「無い」が在る。

心が荒むと、目の前に在るものしか見えなくなって来る。実物、現物という物は、裏切らない為、安心出来る。または、そこに無い物を態々見い出した気になって、叩いてしまう事もある。そんな人は、大抵、人の心を土足で荒らしてしまう。

他人事ではない。私達でも、そうした事は起こり得る。そんな時は、私は、ナンプレをする事にしている。

ナンプレ、御存知だろうか。数独とも言う。縦9マス、横9マスのマス目が有って、その中に3マス×3マスの太枠のマスが9つ収まっている。縦も横も3マス毎に太線が引いてある、という事だ。イメージ出来ただろうか。

予め、幾つか数字が埋まっている状態でスタートするのが基本だ。そして縦9マス、横9マス、3×3の太枠9マス全ての中に、1〜9の数字がひとつずつ、被る事無く入るようにする事が、ナンバープレイス、通称ナンプレのゴールである。

画像1

↑これがナンプレである。

このナンプレ、色々な解き方をしている人がいると思うのだが、私は左の縦から順に見ている。画像の一番左の行には、1はどこに入るのだろう? 上3マスは、同じ太枠の中に1があるから、入らない。下3マスは、4と9が入っていて、空いたマスも横に見ていくと同じ列に1がある。しかし、真ん中の3マスになら入りそうだ。となったら、左側の真ん中3マスに1と小さくメモを取る。

少しずつ、少しずつ解いて行くと、無いはずの場所に数字が浮かんで来る。小さくメモを取った数字である。そうすると、そこに無いはずの数字が、影響力を発揮する。

例えば、ある1列に、「4か8が入る」マスが2マスあるとしよう。4も8も、その2マスのどちらかにしか入らないが、その2マスのどちらに入るのかは分からない。メモに "4or8" と書かれたマスが、その列には2マスある。そうなると、そこには4か8以外は入らないのである。何故ならば、4か8以外の数字がその2マスに入れば、4か8のどちらかが、その列には存在出来なくなってしまうからだ。

こうして、確定している訳では無いという意味では見えないが、しかし確実に存在する数字が影響力を発揮する。それがこのナンプレの、一つの面白さである。

見えなくとも、大切な事は存在する。「だから見えない物を見い出そうとする」行動を取るのではなく、「だから見えない物に対して謙虚で居る」事が大切なのだ。

「無い」が在る。その事に、今後も想いを馳せたい。

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