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鏡よ鏡

20年間を共に過ごしてきた雨傘が、今日その命を終えました。
何の気なしに、とんっと足下を突いた拍子に傘の先端(石突という名前をさっき初めて知りました)と生地をつないでいる部品が外れてしまったようです。
それは、ネイビー・ブルーのミッフィーの雨傘で20年前、ある大切な人から、誕生日にプレゼントしてもらったものでした。

意外にも、というと傘に怒られるかもしれませんが、とても丈夫でちょっとぶつけてもびくともしないタフな傘でした。
さすがにここ最近は、生地が少し色褪せてきたのと、錆が所々についていましたが、ネイビー・ブルーのおかげで遠目ならぜんぜん目立たなかった。
このままミッフィーの雨傘様には付喪神になっていただくか、自分の葬儀の時に棺に一緒に入れてもらうか、のどちらかだなと楽しみにしていた矢先の出来事でした。

がっくり肩を落とし、家に着いて洗面所の鏡に映った顔は当然ながら、20代の時の自分とは違う顔をしていました。傘が壊れてしまったショックで、少しこわばった顔。あら、顔までネイビー・ブルー。
それを見て、自然と20年前の若かった自分を思い出しました。

ぱりぱりの新品の傘を雨空の下で広げ、悠々と歩いた20年前。何も怖くなかった。まだ知らないことがたくさんありました。良いことも、そうでないことも。
どんな自分になりたいか、なんて、いつから考えるようになったのだろう。
それを考えるようになったときに、いつの間にやら大人の仲間入りをしていたのかもしれません。
相手は自分の鏡。そういうシチュエーションも時にはあるでしょう。
でもその前になにより自分は自分。思っていた以上に大事にしていた物を失って落ち込む自分は、少なくとも20年前より、痛みというものを感じることができる。そこには、同時にわずかではありますが、温かみがあります。
たいせつな人をたいせつに。
次の20年を生きていくために、自分もたいせつに。
どんなことからでも、人生や生きていくための示唆や暗示を受け取ることができる人間でいれたらと思います。そのことが、自分や周りの大切な人に対する思いやりのヒントの欠片になることがあると思うから。
ここまで読んでくださった方に心からの感謝を捧げます。
ありがとうございました。






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