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“選ぶ”ということ

“選べる”ということは
ある意味余裕があるというか
贅沢なのかもしれないと思うのです。
選びたくても選択肢がなければ選べないので、
選べるだけいろいろあるということは
豊かさを表しているといえます。

では、選択肢はたくさんあればいいのか
というとそうでもないようです。

”選択の科学”という本に
有名な実験が書かれています。
スーパーマーケットで
客の購買行動を観察してわかったのは,
選択肢が多すぎるとかえって
買うのをやめてしまう客が多い
ということでした。

では、多すぎるというのは
どのくらいを指しているのでしょう?

7±2以上
つまり、
5個から9個以上は多すぎることになります。

これは
人間の作動記憶(ワーキングメモリ)*で処理できる数の
限界が7±2といわれていることから
出てきた数字です。

本では瓶詰めのジャムを買うかどうか
観察していました。
たくさん種類があり過ぎると
頭の中で比べることが大変になり
「やっぱ,やーめた」と買う気がなくなるようでした。

品ぞろえが多い方が売れると思って
店もたくさん置いていたのですが,
皮肉なことに,多すぎるとかえって
売り上げが落ちることが分かった実験でした。

これに限らずなんでも適量が大事だと思います。
“過ぎたるは及ばざるが如し”

昔,米国人ユング派セラピストと知り合いになって
オフィスを見学に行ったのですが,
箱庭療法の人形や道具が
部屋いっぱいの棚にものすごくたくさん並んでいて
部屋に入るとうわぁーっとなりました。
セラピスト曰く,
クライエントさんの中には圧倒されて
泣き出す人もいるということでした。
(そんな時はどうするんですかと尋ねればよかったと
今になって思いますが)

その後,中学校でスクールカウンセラーをしていた時
箱庭のセットを学校が購入したのですが,
人形がひょろっとしかなくて,
(セット販売のものは結構高価なんです)
自分が買い集めていた人形を持って行ってました。

やはり,少なすぎて自分が置きたいと思うものがないと,
箱庭を置きたいと最初から思えないですね。
何があるんだろうと興味を持って棚を見ていくぐらいの
数がないと難しいと思います。
そういう意味で,
先日訪問した自宅で開業した知人の箱庭の部屋は
ちょうどよい棚と人形の数でいい感じでした。
動作法をするようになって
箱庭療法から遠ざかっていますが
また置いてもいいかなあと思うぐらいに。

なんでも適量が大事ですね。

“選ぶ”ということについて書くつもりが
逸れて適量の話になってしまいました。
この続きは次回に。
自分の主体的な行動としての
”選ぶ”という行為について書こうと思います。

*作動記憶(ワーキングメモリー)とは

ワーキングメモリーは,感覚情報、または想起した宣言的記憶などを、数秒から数十秒の間、短期記憶として頭に思い浮かべたまま保持し、それを用いて意思決定計算発話思考など、他の様々な認知機能を実行する為の、脳の機能である

平林 敏行 ワーキングメモリー 脳科学辞典 DOI:10.14931/bsd.10434 (2023)