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彼らは楽しむ天才だ!

いままでたくさん感動的なレースを経験したけど、これを手にした時のじんわり嬉しい気持ちは他に変えがたいな。

THE GREAT VIRTUAL RACE ACROSS TENNESSEE 1000km

このとんでもなく長い名前のレース、通称GVRAT1000k。アメリカのトレイルレース好きや日本ではトレラン100マイル信教(笑)の人ならきっと知っているだろう悪魔のレース【 Barkley Marathons】のディレクター(RD)であるラズというちょっと(だいぶ)変わった人が企画したバーチャルレース。

完走者ほぼゼロ、参加者を心身ともにズッタズタのボッロボロにするというバークレイマラソンについては、2014年に公開されたドキュメンタリーやいくつかの記事で知ることができるので割愛。
https://www.redbull.com/jp-ja/the-barkley-marathon-guide-nicky-spinks
わたしのコーチでもあり、日本で“100マイルといえばこの人”なTOMO(井原知一)さんでさえ、完走できずに挑戦し続ける「夢の墓場」らしい。その他、これまたちょっと気の狂ったBackyard Ultraというレースもあるのだけど、挑戦するには参加者本人もよっぽどおかしくないと参加しようと思えない(これまでの参加者に敬意を表して)。

そんなラズのレース、わたしはほぼ無関係の場所にいると思っていたのだけど、バーチャルレースなら参加できる!バークレイやバックヤードを主催するRDのレースに参加できる!参加者もきっと変人ばかりだ!!大好物!!世界中の変人たちと一緒に走れる!!!こんなラッキーなことはもうこの先二度とないかもしれない。速攻でエントリー。だって飛行機代もかからないし、仕事を休む口実を考えなくても良いし、現地までのアクセスも考えなくていいし。

そうして、5月1日からレースはスタート。期間は8月31日までの4ヶ月間。距離は1000km。100kmじゃないよ、4ヶ月で1,000km。

レースの名の通り、アメリカのテネシー州を大横断。距離を毎日登録すると画面上でテネシー州のコース上のどこにいるかが表示される。遡って登録できるのは3日分くらいなので地味なマメさと飽きない精神力も問われる(笑)

1ヶ月で250km、週にしたら62.5km、1日にしたら8.9km。毎日10km弱4ヶ月続けると思うとちょっとビビるかもしれないけど、長距離をやっているランナーからすれば、週末に結構稼いだりして、案外1ヶ月で200kmくらいはいくもんだったりする。

と、ここでまた悪魔の囁きが聞こえてくる。さすがラズ。

もしテネシー州往復1000km達成したら2000kmに挑戦できる

え?何それ何それ。そんなの挑戦するやつ、いんの?月に500kmを4ヶ月連続とか実業団かよ、って。そんなレベルの話。でも、1000kmとは別のバックル?をもらえるとかいう話で、バックルも確かに欲しいんだけど、それより女性でやる人いるのかな・・・?な?

で、ばかなわたしは無謀にも5月に人生で初めて月間500km走ってみたんだけど、そんなのは当たり前にツッコミすぎで、見事に1ヶ月でブッ潰れて心身ともにズタズタに。あ、わたし普通の人間だったと気付く。そこから緩やかに立て直し、制限時間(?)4ヶ月間のところ、2ヶ月半くらいで無事に1000km達成。LazからのE mailにめちゃくちゃ感動した。

Greetings newly minted RAT;
Congratulations EMMA NAKAJIMA on completing the Great Virtual Race Across Tennessee 1000 km in 74 DAYS.

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地道にやってきたことが形として報われるのはめちゃめちゃ嬉しい。オンラインコーチングを受けているとはいえ、緊急事態宣言中は電車に乗ることも複数人で集まることも控えるべしという空気で(あのタイミングでのステイホーム期間について正解かはわからないけど結果的に抑制できたんだろうと思っている)、世間のモラルとマナーは守るべしという自分の考えのもと、とにかくひとりで人の少ないところや時間にひたすら走った。山にも行かなかった。大事な時に大事なことに足並みを揃えられる能力も必要だ。変人やアウトローな人だって、いや、そういう人こそ“常識”を理解しているんじゃないか。

誰にもみられるわけでなく、誰かと時間を共有するわけでもなく、友達とも集まれない自粛期間に、それでも自分の好きな“走ること”と”目標”を失わずに、黙々と河川敷や緑地を走った。その証(あかし)だと思うと、素直に嬉しかった。
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いままで海外レースといえばヨーロッパかアジアだったけど、コロナ禍ですぐに動いたアメリカの多くのRDを心から尊敬する。手作りのバーチャルレースもたくさんあったし、GVRATの規模で5月にこのレースがスタートできたことがすごいとしか言えない。WEBサイトは日に日に拡充されていった。スタート時は参加賞のTシャツやバックルをどうやって作って配送するかも決まってなかったかもしれない。それでも、やると決めたんだ。

守るべきルールやモラル、マナーはある。それとは別に、理論ばっかじゃ、口ばっかじゃ、何も始まらないこともある。落ち込んでても仕方ないこともある。

わたしのモチベーションや日々の小さな楽しみの支えになったことを感謝したい!彼らはいつでも楽しむ天才だね!
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人生で5つめのバックル。来年か再来年、いつ行けるのかわからないけど、いつかアメリカでも手にしたいな。

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