修正を行う。

さて、分析を考えてみます。ある経費の推移の分析をしたい。その振れ幅などから経費の安定性などを分析したいというケースがあったとします。
一見、会計データから出たものをそのまま分析して問題なさそうに感じますが、果たしてそうでしょうか?

例えば、ある経費が発生しますが、発生時には、仕分け科目が確定していないケースがあったりします。
これは実際に合ったケースですが、あるプラントを建築して保守を行う場合ですが、その保守で発生した経費が後で調べたら設計の問題であったというものです。その場合、設計側の経費として付け替えがされます。この会計処理は、一度は保守で計上されてしまうので、あとから赤黒(付け替え)をするのですね。ですが、単に数字だけを追うと、ある日相当額の経費が計上され、後にそれが減ってしまう。合計値だけ見ていると、わからない・・・という現象が起きるはずです。

早い話、「会計データ」はこのような分析には使えないという事です。単純に接続したら、様々な事故が起きるというのが上記のケースでわかると思います。

では、なぜそれがまかり通っているのか?

データガバナンスの欠如

これは、「データに対する知見」「データ統制=データガバナンス」がないために起きるわけです。

これでもピンとこない方多いと思います。
なので、簡単な例。

A:「お茶でもどうですか?(抹茶を煎じて差し上げます)」
B:「あ、お茶、イイですね~(喫茶店に行くつもり。実際はコーヒーだけど。)」

なぜ、こういう食い違いが起きるのか?これは「言葉の定義」があいまいだからなのですね。同じ「お茶」なのに、お互い全く違う意味でとっています。これと同じことがデータにも起きているという事です。

同じような名称のデータでもそのデータの目的、精度が異なる。

会計での「売上」:正確性が大事。1円、2円が大事。一度計上したものは基本修正しない。時間はベストエフォート
経営での「売上」:即時性が大事。正確性は1円、2円までは問わない。(意思決定上問題のある)間違ったデータは修正する。

また、「売上」にはこういう観点もあります。
営業の見たい売り上げは「発注書をもらった時点」あるいは「請書を出した」時点、でも、経理側の売り上げは「検収書をもらった時点」かもしれません。同じ「売上」でも基準が異なることもあるわけです。

時間の流れを考えればすぐわかると思いますが、営業系の方が会計系より先にデータが発生します。見込み顧客のコード、商品コード、見積もり・・・すべて会計より先です。要は、すべて確定したものが会計系に入っているだけなんですね。

これをごっちゃに考えているとERP統合など大きな問題を引き起こします。

解決策

ではどうすれば良いのか?

簡単です。
データの定義と利用目的を明確にすれば良いのです。単にデータ名称だけで判断してはならないということ。データが何の目的のためにどう生成され、どう保管され、どう利用されるのか???この「データガバナンス」が重要となります。
そして「データ・ガバナー」を育てていく必要があります。

その具体的方法に関してご興味があれば、弊社までお問い合わせください!





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