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「中国人社員の主体性が足りない」は、一朝一夕では治らない

中国で人材育成に携わって10年になりますが、間違いなく一番多いご相談は「中国人社員の主体性が足りない」と言うものです。原因はたくさんあると思いますが、おそらくは「言っても無駄」という経験の積み重ねだと思います。少し心理学的な知識も加えて考察します。

無力感を作るプロセス

生存にかかわるような不快な刺激を、自分の努力(働きかけ)によっては取り除けないことを繰り返し体験すると、無力感が形成されてしまう

中公新書 無力感の心理学

人に限らず動物は、不快な刺激を自分の努力で取り除けない経験を繰り返すと「頑張っても無駄、行動しても無駄」と、経験から学びます。

例えば、人手不足の施設で育った子供は、他の子供と比較して、好奇心や関心を示すことが少なく、著しく無気力・無感動の傾向が強くなります。日々の過ごし方も、慣れた部屋の片隅で、単調な行動を繰り返し、表情も乏しく、笑いかけても反応しないことが多くなります。

中国人社員も近しい経験を積んでいる

日系企業で働く中国人社員(特に社歴の長い)に話を聞くと、日本人の上司に何度も提案したが、何も変わらなかった経験を持つ人がとても多いです。
つまり、自分の努力(働きかけ)が、環境変化に何も影響を与えなかった経験を、社歴の長い社員ほど、何度も何度も経験し、その経験から「言っても無駄、行動しても無駄」と、無力感が養われてしまったと言うわけです。

当然、日本人の上司に問題が場合もありますが、構造的な問題もあります。例えば、メーカーの営業職に就いている中国人社員に話を聞くと、「製品の簡単なカスタマイズができる程度の、開発部門が中国に欲しい」と言う声をよく聞きます。営業先で受注ができそうな案件があっても、いちいち簡単な仕様変更で本社に伺いを立て、本社が動くまで待っていたら、スピードの速い中国企業とは戦えないと言う理由です。

長い目で改善していくしかない

「主体性が足りない」と中国人社員に不満を持ったとしても、それは何度も何度も、無力感を感じる経験から学んでしまった結果。「主体的に動け!」と一言で、改善を期待するのは難しそうですよね。

上司にできることは、中国人社員の努力・働きかけが変化に繋がる経験を、何度も経験させること。そんな機会を多く作って、変化に繋がるようにサポートし続けることが最も有効であり、正攻法です。

長い時間をかけて作ってしまった考え方だから、長い時間をかけて改善を期待しましょう。人の考えや習慣は一朝一夕には変わりません、根気よく取り組んでいきましょう。


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