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君の眼に耳を澄ませば藍晶の星が瞬く音がしたんだ

3月の短歌まとめ。
激務だったので全然短歌詠んでない。
結果、仕事行きたくない死にたいみたいなのばっかりになってしまった。


鈍色の海すら遠くかつてそれだった残滓が音もなく降る

天井に映した模造水面で少し死ぬのを許してほしい



生活は、名前を奪われることは、命の意味を軽くするのだ
社会というのはあらゆるラベリングで成り立っているのかもしれない。

試着室の中生まれて「新しさ」に袖を通し続けるずっと
生きているということは常に「新しさ」に袖を通すことだと思っていて、袖口にいつまでたっても辿り着くことがない。

この先の角を曲がればもう僕は僕ではいられなくなるでしょう
角じゃないけど、会社に行く最後の信号を渡るとき、ここから先は私という個人は死にシステムになるのだな。と、毎朝思いながら渡っている。

画面越しどこにあるかもわからない部屋の暗さで繋がっていた
夜中に好きなミュージシャンのインスタライブのアーカイブ見てて、向こうも部屋が薄暗くて、時間も場所も全然違うのにこの部屋にはその人の歌が鳴ってて、そういうのってなんかいいなと思った。

輪郭が融ける手前の光源で夜をなぞって描いた影絵

塔の上銀のモールで飾られた歪な星を掲げた子供

壊れても替えのきかないガラクタを捨てられもせず引き摺り歩く

100年は止まない雨と灰の中応答願うトランシーバー

ひび割れた煉瓦が沈むバスタブで夢を見ている目覚まし時計

君の眼に耳を澄ませば藍晶の星が瞬く音がしたんだ
なんかこういう気持ちだけずっと大事にしていたい。

「月のない夜さえ作り出せるから。」翳す掌の中の視界

死ぬのなら痛みがなくて美しいやつがいいけどそんなのがない

まだ白く水溶性の石英が地表を覆う風の強い日

素敵ね。も、カッコいいね。も、好きです。も、人差し指に集約される。

少しずつ世界が欠けていく様を眺め彷徨うワンダーランド

逆さまに降る雨の中ステップを踏んだあの子は傘も差さずに


短歌を2年ぐらいやってきて、毎月短歌を纏める度に、来月は纏めるほど短歌が詠めなかったらどうしよう。と思う。

ものを作る人間あるあるだと思うのだが、ある日突然何にも自分から出てこなくなってしまったら、みたいなことって考えてしまうと思う。

クリエイティブは必ずしも必要ではなく、作れないから何というわけでもなく、ましてや私のように本当に細々やっていて極々私的満足のためにやっているなら尚更なのだが、なら本当にものを作るってなんなんだろうかと思う。

心には形がなくて、写真に撮って残しておくことはできないから、足りない絵の具で絵を描くみたいに手元にある言葉をしっくりくるまでそれらしく並べているに過ぎない。

一人でやってるからいつ辞めても誰にも迷惑かからないし、続く限りは気長にやっていくしかない。

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