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頭上からブルーシートに覆われた街は雲ひとつない事件現場で

6月に短歌詠めなさすぎてnoteを放置して幾星霜、相変わらず調子は悪くとても何かを作るモチベーションにならず気候も暑く東京に行ったり大阪に行ったりしていた。

そうこうしている間に既に8月である。
7月は6月よりは短歌詠めたのでまとめる。


6月短歌


狂いだすDimensionまだ足元が崩れぬうちに裏返す影

横文字使いたかった。

確かめることができないもう二度とかつてはあったものが見えない

燃え落ちるフィルムの中で僕たちは声にならない名前を叫ぶ

アスファルト仰向けになり陽に翳す指の先から透明になる

「わたくし」を説明すればするほどに希釈されてくアイデンティティ


これはもうずっと昔からなのだけれど、何かを失っていく感覚がずっと消えないし、生きていくということはずっと失い続けていくことなのだと思っているので、そういうことばかり短歌にしてしまう。6月は調子が悪かったので余計に。


7月短歌


背中から飛び込むシーツ底無しの夜に引き摺り込まれる合図

これは気に入っている。
ベッドに背中が着く瞬間ってやっぱり何かに呑み込まれるような、まぁ疲れてるから単に意識が飛ぶっていうのもあるけど、底無しの夜っていうのは如何様にも解釈できるし文字数の限られた中からどういうものを読み取れるかっていうのは短歌の良さだと思う。

夢でみたプールサイドで手が触れたあなたの顔を思い出せない

なんかプールサイドの夢を見たんだけどプールサイドの夢だったことしか覚えていない。
屋内の、陽が入らない古いプールだった。
四角くなくて、なんかいくつかに分かれた変わった造りだった。

それとは関係ないが、昔、霊園に隣接した健康センターがあり、幼少期はよく行っていた。
様々な風呂と、プールがあった。
プールはウォータースライダーなんかもあった。四角いプールだった。
プールは陽が入らなかった気がする。
知らない女の子と一度だけ遊んだ。
健康センターの休憩室で館内着でだらだらしながらとんでぶーりんとおじゃマンボウを見た。

健康センターは潰れ、老人施設となり、それも廃業し廃墟となった。


屋上で見上げるそれはあの日見たビニールシートよりも青くて

青さに付きまとう私の中での薄ら寒い感覚をブルーシートに重ねる歌はこのあともう一首でてくる。

「悲しい」の言葉でさえもこの場所じゃ他の誰かが順位を付ける

誰かが死んだり、バンドが解散したりしたときにSNSでは悲しみマウント合戦になっている気がして、本当のファン以外は悲しい気持ちを言うことすら許されない空気があると感じる。
最近は悲しみを言葉にすること自体が悲しんでいる自分に酔っているようで気持ちが悪くなってきたのであまりそういう話題に言及するのも嫌だ。
心に留めて置いた方がいい思いや感情というものがある。

頭上からブルーシートに覆われた街は雲ひとつない事件現場で

ブルーシート短歌2首目。
今月の表題短歌。
なんていうか、青空というのは、この世の中の悲惨さやら暴力やら何もかも覆い尽くすブルーシートなのではないかとふと思った。

待ち合わせしてるみたいに簡単に会いに行けたらよかったのにね

どこもかしこも遠すぎる。

被写体の剥がれ落ちてくスピードとフレーム数は反比例する

終わったら冷めてしまって虚しさとだるさ以外は残らないのに

スクリーンプロセスの中微睡んだバスに揺られているエキストラ

スクリーンプロセスっていうのは映像表現の手法の一つで、私が好きな黒沢清監督の映画によく出てくる。
車窓の景色がスクリーンに映されていて走ってるように見せるものなのだが、どこか現実離れした白昼夢のような雰囲気になる。

これ以上汚い泥の付いた手で触らないでとあなたは泣いた

これは私は「泥の付いた手」の側なんですけど、美しいものを見たときに本当に、私みたいに汚れた手の人間が触れてはいけないんじゃないかと思ってしまって、距離感を見誤らないようにしなくてはとなる。


即席で作る18年前の再現性の低い夏の日

昔聴いてた音楽が聴きたくなって当時作っていたMDのプレイリストをサブスクの曲で作ったけど全部はやっぱり揃わないんだよな。

泣き叫ぶ子供の声が後ろから延々ついてくるコンコース

実話。

なにもかも暑さのせいで嫌になり散弾銃をコンビニで買う

コンビニで散弾銃売ってなくてよかった。

空室のドアの向こうで昨夜からなにか異様な音がしている

ホラー。

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