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下書きにあったすっかり忘れていた書きかけの話を発掘した。


ひどい台風の日、カーテンを閉め切った部屋の中で星を見た。
それはジュースの空き缶に穴をあけて中にライトを入れた偽物の夜空だ。
星の並びの意味など知らない僕は天井や壁に無意味に映し出された無数の光の点を見て満足していた。
いつからこんなことをしだすようになったのか覚えていないが、台風が来るといつも僕は偽物の夜空を作っては眺めた。

今年も台風が来た。

夕食のあと、ビールの空き缶に穴をぶすぶすと開けていると急に電気が消えた。
どうやら停電したらしい。
困った。

スマホのライトをビールの缶の下に入れた。
星はいつもより少ない。

正直、空き缶に適当に開けた穴から漏れ出た光はピントも合わずにぼやけて本物の星空とは似ても似つかない。

それに僕は特別星を眺めるのが好きというわけでもなく、ただ天気の悪い日に星空を作り出すことができるという行為が好きでこんなことを毎回やっているのだと思う。

床にあおむけに寝転がり、窓に打ち付ける雨音や何かが吹き飛ばされる音、強い風の音が絶え間なく響く中、無風の部屋で頼りない光を見ていると何かが横切った。
流れ星のようだったが、そんなものが流れないことは僕が一番よくわかっている。

部屋の隅の方で何かが落ちる音がした。
目をやると何か小さなものが光っていた。

切符。

蓄光塗料を塗られたかのような薄緑色のぼんやりとした光を放つ切符が部屋の片隅に落ちていた。
こんなものに見覚えはない。

拾い上げるとそこにはよくわからない文字が書かれていた。
よくわからない文字の書かれた光る紙を見てなぜ僕がそれを切符だと認識したのかはわからない。

気が付くと、僕は電車に乗っていた。
田舎の鈍行列車のような固定クロスシート。

がたん、ごとん、がたん、ごとん、
レールの連結部分が小気味よいリズムを刻んでいる。

「やあ。」
目の前には知らない少年がいた。
僕は全く状況が呑み込めなかった。
「・・・・・・誰?」
「僕は誰かはどうでもいい。」
いや、よくない。誰だよ。

「君はなんで自分がここにいるのかわからないのかい?」
「わかりません、、、」
「君は何度も何度も宇宙を密造した罪で銀河鉄道で宇宙留置所に護送されている最中だ。」
「はぁ。」
なんだそれは。

「出来の悪い宇宙をこう、何度も何度も作られてはこちらとしても困るんだよ。星の配置もぐちゃぐちゃだし。多次元世界の過度な複製は空間管理法で禁止されている。」
よくわからないワードがばんばん出てくる。

「君の住んでいる次元では比較的容易に世界の複製が行われているからこちらとしてもなかなか頭が痛いところではあるのだけれど、宇宙を作られるとバカでかいメモリ容量を食うからちょっとこちらとしては看過できない。特にタチが悪いのは台風のような巨大なエネルギーが発生している日に複製が行われていることだ。街のプラネタリウムで上映が行われているのとは比べ物にならないほど世界線に干渉しやすい状況が生まれてしまう。君は自分が作り出した世界に責任がとれるのか?」
「・・・・・・ちょっと待ってください。いきなりそんなにたくさんのことを言われてもよくわかんないんですけど。空き缶に穴をあけてライトをつけるだけでなんで僕は捕まらなきゃならないんですか。そんな話聞いたことないですよ。」

すると少年は「やれやれ。」というような表情を浮かべた。
「普通だったら物語を書いたり、偽物の夜空を作り出したりするだけならそれはそこで完結する。なぜならそれを作り出すのは普通の人だからだ。しかし、君は世界線に干渉する能力を持っている特殊な人間だ。」
「・・・・・・。」
そんな少年漫画のチート能力者みたいな人間だったのか僕は。

「君の能力は危険すぎるので当局で管理させててもらう。」
「そんなこと言われても、家賃とか公共料金の支払いとか、バイトとか、、、なんか、そういうの色々あるし困りますよ。家に帰してください。」
「安心しろ。ここは君の暮らしている次元とは時間の流れ方が違うように操作されている。」
操作、、、操作できんのか、、、一体どういう権限で。

「・・・・・・あの、僕の他にもそういう、時空だの世界線だのを操作できる人っているんですか。」
「あぁ。こちらでスカウトして雇っている。」
「僕はスカウトされないんですか。」
「拘留施設で面談が行われて資質があるか判断する。」
「・・・・・・。」

とんでもないことになってしまった。
面談って何をするんだろうか。

ぐぅー。

とても悪いタイミングでお腹が鳴った。

「なんだ、腹が減っているのか。これを食え。」
少年が網棚から下ろした風呂敷を広げるとそこには平らな鳥が入っていた。
「何ですか、これは。食い物なんですか。」
「知らないのか。天の川名産の鷺だ。」

あぁ、これは銀河鉄道なのだった。
鳥の足をぽきんと折って食べると本当にチョコレートの味がした。


列車の窓の外は一面の星空が広がっているだとか、宇宙空間を走っているだなんてことはなく、郊外の住宅街のような直線の街路灯が青白くミニマルなリズムを刻むかのように流れているだけだった。

果たしてこれは銀河鉄道なのだろうか。

「このままどこかに運ばれていくのか?」

声のした方へ振り向くと金髪の女が立っていた。
メーテルのようなミステリアスな美女というよりは、如何にも「ブリーチして染めました。」というような一見して分かる非常にケミカルな金髪であり、長い前髪から覗く左目は目つきが非常に悪かった。服はグレーのダボダボのロングパーカーに真っ赤なエナメル靴という珍妙な組み合わせ。
どこもメーテルじゃない。

ヤンキーだ。

「いや、走ってる列車から降りるのは物理的に無理す。」
「あたしゃあそういうことを訊いてんじゃあない。」
「すみません!」

何も悪くないのに謝ってしまった。
ヤンキーこわい。

「ってか誰ですか、、、あなたもあの男の子の仲間なn」
「違う」
食い気味に否定された。
ということは、僕と同じ「能力者」なのだろうか、、、?

「おまえ、次元の複製ができるんだろ。ならこんな列車抜け出すなんて簡単だろ。」
「そんなこと言われても、やり方がわかんないです。」
「ほれ。これを使え。」
「え?」
彼女はパーカーのポケットから何かを出してこちらに放り投げてきた。
なんとかキャッチするとそれはマッチ箱だった。

「まさか、この列車を燃やすんですか、、、無理ですよ死んじゃいますよ、、、」
「んなわけあるかよ。おまえマッチ売りの少女って知ってるか?」
「そりゃ、まぁ。」
「能力の発動条件は要はイメージする力だ。予備動作無しではトーシロにはちょっとばかし難しい。おまえは今まで無意識で空き缶に穴を開けて宇宙を生み出していたわけだが、それを自覚的に行うトリガーとしてそいつを使うってわけだ。」
トーシロなんてリアルで口にする人間初めて見た。

「マッチ売りの少女の概要を知っているなら早い。シンプルにマッチに火をつけながら望め。」
「望めっていわれても、、、」
確かに、何も無いところから別の場所を思い浮かべるよりは予備動作があったほうがやりやすい気がする。

「早くしないとあいつが戻ってくるぞ。」
「・・・・・・やってみます。」
箱からマッチを取り出し、箱の側面に擦る。

ぺきん

「あ、」

折れた。

「ったく、ヘタクソかよぉ~!!」
「すんませんすんませんすんません!!」
「あたしゃすぐ謝るヤツは嫌いだ!! もういい!! これ使え!!」
手に握らされたのは安っぽい緑色のプラスチックのライターだった。

「まさか使い方がわからかないとは言わないよな?」
「タバコ吸わないからわかりませんすみまs」
「次謝ったら殺すぞ」
「ひっ、、、」
穏やかじゃなかった。

「このギザギザしたところを親指でギャっと下にやりながらボタンを押す!こう!」
実演してもらった。
「なるほど。やってみます。」

落ち着いて、動作をなぞる。
親指をギザギザに押し当てて下に回転を掛けながら下のボタンを押す・・・・・・!

シュボっと音を立てて火が点ったら、どこかの夜の繁華街の路地裏に僕はいた。

「・・・・・・どこ?」
「ほんとどこだよ。普通は自分ん家とか思い浮かべないか?」
「あ、おねえさん」
「あんたのねーちゃんになった覚えはない。」
とりあえず一人でよくわからない繁華街に来てしまったわけではないようで安心した。

「ったくもうしょうがねぇなぁ。ほら。手出して!」
「へ?」
「早く!ちんたらすんな!」
もうずっと機嫌悪いよこの人、、、
僕の差し出した右手を強く握ると彼女は真っ赤な靴の踵を3回ぶつけて鳴らした。

次の瞬間知らない部屋にいた。
どこにでもあるようなワンルーム。
食いかけのカップラーメンやドアの上のでっぱりに干された洗濯物、、、生活感が溢れまくっている。

「ああああああああぁぁぁ!だっから嫌だったんだよ!知らないヤツを部屋に入れんの!あんまジロジロ見るな!!」
「ここもしかしておねえさんの家すか。」
「そうだよ!あたしは自分ん家にしか飛べないの!! ちょっと片付けるからこれ着けてろ! 絶っっっってぇ外すなよ!! 外したら殺す!!」
昔の少女マンガみたいなキラキラな目の描かれたバラエティ番組かドンキでしか見たことないアイマスクを渡された。なんでこんなもの持ってんだこの人。とはいえ死にたくないのて大人しく着けた。

バタバタと慌ただしい音が鳴り響くこと5分。

「よし。外せ。」
許可が出たので外した。
さっきより少し物が少なくなっているが、恐らくクローゼットにぶち込んだのだろう。服の袖が扉からはみ出しているがあまりジロジロ見るとまた怒られそうなので目を逸らした。

「ま、立ち話もなんだから座れ。」
「・・・・・・失礼します。」
フローリングに座る。座布団とかないのか。まぁ、文句は言えない。死にたくないので。

「まず、あたしの能力だが、この安っぽいダサい真っ赤なエナメル靴の踵を3回鳴らすことがトリガーになっている。それにより普段の生活空間へと飛ぶことができる。その空間範囲は『家』と限定されている。こんな話を聞いたことはないか?」
「オズの魔法使い、、、」
「そうだ。」
「はぁ。」
「おまえの能力はおそらく、光とヴィジョンにより次元を複製するもの、だからマッチ売りの少女ってとこだろ。」
「はぁ。」
「はぁ。しか言えないのか!?」
「いや、あまりにも現実離れしすぎてて。理解が追いつかないというか。こんなマンガみたいなことありますか、、、」
「しょうがねぇだろ。実際「在る」んだからな。ちなみにあの列車に乗ってたクソガキの能力は強制的に列車に乗せて任意の場所へ輸送する力だ。列車に乗っている人間は何時から何故そこにいるのかすら疑問を持たずあたりまえかのように意識が改変される。発動条件は対象者が切符に触れること。奴はあたしらみたいな能力を持った人間を管理・統括しようとする組織の人間だ。通称『統合〈ジンテーゼ〉』と呼ばれている。」
「他にもいるんですか、僕らみたいな人間が。」
「あぁ。ちなみにそれと敵対する者で構成されるのが『揚棄〈アウフヘーベン〉』。あたしはそこの『あめふらし』に雇われている。能力は千里眼。マイナーだが階級グリムの能力者だ。」
「クラス、、、グリム、、、?」
「階級グリムはグリム童話の能力者。一部の能力群には階級があって、古い物語であればあるほどその階級は上と言われている。ちなみにおまえは階級アンデルセン。能力でいえばあの列車のクソガキ、カンパネルラの『銀河鉄道』より上だ。あたしの『虹の彼方に〈オーバー・ザ・レインボー〉』は大体『銀河鉄道』と同等。」

設定が膨大すぎる。
一体僕は何に巻き込まれているのだろうか。
何故能力は物語に紐付けられているのか。
何故能力が管理されるのか。
組織とは何なのか。
頭が痛くなってきた。

「・・・・・・ちょっと疲れました。」
「それはそうだろ。」
「なんか、それは、戦ったりとかするんですか、、、」
「いや、あくまでも能力者の扱いに関する話だ。能力の発現によって『統合』に目を付けられれば拘留施設に送られて組織にスカウトされるか、保護観察の名目で一生行動を監視され続けるかの2択だ。『揚棄』は全ての能力者の自由を最大の目的としている。但し、特殊な能力を持っていればそれを悪用するやつは必ずいるから『統合』の奴らの言い分もわからなくはないけどな。」
「なるほど。おねえさんはさっき雇われているって言ってましたけど、所属とかあるんですか?」
「めんどくせぇからそういうのはどーでもいい。高い金を払った方についてるだけだ。今回は『あめふらし』の報酬が高かったってだけだよ。あいつは千里眼持ちの引きこもりでこの世の何でもお見通しなんだが、見えるってだけでなんもできないからあたしみたいなのを金で雇って動かしてるってわけ。『統合』の奴らが気に入らないからって邪魔してるってだけで別にいい奴ってわけでもない。独善だよ。で、訊いてなかったけど、お前はどうしたい?」

どうしたいと言われても。
おそらくここで『統合』から逃がしてもらったとしても、この先も追われ続けることになるだろう。
かといって、『統合』に捕まった場合は組織の構成員としてあのカンパネルラとかいう少年のように他の能力者の捕獲に駆り出されたり、あるいは一生監視され続けることになる。

「おねえさんは、逃げ続けてるんですか?」
「あぁ。空間移動系の能力だからな。」
「でも家バレしたらすぐ捕まっちゃうんじゃないですか。こんな普通のアパートなんてすぐ見つかっちゃいそうですけど。」
「山奥のアジトとか無人島の方がリスクがでかい。周りに家がない分特定されたら逃げ場がない。だから建物が密集している都会の方が都合がいいんだよ。賃貸物件がたくさんあるから定期的に引越しをしてる。なぜかホテルはダメなんだよな。「家」じゃないから。ウィークリーマンションはセーフだったぞ。」
「なんすかその基準。」
「知らねぇよ。引越し代がバカになんねぇから割のいい仕事してるってわけ。そういう意味ではお前の次元の複製も空間系能力の中ではあたしなんかに比べてよっぽど高次、チート中のチート能力なんだから上手く使えば逃げ続けることもできるぞ。ただ、能力の適用範囲や限界値が未知数だからその次元複製が一時的なものなのか、無限に使えるものなのか、リバウンドがあるのかとかが全然わからん。」

僕自身もまだこの能力についてあまりにもわからないことが多すぎる。
マッチやライターですらまともに扱えなかった僕にこの強大な謎の力を扱えるのだろうか。いや多分無理だ。
次元を複製するってそもそもなんだ。
僕は空き缶に穴を開けてプラネタリウムもどきを作っていただけだぞ。

「あの、僕の能力って望んだ世界を作り出せるんですよね。」
「と、いうことになってる。なんでもかんでもお見通しの『あめふらし』が言うにはな。」
「じゃあ、この能力を持たない世界っていうのも作れたりするんですかね。」
「それは難しいと思うぞ。お前自身の記憶は別の次元でも継承されてる。さらには『統合』側にも次元を越えたりするような能力者はいるだろうし、『お前自身の能力に関する記憶を完全に無くす』というよっぽど強固で精度の高いヴィジョンで構築した次元を生み出せなければ追跡を逃れるのは無理だ。」
「む、無理ですね、、、」
「今のお前では、な。めちゃめちゃ想像力を鍛え上げまくるか、或いは記憶操作、催眠系の能力者を探し出して協力してもらうとか。」

どっちもかなりハードルが高そうだ。
だが、前者より後者の方がまだ可能性がありそうだ。
僕は僕自身の想像力に期待ができない。
いずれにせよ、具現化に足るヴィジョンを思い浮かべる力が必要だ。
だが、適当な宇宙を思い描けるような、或いは安いプラスチックのライターからのイメージでの繁華街のような、そういう浅いぬるい今思い描ける突破口となるヴィジョンは

「おねえさん、僕を弟子にしてください。」
「はぁっ!? やだよめんどくせー!!」
「列車で僕に能力を使わせたのはわざとですよね。おねえさんの『虹の彼方に』とカンパネルラの『銀河鉄道』は同等の力、つまり拮抗して発動出来なかったんじゃないですか。」
「うっ、」
「だから列車からの脱出には上位階級の僕の能力の発動が必要だった。これって僕に借りがあるってことですよね。もう一度言います。」
僕はライターに火を点ける。

「僕を弟子にしてください。」



「ったく、恐ろしいやつだなお前、、、次元の複製を関係性の操作に使うとは、、、」
「望んだ世界を作り出す能力なら可能かと思って。そのヴィジョンはより具体性を持つことで具現化される。なら今の僕に思い浮かべることのできる手はこれだけです。」
「なんかあるだろほかに!! こんなもしもボックスみたいなチート能力持ってるくせに使い方がどヘタクソなやつを弟子に取るなんて嫌すぎる!! 大体関係性の操作なんて空間系能力でもなんでもないだろほんとやめろ!! キモい!!」
キモいはひどい。

「何を言っても無駄です。『ここ』ではあなたは僕の師匠です。」
「師匠ったって、あたしゃ弟子なんか取ったことはねぇから何を教えればいいんだよ。」
「師匠はさっき訊いてもいないのにベラベラとこの能力とそれにまつわる話をダラダラと話し続けてくれましたよね。主にそういうことを教えてください。僕は何もわからないので。」
「それ、あたしが師匠になる必要ある? とはいえもうあたしがあんたの師匠になってしまったという関係性は変えられない。あークソ!なんなんだこれ!意味わからん!」
「そもそも、師匠がこれまで家に帰るということにだけ特化した『虹の彼方に』だけで有象無象の能力者から逃げてこられたという事実こそが師匠が只者ではないという何よりの証左です。その知識、経験、判断力、コネクションが僕には必要なのです。」
「なるほどねぇ、、、まぁいいやお前みたいなデタラメな能力持ってるやつをそこら辺転がしておくほうがよっぽどヤバい気がしてきた。分かった。ここでは私はお前の師匠だ。いいか?師匠の言うことは絶対だからな!」
「わかりました師匠!」
「よし!じゃあ早速この部屋の片付けをしてもらおうか!その後は飯だ飯!洗濯と風呂掃除も頼むぞ!」
「はい師匠!」

勢いで答えてしまったが、果たしてこれは弟子にとって必要なことなのだろうか。

あぁそうか。ヴィジョンか。

僕の貧相な想像力で思い描いた師匠像、それは漫画やアニメでよくいる弟子遣いの荒い横暴な師匠、、、それに元からおねえさん、もとい師匠はヤンキーである。そこからイメージしてしまうのはやはり弟子を顎でこき使いパシリにする横暴な師匠、、、

ヴィジョンの具現化の難しさとはそういうところであり、「頭の中にあるものしか作り出せない」。
しかも、僕のヴィジョンは荒い。とにかく荒くその場の思いつきで細部を詰めずに出力している。今後、僕は僕自身の想像力を超えていかなければならない。常識をぶち壊すような、不可能を可能にすることを疑わない思い込みの強さを。

「きれいで広い部屋、豪華なディナー。」



「って、ほんとお前、ポンコツすぎるだろ。」
僕の目の前で寿司を特上トロのにぎりを頬張りながら師匠が言う。
「誰がこの部屋をベルサイユ宮殿みたいにしろと頼んだ。」
「すみません。」
「寿司はまぁ、うめぇけど。お前寿司職人になれよ。」
「はぁ。」
「いちいち家事頼むたんびにわけわからん次元生み出されたら困る。今後寿司以外禁止!」
「寿司以外、、、」
寿司のために次元複製するのはいいのか。
「あー落ち着かない。こんな下町に城を作るな。こんなんすぐ追っ手にバレるだろ。なんとかしろ。」
「なんとかしろったって。師匠、ここは『家』と認識できますか?」
「できるか。」
「じゃあ、師匠の『虹の彼方に』と僕のマッチ売りの能力を同時発動させればアパートに戻れるんじゃないでしょうか。」
「んー階級が違っても指向性を合わせれば、どっちも空間に作用する能力だからいけるかもな。お前にしては悪くないアイディアだ。」
「じゃあ帰りましょうか。」
「待て、寿司を食ってからだ。」



これ元々は銀河鉄道パートの鳥の足のくだりまで書いて放置したまま3年下書きに入ってて読み返したら冒頭のあたりまで結構面白かったので続き適当に書いてみたら全然方向性の違う能力バトルものの導入部みたいになった(だからタイトルがチュートリアル)

書かれた時期がまるで違うので前半後半でほぼ違う人が書いたみたくなっている。

適当にだーーーーって書いてるから多分誤字脱字ある。

既存の物語を異能力化する話なんてのはもう擦り倒されているのでいまさら珍しくもなんともないのだけれどネタ考えるのは楽しくて出してないキャラの設定も考えたけどバトルシーン全然書けないのでひたすら会話で埋めてる。

厨二設定考えるの楽しすぎる。漢字に横文字の当て字つけるのとかもうほんとめっちゃ楽しいな、、、

私はプロットが書けない人間なので思いつきでだらだら書いたため、設定がかなりめちゃくちゃで整合性が全然無い。

師匠はどんな手を使って銀河鉄道に乗車したのかから破綻している。
次元複製したら複製前の次元が当然残っているはずで、まぁ、ファイルのコピーして上書き保存みたいなイメージなんだけど、oldフォルダに入れるのかごみ箱にいれるのかとかそういうのは全然考えてないし、次元複製されてこまると列車のクソガキが言っているので何かこまったことになるのでしょう。知らんけど。

アイディアと文才と推敲能力、あとは描きたい明確なテーマがあればもっと展開してまとめられたのだろうけど、ヴィジョンや覚悟がなければ世界を作ることはできないというのはどんなクリエイティブにおいても同じ、主人公が能力の使い方がヘタクソなのはそのせい。

以下書いてないけど考えてた設定供養

  • 師匠の二つ名は『ドロシー』。オズの魔法使いが元ネタだから。

  • 師匠の利用している不動産屋はエメラルドレジデンシャル。担当者は小津。訳ありの人に訳ありの物件を貸す闇の不動産屋。能力者の存在のことを知っている。恐らく小津も空間系能力者。師匠の師匠。

  • 師匠には『ライオン』『ブリキ』『カカシ』の二つ名を持つ協力者がいる。エメラルドレジデンシャルに勤務。

  • 『あめふらし』は双子の姉弟。

  • 姉の二つ名は『王女』。引きこもりの千里眼。なんでもお見通しだが今起こっている事象についてのみ。未来予知の能力は無い。タワマンの最上階に住んでいる。弟を溺愛している。

  • 弟の二つ名は『狐』。不可視の能力を持ち、なんでもお見通しの姉でさえ見つけることができない。姉がうざい。エメラルドレジデンシャルに勤務。ドロシーの家を能力で見つからないようにしているため師匠は引越しを頻繁に繰り返すみたいなザルな逃げ方でも追っ手に見つからない。

  • 『揚棄』は『王女』が設立したが体系立てた組織ではなく『統合』に反感を持っている能力者がその時々で流動的に協力する。

  • 二つ名『青髭』能力『見るなのタブー』発動条件:能力者が設定した任意のドアを開けた相手を殺す。

その他(蛇足)

口の悪い強キャラに振り回されるテンションの低い主人公或いは語り部というベタベタな設定が好きすぎるのだが、師匠より弟子の方が能力値が高くて一瞬立場が逆転するのとかたまんねぇよなという癖が出てる。

年上の破天荒なお姉さんキャラが好きすぎる。という癖が出てる。

オズの魔法使いのドロシーが履いている靴は原作では銀色だが映像化される際に映えるのでルビーの靴へと変更になっている。
って話前にも書かなかったっけ?

『あめふらし』というグリム童話がマイナーなのだが好きすぎる。

めちゃめちゃ性格の悪い負けず嫌いの千里眼の王女のかくれんぼ勝負で負けた求婚者は首をはねられて城の外壁に晒されるのだが(97人)、王女に挑んだ3兄弟のうち兄2人は殺され(プラス2計99人の晒し首)、最後の弟が小狡い手を使って身を隠しかくれんぼ勝負に勝ち無事に王女と結婚しましためでたしめでたしという話(兄貴殺した女と結婚してめでたいのか?)

あめふらしというタイトルは弟が最終的に狐によってあめふらしに変えてもらうことで身を隠したため。王女はそれを知らず夫が自分の力だけで千里眼から逃げ切ったと信じきっているため夫の能力の高さを尊敬して「夫にだけは敵わないのよね~」って思ってるところがかわいいのだが、元々誰の力も頼らずに自分一人で国を治めようとしていた王女は結婚めんどくせぇと思っていてそれを退けるために絶対無理ゲーな千里眼かくれんぼによって求婚者を処刑しまくっていたので、女性の自立を妨げるこの展開は今の時代ならコンプラ的にアウトだと思う(それ以前に求婚者を大量殺戮している時点でコンプラ的には完全にアウトだ)。

まぁ王女がバイオレンス&クレイジーすぎるのに尊敬してる相手にはメロメロで勝てないなんてのは個人的には癖に刺さる。

冒頭の台風の日に部屋で簡易プラネタリウムを作るというのは、実際私が天気の悪い日に部屋で組み立て式のプラネタリウムを見るのをたまにやることからきている。

プラネタリウムは偽物の星空で、ましてや部屋など球体の天井に投影しているわけではないため学術的な意味は損なわれていて「星空」という概念だけしか映し出されないわけだが、嘘でもそこに「宇宙」を作り出せるという行為はやっぱりワクワクする。神様みたいで。

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