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場づくりの実践から学ぶ「地域包括ケア×地域づくり」

地域づくり、まちづくりで、「住民主体」という言葉がよく使われています。

この言葉が想定しているのは、地域で住民が助け合い、支え合いを進め、自分達で地域の課題を解決していく状態でしょう。

このような〝住民の主体性〞が、地域の福祉、防災、教育、地域活性化、環境など様々な分野で重要なテーマとなっています。

中でも、福祉の分野では「地域包括ケアシステム」「地域共生社会」の政策において、住民の支え合いや助け合いの役割がクローズアップされています。

「地域包括ケアシステム」は、高齢化がどんどん進む中で、高齢になっても住み慣れた場所で安心して暮らしていける地域づくりを目指す取組みです。その中で、介護予防や生活支援の実施、要支援や要介護でも暮らせる環境づくりに、住民の力が不可欠とされています。高齢者のみならず、子育て、障がい、生活困窮なども含めて包括的な課題を扱う「地域共生社会」の実現は、地域のつながりや共助・互助の取組みなしでは考えられないでしょう。

また、住民主体は福祉分野だけでなく、例えば、防災においても、地震や風水害など大規模な災害が増える中で、日頃の防災意識の醸成から緊急時のお互いの声かけ、避難所の運営まで、住民の自助や地域活動による共助・互助の取組みが不可欠とされています。教育、地域活性化、環境問題への対策などでも同様です。どの分野でも、かつてなく、地域コミュニティや共助・互助、住民主体の活動の重要性が強調されています。

ただし、現状では「住民主体」は住民の内部から出ている言葉というより、行政や専門職側から重要性や必要性が発信されていることが多いようです。行政や専門職は、社会問題の状況を見て住民主体が不可欠だと考え、発信しています。しかし、「住民主体で動いてください」と行政が伝えて動かそうとすることは、本当に「住民主体」と言えるのでしょうか?

だからと言って、住民に任せっきりで放置していても、地域のつながりが弱まっている現状では、支え合いが自発的には生まれにくいでしょう。

もちろん、意識の高い住民が問題意識を持ってNPOなどの活動を始めていますが、周りの住民と温度差が生じている場合が少なからずあります。同じ住民活動でも、町会・自治会などの地縁型の活動とNPOなどテーマ型の活動がかみ合わない場面も各地で見られています。

行政が動かそうとしても難しい。住民任せでも難しい。そこに現代社会における「住民主体」の難しさがあります。

地域に暮らす住民や当事者が〝主体的に〞問題解決に取り組むとは、どのようなことを指すのでしょうか?また、地域課題に気づいた専門職が、住民主体の活動を促していくには、どうしたらよいのでしょうか?目指すべき地域の姿とは、どのようなものなのでしょうか?

そのような問いを抱えながら、様々な現場で「住民主体」の大切さや必要性に気づき、実現を目指して努力し、試行錯誤を始めている方が各地にいらっしゃいます。

私たちも、主に東京で、地域発の活動の立ち上げ支援、地域包括ケアの地域づくりの推進などに取り組んできており、試行錯誤を重ねてきました。活動の中で、住民主体の活動はどうすれば立ち上がり、運営していけるのか、悩み続けてきました。まだまだ「こうすれば必ずうまくいく」というところには至ってはいませんし、そもそも人や地域は千差万別であり、正解はないのでしょう。ただ、経験を重ねてきた中で、何を外してはダメなのか、どのような考え方や進め方が大切なのか、気づきを得ることはできました。

そこで、私たちが「住民主体」について実践を通して学んできたことを、住民主体の地域づくり、地域包括ケアシステムや地域共生社会などを推進する役割の方のヒントにしてもらえたらと考え、本にまとめました。住民主体は多面的で、多分野にわたるため、本書では地域包括ケアにおける地域づくりに焦点を置いてまとめました。地域福祉に取り組む方にはもちろん、他の分野で活動している方にも、応用して役立てていただける要素が多数あると考えています。

書籍はこちらからご購入いただけます。


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