見出し画像

(『ON:E』を見て)ジン君と「Moon」とキムソクジンと②

ほかのブログサイトに書いては残していたジン君のソロ曲「Moon」の記事が、BTSオンラインコンサート『ON:E』開催以降、これまで見たことがないほどの閲覧数をたたき出していた。

美しい惑星の上で、白い衣装で、時に淡いピンクのブラウスに身を包みながら、その高音を響かせていては、地球にキスをしようとする。また翌日にはその地球を抱きしめようとするそんな彼が歌う「Moon」という曲の、答え合わせをしにきてくれたのかもしれない。


私は昨年末にBTSにすっ転んでから、メンバーは最年長・ジン君のファンになった。殊にこの「Moon」のブログを書いた時期は、それはそれは彼に夢中で、明るい言動に憧れていては、どこかで恋をしていて、だからこそ彼の裏側をなんとかつかみたくて仕方ない時期だった。パブリックとプライベートが、少しだけはみだしてしまうかのようにごちゃまぜにはなっているジン君のことが、私には理解できずわからなくて不思議で、仕方なかった。だから自分で答え合わせをするかのように、ブログに文字にしていった。


記事の日付をみると、2020年2月のこと。この「Moon」のブログを書いてから、もう8か月も経っていた。

実は、私は呆れるほど飽き性だ。だからこれを書いているころ、BTSのファンでいることは半年も持たないんだろうな、などとどこか客観視していた。なんならツアーチケットを購入した5月の北米ツアーまで、自分のテンションが持つのかすら疑問だった。

自分の的外れさに、笑えてしまう。今日も私は、ブログを書いている。毎日「好き」を離してくれないくらいに、それくらいBTSというグループは素敵だった。


『ON:E』でようやく「Moon」を歌う彼を、目にすることができた。いまジン君についてこっそり、自分なりの答え合わせを、更新したい。

『本当に大切なものは目には見えない』それを教えてくれる、惑星に佇むハンサムな王子様について。



BTSは、パフォーマンスで魅せることの多い日本の「アイドルグループ」とはまた違って、彼ら自身が曲作りに参加している。初めてそれを知ったとき、ボーカルやダンスレッスン、ステージパフォーマンスだけでも大変だろうに、彼らの日々がとんでもない仕事量に追われていることに驚いた。

これまで主な楽曲作りの中心メンバーだったのは、リーダーのナムさんを筆頭に次男のユンギ、三男のホビだったらしい。今ではマンネラインが突き上げるように意欲的に勉強しては、楽曲をつくりあげている。


さて。それは、『In the SOOP』最終話でのこと。

「森」から都心に戻った彼らBTSは、たぶん事務所内に設置されているのであろう、小さな録音ブースに集まっていた。

RECブースでは、その『In the SOOP』番組主題歌を作るのに、ユンギがプロデューサーとして録音作業を仕切っていた。楽曲はこの番組内でメンバーが偶然の楽しいなりゆきで、ともにつくりあげてきてはユンギがまとめあげたものでもあり、それぞれのアイデアの塊みたいでもあっては、REC歌入れ直前まで歌詞に意見を出し合って、どんどん更新されていった。

そうしたこともあってか、主なBTSのクリエイティブ勢・ナム、ユンギ、ホビは歌入れの際何度もその歌詞を間違えていた。それはなんだか、「クリエイターらしいな」と思った。

反対にアイデアを頑なに出さなかったジン君は、メンバーが歌詞を変更していくなかで、スマホに歌詞をひとり打ち込んでは、絶対に本番で間違えなかった。

ジン君は、いつもは歌入れ前に念入りに前もって「準備」する人なんだろう。この曲においてはそれがある意味、許されなかった。ひたすら物作りに加担して楽しめばいいであろうに、それが出来ないらしい。

少し強張りながら「僕はメンバーの前で歌うとき一番緊張する」と話す彼にホビは、「それじゃステージで毎回緊張するんですか」と声をかけると「それとは違うよ」と答えていた。

彼は、どれだけこの秀でたメンバーを前に、コンプレックスを抱えてきたんだろう。


おおらかで、いつも弟たちにいじられては声をあらげる。ワールドワイドハンサムを名乗るそんな面白いジン君の姿は、Youtubeを開けばたくさん見られる。

でも、きっと彼は元々はプライドが高い人だ。

ドキュメンタリー映画でテテと言い争う姿が、印象的だった。ヒョンだってプライドがあるんだ……と語るジンを前に、テテはボロボロ泣いてしまっては、見てられなくて私はいつも画面を閉じてしまう。それは、どちらも正しくて。


『In the SOOP』最終話きっと最後の森での夜に、ユンギはジンに素直に気持ちを吐露していた。ユンギから飛び出した「アーティストにならなかったら」という仮定の話から「ヒョンは俳優として成功していましたよ」と返す彼に、ジン君はこう話していた。

「俺はみんなと出会って人生が変わった」「ただ成り行き任せに生きてきたのに」


「最近、俺が一番そうなりたいと思う人の一人がヒョンですよ」と最後にユンギは素晴らしい言葉を伝えていたけれど、ただ先に記したREC現場の映像を見ていると、音楽を作る側のユンギの姿はとてもかっこいい。

かたやジンくんは、機材をいじっては楽しそうに楽曲をつくるユンギの後ろで、スマホを手にしていた。


ジン君は「曲作り」や企画の話題になると、無言になるし、メンバーから声を掛けられてもごまかしていることが多い。きっと自信がないのだと思う。クリエイティブ業の端くれとして私がひとつ思うのは、つくれる人とつくれない人、ゼロからイチを表現できる人できない人には、あまりに深くて残酷な溝がある。

ジン君はそれをどこかで、自覚してしまったのかもしれない。


韓国の小さな芸能事務所に集まったメンバーは、素晴らしい人材が揃っていた。クリエイティブな才あるナム、ユンギ、ホビ、抜群のダンスと表現力を持つジミン、ビジュアルも歌唱力も最高なテヒョンや、一番若くて伸びしろと自信もある可愛らしい、グク。

そのなかで曲作りもダンスの経験もなく、「イケメン担当」として組み込まれた、最年長のジン君はどれだけこのメンバーのなかコンプレックスにさいなまれ、努力を重ねてきたのだろうか。


メンバーはジン君について語るとき、必ず彼の「裏側での努力」を称賛している。

『アメリカンハッスルライフ』でのダンス対決で、ホビと組むことになった彼は何度もホビに「ごめん」と謝っていた。

「頑張るから」「やれるだけやるから」そう懇願するかのように声に出して、ひたすらに練習していた。

その言葉に私は、何度も泣きそうになってしまう。

足手まといになりたくない。そんな彼の声が響いてしまって。

REC現場でメンバーの前で間違えることに異常な緊張感を持っているジン君は、以前の「Moon」の記事にも書いたけれど、ボンボヤで肉を落としては異常に凹む彼、それにも繋がるように感じた。


けれどもある日、「イケメン担当だから喋るな」と言われた事務所の意向を彼は破った。言葉選びが面白くって、度量もあって、賢く「仕切る力」もあった彼は、大きな場所で司会をもこなせるスターになった。「窓拭き」みたいな笑い声を奏でては、その彼自身の人柄でたくさんの観客を魅了し、何より美しい高音ボイスを響かせながら、メンバーのなかで立ち位置を自分で見つけては、確実なものにしていった。


「ポジティブも努力しちゃダメ」

「ポジティブになろうと努力するより、あまり考えすぎないことかな」

『In the SOOP』最終話で、ユンギにそう声をかけるジンくん。

それは血を吐くような努力とプライドをも投げ捨て、成し遂げてきた人だからたどり着いた答えだ。だからこその、その言葉だ。


8か月経ったいま更新したかったのは、「Moon」という楽曲は、そんな「表現すること」に自信がなく、奥手な彼が、まるで振り絞るみたいに「ARMY」のために作った曲ではないかということだ。


最近、株式上場ニュースで周りから彼らについて聞かれることが多くなった。BTSのすてきなところをテーマにこのブログは書いているつもりだけど、ヒーローになった彼らの中で、なかでも一番の凡人だったろうキムソクジンという人の努力を、ジンペンな私は真っ先に伝えたい。そしてBTSの「ジン」がおそらく振り絞るみたいに「キムソクジン」の自分を表現し、伝えてくれたこの楽曲が、愛おしくてしかたない。


ただ、私はすごく欲張りだ。そんな愛おしい曲を作り上げたジン君の、クリエイティブな才は素晴らしいと思う。だからこそ、いま「物作り」において最高な環境にあるジン君の作る、次の楽曲が聴いてみたいのだ。

世界の片隅にいる一ファンには、まるで何の力もないけれど、ジン君の小さな自信になるように、何度でも私は「Moon」を聴きたいと思う。


本当に大切なものは、目には見えない。

見せないようにしているBTSの星の王子様は、愛らしいけれど、どこか切ない。


『ON:E』で「Moon」を歌いながら、少し照れているみたいなジンくんは、わずかな寂しさを漂わせながら、至極輝いていた。



※上記のMoonの記事は以下です



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?