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『兄の終い』/BOOK REVIEW

大好きな村井理子さんの身に起こった実話『兄の終い』。とにかく帯文を見て少しでも興味があったら読んで欲しい。

私(not村井さん)には兄弟がいない。父と母と私というごくごく普通の中流家庭でボーッと生きてきた。親はとっても仲の良い理想の夫婦、というわけではないけれども、別に仲が悪いわけでもなく、私はその子どもとして放任されつつ特に問題もなく生きてきている(それはすごく幸せなことだと今はつくづく身に染みるのだが)。

あまり家族というものに執着がなく、自分の家族に誇りもなければ嫌悪感もない(だから離婚もあっさりしてしまうのかもしれない)。自分についてはそうなのに、何故か家族の話にめちゃくちゃ弱い。この『兄の終い』はその典型だし、同じく何度読んでも泣いてしまう作品に大島弓子の『さようなら女達』がある。

ところで村井理子さんのことは私が説明するまでもないと思うんですけど、翻訳家でありエッセイストであり、とにかく文章のセンスが抜群に良すぎる大尊敬している人です。双子の息子と旦那さんとハリーという巨大な犬と琵琶湖のほとりにお住まいで、考える人に連載されている『村井さんちの生活』を読むと村井家に生まれたかったな!って思うこと請け合いだよ!ぜひ読んでみてください。あとピエリ守山 っていうショッピングモールの潜入レポみたいなのがハフポストにあって最高なので検索して読んでくれ(今みたら2015年の出来事で軽く白目になってしまった。そりゃ息子さんたちも大きくなりますわ)。

『兄の終い』は疎遠で金の無心しかしてこなかった兄が突然死んでしまったことについての超ドキュメンタリーで、なんというか新手のロードムービーの様相すらあるお話でございます。

つくづく思うのだけど人間ってすごく微細な選択を日々していて、その積み重ねであみだくじみたいに生きていくから、昔近くにいた人がとんでもなく遠くに行ってたりする(精神的に)。それについて悲しく思ったり差別化したりすることもできるのだけど、なんか人間そう大差ないよ?って気もしちゃうんですよね。たまたま今日この道を通って仕事に行って、たまたま昼にはカレーうどんを注文して、みたいな、微細な選択がその人を少しずつ少しずつ作っていくんだけど、おおもとはみんな似たり寄ったりじゃん?っていうか。

どんなに悪人に見える人でも、どんなに善人に見える人でも裏があるし、その裏が反対色とは限らないし、多面体かもしれないし、というか。菅田将暉ならなんでもいい訳じゃないんですよというかね。だからこそ人間って愛しいものじゃん?みたいな。そんなことを思う作品でした個人的には。村井さんを筆頭に、登場人物全員カッコ良すぎるよ。

村井さんはTwitterも大大大大大好きで本当に面白いのでみなさんぜひみてみてください。いつかお会いしてお話伺ってみたい、そのために精進しようと気合いがはいります。


#兄の終い #村井理子 #エモ文 #bookreview

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