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水曜日のダウンタウン 負け残りタバコ我慢対決


2023年1月18日放送の水曜日のダウンタウンの企画、「愛煙家対抗 負け残りタバコ我慢対決」はとても面白かった。

愛煙家の芸人を集め、タバコを取り上げ、ゲームに勝たないとタバコを吸えなくする‥というデスゲーム的な構造。芸人たちが、吸えないイライラから言動が荒々しくなる様を、実験観察のように拾っていく。

昔の、粗野なテレビの魅力を思い出す企画だった。電波少年から黄金伝説までの、平成初期テレビバラエティって、こういう剥き出しの人間性をショーに仕立てるのが面白さのひとつだったな‥と思い出させてくれる。

あと、テレビにタバコを吸っている人がこれだけ多く映るのも久しぶりだ。(現に、この番組のスポンサーであるJTのテレビCMですら、喫煙シーンが一切ない昨今)

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元来、ゲーム形式の負け残りルールは、出演者が若手芸人さんだと機能しにくい。カメラに長く映るためには、負け続ける方がいいので、勝負がヌルくなる恐れがあるからだ。そして、そのことを視聴者も知っているので、「演者が必死になる理由」について説得力を補完しておかないと、観客の没頭に水を差す。

だが、この企画は成立している。ひとえに「禁煙状態の耐えがたさ」で皆が必死になっている‥という一点突破で、説得力を作っている。(もちろん裏には細かいルール設計や、編集の妙もあるのだろうが、そこは観客は意識しない)

ふつうなら「耐えがたいほど、我慢できないものを奪う」という状況は、演者が可哀想で見ていられないはずなのだが、そこはタバコの負のイメージのおかげで許容されている。絶妙なバランスの上に成り立つ企画だなと思う。同じことを「トイレ我慢対決」でやったら、非難が殺到するだろう。(実際、過去にこの番組が睡眠我慢の企画をやったときは、もっと違う構造だった)

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水曜日のダウンタウン製作陣は、こういう「表面に出てこない、細かい設計のチューニング」が巧みだと常々思う。過激な企画をやりながら、大きな問題も起こさずにやり続けられている。

今回の企画についても、その設計は行き届いていた。

・演者には自由にやらせる

・笑えない不正行為や、つまらなくなる展開が起こらないようにだけ、事前にルールで塞ぐ

・そのうえで、演者が「笑えるズル」をした場合は泳がせて、収録し、それを笑いのタネにする

・笑えるか笑えないかは、見極めが難しいものだが、VTR時点でのディレクション精度が高いのに加えて、ダウンタウンを含むスタジオ収録が最後にあるので、そこでジャッジができる

・ロケの演者を追いこむ実験系企画は、過激に迫りつつも、その人が可哀想に見えないようにしないといけない。そこで「ナレーションも含めた番組スタッフ側は、サイコパスな過激派」の役割にし、一方、「スタジオの演者は、良識派」という役割を持たせて、世間の感想を代弁させることで、炎上回避の安全弁にしている。(今回で言うと、いとうあさこさん、ケンドーコバヤシさん、飯塚悟志さん。適役だ)

・スタジオでも受け入れられなかった場面は、オンエアには載せない


こういう配慮だと想像される。本当に隅々までよく練られた企画だと思う。匠を感じる。

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