真夏の移動コーヒーショップの軒下で。
__茹だる暑さに車のエアコンが唸る。
男店主が営む移動コーヒーショップカーが今日もモールの片隅に開店している。そこへ丁度お客が来たのを私は車窓からなんとなく眺めていた。
一組の老夫婦はアイスコーヒーを2つ頼み、店の脇に店主が設置した木の長椅子にちょこんと座った。ちょうど店の軒が日陰になる場所だ。
老夫は受け取ったそれを額にあてたあと、少しすすっては空を見上げ損ね、目潰しを食らったような顔で暑そうに首に下げたタオルで顔を拭く。老婆はその隣で受け取ったカップを両手に持ってみたり、頬にぴとっとくっつけてみたりしてアイスコーヒーのひんやりした感覚とその滴を楽しんでいる様だった。
それにしたってこの夫婦、二人の距離はぴったりと寄り添いあっている。
まるで二人で一人と言わんばかりに。
暑い熱い昼下がり。
矛盾が愛おしいその姿は、私の心までも熱く焦がした。
その一枚の絵の様な光景を、太陽の日差し越しに私の脳裏に焼き付けたのである。
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